13 第四皇女と日々のあれこれ。
ごきげんよう。ルイーズ・ドゥ・グルノーです。
私がザルツリンド王国の王都ゼーレンに到着してから、早いものでひと月近くが過ぎようとしています。
今回は、その間私がゼーレンでどんな日々を過ごしていたかをお伝えするわね。
私が暮らしているのは、ゼーレンの王宮からほど近い離宮だということは、以前にも伝えているわよね?
私はその離宮から、週の半分は馬車で王宮へ出向いて行って、ザルツリンド王国の歴史、文化、経済、その他諸々についてを各分野の専門教師について学んでいます。
それは所謂 “王家の一員として必要となる最低限の教育” というものらしいのだけれど……。
ザルツリンド王国の王太子(←次期ザルツリンド王のことよ)は、ハインツ殿下のお兄様で第一王子のラディスラウス殿下と既に決まっているの。
つまり、次期王妃様の地位もラディスラウス殿下の奥様のエリーザ様に決定済みなわけ。
だからだと思うのだけれど、私に対しての教育内容は然程高度なものを要求されてはいないように思えるのよ。
だって、お勉強の合間にファラーラ王妃様とのお茶会のお席にお呼ばれしたり、何故だかエリーザ様と一緒に新しいドレスの採寸に参加することになっていたりするから。
「ルイーズ様。本日は、王宮で何を学ばれたのですか?」
「今日は、ザルツリンド王国の歴史についてよ。もうすぐザルツリンド王国の “建国祭” が開かれるのですって。国の内外から大勢の人たちが、ここ王都ゼーレンに集まって来るのだと先生から教えて頂いたわ」
「ザルツリンド王国の建国祭ですか? まあ、それは楽しみですね!」
お祭り好きのジネットは建国祭が楽しみかもしれないけれど、私はちょっとだけ憂鬱だわ。
だって、今日のお茶会の席で王妃様ったらこう仰ったのよ。
建国祭の時に『ザルツリンド王国第二王子ハインリッヒ・フォン・ザルツリンドの婚約者』として私をザルツリンド王家の一員として列席させて、皆に紹介するおつもりなのだと。
「それに何か問題があるのですか?」
「だって私、あれ以来ハインツ殿下と全然お会いできていないのよ。殿下の婚約者が私で、本当に良いと殿下がお考えになられているのか、私には分からないもの」
「では、ルイーズ様的には、ハインリッヒ殿下が婚約者で良いとお考えなのですか?」
「うーん。どうなのかしら……。ジネット。もしこの婚約が上手くいかなくて、私がグルノー皇国に帰国した場合を想像してみて? 私はこの国から居なくなってしまうのから全然構わないのだけれど、この国の王子である殿下にとっては醜聞ということにはならないのかしら?」
「それは……。まあ、その可能性はあるかもしれませんね」
セレストの件でマキシミリアン陛下からの呼び出しを受けて王宮へ向かった翌日、ハインツ殿下は飛竜騎士団のお仕事に戻って行かれたわ。
私をリスカリス王国の最初の町まで迎えに来て下さり、王都まで送り届けて下さったのは、竜騎士としての任務の一環でもあったようなのだけれど、その後、離宮での私の生活を確認に来て下さったり、王都見物に連れ出して下さったり、図書館でセレストの事を調べたりされた数日間は、どうやら任務外だったらしくて……。
いつまで経っても分隊に戻って来ないハインツ隊長を連れ戻すため、第7分隊副隊長のヨハネス様が王宮へと乗り込んでみえたそうなの。
ハインツ殿下としては、もう数日は王宮に滞在するつもりでいらしたようなのだけれど、ヨハネス副隊長は半ば強引にハインツ殿下を彼の愛竜であるヴァイスに乗せたらしいわ。
その一部始終をばっちり目撃してらした王妃様が、なんだかとても楽しそうに、その時の様子を身振り手振りを交えながら私に教えて下さったのよ。
ちなみに、飛竜騎士団の皆様は、平時は王都にある騎士団本部に居るか、各隊毎に各地にある騎士団支部に詰めているそうなの。
それでザルツリンド王国の何処かで何か問題が起きた場合、1番近くの支部にいる分隊が現場に向かうのですって。
ハインツ殿下が率いておられるザルツリンド王国飛竜騎士団第7分隊は、今は殿下が領主を務めておいでのグフナー公爵領内にある騎士団支部での任務にあたられているのだと、つい先日のお茶会の席で、王妃様がこっそり私に教えて下さったわ。(←本当は、騎士の任務内容や滞在先は極秘なのですって)
そんなわけだから。さっきジネットに言ったように、私は殿下ともう半月近くお会いできていないのよ。
なのに、こんな風にいろいろなことがどんどん進んでしまったら、後で困るのはこの国の王子であるハインツ殿下よね?
