47 第四皇女は18歳になりました。
「ルイーズ、成人おめでとう!」
「ありがとうございます、お父様♪」
こんにちは。ルイーズ・ドゥ・グルノーです。
今日は私の18歳の誕生日。本日をもって私はついに成人の皆様の仲間入りを果たしました!
「ルイーズ。本当に、あの話を進めてしまって良いのだな? 返事をしてしまった後で、やっぱり気が変わった言って泣いても、もう聞いてはやれないのだぞ?」
「はい。もう私は心を決めましたので! それに、泣きませんよ?」
「そうか……」
「ええ。ご心配下さり、ありがとうございます、お父様。私は大丈夫ですわ! もしも大丈夫でなくなったら、1年後にこちらへ戻って参りますので!」
「……ルイーズ」
あら? 先方とはそういうお話でしたわよね?
どうしてお父様ったら、そんなに困ったお顔をなさっているのかしら?
確か、あれは半年くらい前のことだったと記憶しているのだけれど……。
ザルツリンド王国にある聖教会の支部(←こんな支部が大陸各国にあっただなんて、私は全然知らなかったわ!)から、お父様のところへ1通のお手紙が届けられました。
そのお手紙によると、ザルツリンド王国からグルノー皇国に届けられた “親書” の中に記載されていた事項に関していくつか不明点があったので、それらを明らかにするために、1人の事務官がザルツリンド王宮に出向いたと書かれていたそうなの。
その際、ザルツリンド国のマキシミリアン国王陛下自ら、その事務官に対して
『ザルツリンド王国の第二王子ハインリッヒ・フォン・ザルツリンドの婚約者として、グルノー皇国のルイーズ・ドゥ・グルノー姫を貰い受けたい』
と明言された。と書かれていたのだと、私はお父様から聞かされたわ。
つまり、ザルツリンド王国へ赴くのは、ヘンリエッタお姉様ではなくて、私だってことなのよ。
それと、マキシミリアン陛下は
『成人年齢となる18歳を迎えるまで、ルイーズ姫の出立を待つ』
とも仰って下さったのですって。
そんなわけで、私はあの “親書” が届いて以降も、こうして18歳の誕生日の今日まで、レンファスのお城で今まで通り家族と共に過ごすことができたってわけ。
まあ、今まで通りとは言っても、もちろんザルツリンド王国へ向かう準備をしたり、きちんと結果の出ていない研究を進めたりもしていたので、かなり目紛しい日々ではあったわね。
ではこの辺で(今回もそれ程の変化はないとは思うのだけれど)私の家族の近況をお伝えしますね。
まずは目の前のお父様からですね!
ヴィクトールお父様は現在50歳。グルノー皇国の皇王陛下です。
お父様がお祖父様からこの国を受け継いで皇王となられてから、もう13年が経過したそうです。
娘の欲目かもしれないけれど、お父様は素晴らしい統治者だと思います。
国の中は政治面でも経済面でもとても安定しているという話だし、近隣の国ともずっと良好な関係を続けているみたい。
ザルツリンド王国からの “親書” が届いて以降、お父様の美しい銀髪に白髪が増えた気がしなくもないのだけれど……。相変わらずお父様は、私の大好きな素敵なお父様です。
続いてジャンヌお母様。女性の年齢を書くのは止した方が良いかしら?(お母様はお父様よりも2歳年下です。←小声でね)
この半年の間、お母様は「ルイーズがザルツリンド王国へ行ってから恥ずかしくないだけの準備を完璧に整えなくては!」と、私よりもずっと張り切って準備に奔走されていらっしゃいます。
最初は「私は絶対に反対よ!」って仰っていた筈なのに……。
お母様曰く、まだ必要な品物の全てが整っているわけではないようなので、出発の日までにどの位荷物が増えるのか、それを本当に全て運べるのか、とっても不安です。
だってそうでしょう? 1年後、場合によっては、また全て持って帰って来ることになるかもしれないのよ?
ふぅ……。
気を取り直して、兄弟姉妹を上から順番に、どんどん紹介して行きましょう!
