表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/262

 1 第四皇女と離宮の人たち。

「やっとですね、ルイーズ様」

「そうね。明日にはヒセラとローラもここに到着するみたいだし、明後日くらいにはローラに何か作ってもらえるかしら? それとも、疲れているだろうから、もう数日待った方が良い? ジネット、貴女はどう思う?」

「ルイーズ様、私が言いたいのはそんなことではありませんわ!」

「えっ? じゃあ、何かしら?」

「明後日は、いよいよザルツリンド王家の方々との()()()()()()ですわね!」

「ああ、そっちね! そ、そうね、そうだったわね」

「もう、ルイーズ様ったら……」



  ◇   ◇   ◇



ごきげんよう。ルイーズ・ドゥ・グルノーです。


私と侍女のジネット・シャルハムがザルツリンド王国の王都であるここゼーレンに到着してから、早くも明日で1週間。

私たちはザルツリンド王国飛竜騎士団第7分隊の方々と共に王都に到着した後、ゼーレンの王宮にではなく、近くにある離宮の方へと通されたのよ。


私が未だに王家の皆様と顔合わせを行えていない理由は、ザルツリンド国王夫妻が、私が到着した日を含めた数日、所用で王都を離れていたため。

それと、私の侍女のヒセラ・モンカナがまだ到着していないこと。

その両方が理由なのだろうと、この離宮を取り仕切っている執事長から教えてもらったわ。


執事長の話では、マキシミリアン国王陛下はまさか私が飛竜に乗って王都を目指すとはこれっぽっちも考えていらっしゃらなかったみたい。

私がこんなに早く王都入りしたことを滞在先で知った国王夫妻は、酷く驚かれたらしいわ。

もしかして私、馬車でゆっくり到着した方が良かったのかしら?


今後当面、婚約者候補である私は(一応王宮にも私の私室は用意されているみたいだけれど)基本的にこの離宮で暮らすことになるみたいなの。

“親書” に書かれていたように、私はザルツリンド王国の歴史、文化、経済、その他諸々についてを1年かけて、各分野の専門教師について学ぶことになるのだけれど、そういった “授業” は王宮で行われるって聞いたわ。

つまり私は、この離宮から王宮へ、頻繁に通うことになるのよね。

王宮までは歩いても行くことができる距離らしいのだけれど、もちろん歩いて通うなんて許されないでしょうから、馬車を使うことになるわよね。

馬車に乗ってさえしまえば、王宮まではそれ程時間はかからないって話だったわ。




それにしても、どうして私ったら本の1冊も持たずに飛竜に乗ってしまったのかしら……。

ゼーレンの街には大きな王立図書館があるって執事長さんが言っていたけれど、まだ王家の皆様との顔合わせさえも終了していない私が、勝手に1人で出歩いて王立図書館に行くのはまずいでしょう?

王宮には図書室があるらしいけれど、この離宮には残念ながら図書室はないのですって。そんなわけだから、今がまさに退屈の絶頂期なのよ。


この暇過ぎる時間を潰そうにも、それ程多くの私物を国から持って出なかったし、その少ない私物でさえも、明日ヒセラたちが到着しないことには私の手元には届かないのよね。

まあ届いたところで、荷物の殆どがお母様が用意して下さったドレスや装飾品だと思うので、時間を潰すには適さないけど。

こんなことなら、もっと本とか、実験器具でも詰めてくれば良かったわ。


そうは言っても、自分の部屋に黙って引き篭っているだけの私ではないので、離宮の中を隈無く散歩(←どちらかと言うと探検?)していますよ。

道具もないし、今までのように大好きな研究は続けられそうもないけれど、あちこち離宮内を歩いてみて、畑にするのには丁度良さそうな場所を見つけたわ♪

あの場所を畑にする許可が頂けるかは……まだちょっと分からないけれどね。




そうだわ! この1週間で仲良くなった離宮の人たちが数人いるので、ここで紹介しておくわね。



まずは、さっきから何度か登場している、この離宮の執事長をしているクラウス・アインホルンから。


年齢は聞いていないので正確には分からないけれど、たぶんヒセラと同じくらいじゃないかしら?