うーん。どうしたら良いかしら。
ああ、そうだわ。すっかり忘れるところだった!
聖獣ルーナリオン疑惑が持ち上がっているセレストの件なのだけれど……。
あの後、数人の黒ローブを着た人たちが「聖獣が見つかった以上、国が聖獣を保護育成するべきでは!」とハインツ殿下に詰め寄って来て一悶着あったの。
でもそんな人たちに対して殿下は、セレストの守護者はあくまでもセレストを最初に発見保護した私であり、保護した場所もザルツリンド王国内ではなくグルノー皇国内の “聖なる森” であることから「ザルツリンド王国としてはセレストの引き渡しを要求できる立場にはない!」と宣言して下さって、私はセレストを無事に離宮に連れ帰ることができたのよ。
セレストはといえば、毎日ローラに美味しいご飯(← お肉が多めなのよ)を作って貰っていて、それを食べて暮らしているわ。
その影響かどうかは分からないけれど、あれからもセレストはすくすくと成長を続けていて、まだ仔猫の筈なのに、今では私ひとりではとても抱えきれないくらいの大きさにまでなっているの。
この調子で成長を続けたら……。いったいセレストはどこまで大きくなるのかしら?
まあ、そんな感じですっかり大きくなって、見た目にはもはや仔猫には見えなくなってしまったセレストなのだけれど、この離宮にも、離宮の人たちにもすっかり慣れて、日々離宮の中を好きなように歩き回っているわ。まるでセレストがこの離宮の主のようよ。
ただし、今のままでは問題もあるのですって。
セレストが聖獣の “ルーナリオン” かどうかは、本に書かれている記述を元に「もしかするとそうではないか?」と思われるというだけで、今はまだ断定はされていない状況なのよ。
だってそうでしょう? 聖獣ルーナリオンを実際に見たことがある人物なんて居ないのだもの。
セレストがずっとこの離宮に中から出ないならそれでも良いかもしれないのだけれど、問題は離宮から外に出た場合だそうよ。
セレストがもしも “猫” ではなく “魔獣” だと判断された場合(流石の私も、もうここまで大きくなったセレストを “猫” だとは思っていないわよ)魔獣は騎士団や冒険者ギルドの討伐対象になってしまうそうなの。
ただし例外があって、個人が所有管理する “従魔” として冒険者ギルドに登録していれば、その対象にならずに済むのですって。
つまり、魔獣は魔獣でも、冒険者の仲間になった魔獣ってことよね?
“聖なる森” にいたのだからセレストは絶対に魔獣ではないことははっきりしているのだけれど、そのことをこれから会う人会う人全てに信じて貰うのは難しいでしょう?
それならば “従魔” として冒険者ギルドに登録してしまって、誰の目にも目に見える形の “標” を付けるのが良いのでは?ってことになったの。
でもね、セレストを冒険者ギルドで従魔として登録するためには、その前にやっておく必要があることがいろいろとあるのですって。
あーっと、どうしようかしら。今からこの話を始めると……長くなってしまうかも。
だから、残念だけれど今回はこの辺で止めておくわね。
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