1番上、第一皇女のクロエお姉様は29歳。
この1年も大聖女として、クロエお姉様は変わらず大活躍だったようです。
毎年秋の収穫祭の最終日に行われる “聖女の祈り” の儀式で、前回初めてクロエお姉様が聖教会本部の大聖堂で祈りを捧げる重要なお役目を受け持たれました。
(昨年までは長年 “白の手” の持ち主である大聖女のマリアンヌ伯母上様がそのお役目を担当されていたそうです)
“聖女の祈り” とは、その年の実りに感謝を捧げ、翌年の豊作を祈願するもの。
グルノー皇国国内にある全ての聖教会で、全ての聖女様が一斉に祈りを捧げるとても厳かな儀式なのです。
私も大聖堂での儀式を見せていただきましたが、クロエお姉様はとてもご立派で、感動的にお美しかったです。
2番目、第二皇女のアデルお姉様は25歳。
ヴィンガル公爵家に嫁がれて既に7年。
4歳のエミリアちゃんと、2歳半になったラウレンス君の2人も、とっても元気で可愛いです。
婚約も結婚も、私にはまだピンと来ないのだけれど、アデルお姉様とヘンリーお義兄様のような関係が築けるのであれば素敵だと思います。
3番目、第一皇子のラファエルお兄様は22歳。
お兄様は半年ほど前から、アマリアお義姉様と共にグルノー皇国のあちこちを飛び回っておいでです。
というのも、ラファエルお兄様は半年前、お父様から正式にグルノー皇国の皇太子に指名されたのですよ。
つまりお二人は皇太子夫妻として、将来自分たちが治めることになるこの国を、これから数年をかけて見て歩いていくことになるそうです。
4番目、第三皇女のヘンリエッタお姉様は20歳。
この1年で、私がヘンリエッタお姉様とお会いして言葉を交わしたのはたった1度だけ。お姉様は相変わらず地方の小さな町や村を巡っておられます。
その1度というのは、お父様の求めに応じてヘンリエッタお姉様がレンファスのお城に戻られた時のことです。
お姉様はお父様からの問い掛けに「仮にザルツリンド王国から指名されたのが私だったとしても、私は聖女を辞める気も、ザルツリンド王国へ渡る気もありません」とはっきりとそう答えておられました。
ヘンリエッタお姉様は、聖女であることに誇りを持っておられるのだと思います。
そして、お父様とのお話を終えると、お城には泊まらずに聖女宿舎へと戻っていかれました。お姉様のお部屋はちゃんとお城にもあるのに……。
ヘンリエッタお姉様は、ああ見えて意外と頑固なのです。
そして次が5番目の私。第四皇女のルイーズです。
私は、本日18歳になりました!(しつこい?)
最後は6番目、第二皇子のジョルジュ15歳。
ジョルジュはもうすぐ、ラファエルお兄様が学ばれたのと同じ、ハーランド王国の王立学院へと向かいます。留学期間はお兄様と同じく2年間です。
私も近いうちにこの国を離れますし、ラファエルお兄様とアマリアお義姉様も不在がち。レンファスのお城もしばらく静かになってしまいますね。
そうそう! ジョルジュが不在の2年間、私たちの商会は、お祖父様とお祖母様がお手伝いして下さることになっています。
続いて、伯母上様と叔母上様のことも少し。
今年の “聖女の祈り” の儀式で大聖堂で祈りを捧げる役目をクロエお姉様に譲られたことで「マリアンヌ大聖女様の力が衰えてきたのでは?」と危惧し、心配する声も多くあったようですが、どうやらマリアンヌ伯母上様が聖女を引退されるということは、現時点ではまだなさそうです。
「後進の育成も上に立つ者の大切な役割だ!」とお祖父様も仰っていらしたので、そういうことなのだと思います。
リスカリス王国へ嫁がれたグレーテ叔母上様は、お母様へのお手紙の中で「この夏は必ずレンファスを訪問します!」と書かれていたようですが……。
おそらくその頃には、私はもうこの国を離れていると思うのです。
なので、残念ながら今年も、私はグレーテ叔母上様にお会いする願いは叶えられそうにありません。
「……だぞ。そのつもりでいるように」
「えっ?」
「ルイーズ。またぼんやりして、ちゃんと話を聞いていなかったのか? 私とて、流石にこれ以上あちらに待ってくれとは言えん。出立は再来月だ」
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