ヒセラと同じで、クラウスも長く王家に仕えているそうで、数年前まで王宮の方の執事長をしていたらしいわ。

年齢的に王宮全ての管理をするのが難しくなったので、王宮の執事長の職を辞して、王宮よりはずっと小規模なこの離宮の方に移って来たのだそうよ。


クラウスは長身で細身。短く整えられた銀髪。

左目だけのモノクルをかけていて、一瞬真面目で怖そうな老人にも見えるけれど、話してみると、物腰の柔らかいお喋り好きの好人物だってことがすぐに分かったわ。

それでね、彼の特技はピアノの演奏だって言うから驚いちゃった。

この離宮のミュージックルームには立派なピアノも設置されているので、私、クラウスに教えを請おうかと考えているのだけれど……。良い考えだと思わない?



次は、新しく私付きの侍女となったエルマ・クラウゼ。


エルマは、もう10年も私の侍女をしてくれているジネットよりも5歳年下の22歳。

エルマがこの離宮に移って来たのは最近のことで、それまでは、王宮に沢山いる王妃様付きの侍女の1人だったそうなの。

エルマが王妃様から私付きの侍女に変わったのがエルマにとって “大抜擢” なのか、はたまた “左遷” なのかは私には分からないけれど、笑顔の絶えない、とても感じの良い人よ。


それでね。エルマの趣味は、仕事がお休みの日にお酒を飲むことなんですって!

本人曰くかなりの酒豪らしいのだけれど……。

酒豪といえば、ジネットも相当なものよ。2人のどっちがお酒に強いのか、私、凄く気になるわ。

この1週間で、ジネットとエルマは随分と仲良くなったみたいなの。

今はまだ私と同じくジネットも自由に街には出掛けられないけれど、もう少ししたらエルマにオススメのお店を紹介して貰って一緒に呑みに行くつもりみたい。楽しみね! 私? 私は遠慮しておくわ。


それから、エルマはお酒を飲む以外に、お化粧にも興味があるみたい。

今後の商会の新商品開発やなにかの参考にもなるし、いろいろとエルマからザルツリンド王国の化粧品事情とかを聞き出したいわ。



それから、料理人のトーマス・ダイナー。


トーマスはこの離宮の料理人の中では年は若いけれど “中堅” って感じかな。偉すぎず、下っ端でもない。これ、重要!

でもね。残念ながら、まだ彼とは言うほど仲良くはなっていないのよ。

だって、私が調理場に行こうとすると執事長のクラウスとか、侍女のエルマに邪魔されることが多いのだもの。

やっぱりこの国でも、普通のご令嬢は調理場などには近付かないみたい。


でも私、トーマスにはお肉料理のこととかをいろいろと聞きたいし、今後彼と仲良くなるためにも、調理場に足繁く通う作戦を開始するつもりよ。

それに、もうすぐローラも王都に到着するでしょう。トーマスには、今後はローラが私のデザートを主に担当することになるっていうことを早く伝えなきゃならないもの!

誰だって、自分の神聖な職場にわけの分からない新参者がズカズカと入って来たら、気分が悪いわよね? そうならないためにも、ローラのことを前もって伝えておきたいのよ。

私の今後の美味しいデザート事情のためにも、トーマスにはローラと是非とも仲良くなって貰わなくっちゃだわ!



そうだ。今からあの仔猫を連れて、トーマスのところへ行ってみましょう!

この時間なら夕食の準備にはまだ早いし、多分トーマスは、裏庭の大きな木の下にあるベンチに座ってのんびり寛いでいる筈。


あの場所がトーマスのお気に入りの場所だってことは、もう調査済みよ。

休憩時間の邪魔をすることになってしまうから、ちょっとは気がひけるけれど……。でも仔猫が一緒なら大丈夫だと思うの。トーマスがかなりの猫好きだってことも、私は知っているんだから!

だってそうでしょう? 毎回毎回、私が連れて来た仔猫のために、すっごく手の込んだ美味しそうなご飯をトーマスは用意してくれているのよ。

絶対に彼も猫が好きに決まっているわ。

さあ、急いで裏庭のトーマスの元へ向かいましょう♪

お越し頂き & お読みいただき、ありがとうございます♪

この作品は、ちょっとゆっくり目の更新になりそうですが、続きが気になる! と思って頂けましたら、是非ブックマークや評価をお願いします!

思わず嬉しくなって、更新ペース上がっちゃう……かも?

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすれば出来ます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