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36 第四皇女と義理の姉。

先日 “結婚の儀” を終えたばかりのラファエルお兄様とアマリア様は、現在グルノー皇国の東海岸の町ディンバールにある離宮でお過ごしです。所謂、蜜月(ハニームーン)ですね♪

ディンバールの離宮は、グルノー皇国内にいくつかある王家の離宮の中で、最も美しいと言われている離宮なの。

私もあの離宮もディンバールの町も大好き! 特に好きなのは……


って、違うわ!

今回はディンバールの町で私が好きな場所の話をしようと思っていたわけではないのよ!

今日は新しく私のお義姉様になられた、シャーリー公爵家のアマリア様のお話をするわね。



その前に、グルノー皇国の公爵家のお話を少し。

グルノー皇国には、全部で7つの公爵家があるの。


セシリアお祖母様のご実家で、アデルお姉様の嫁ぎ先でもあるヴィンガル公爵家。

ジャンヌお母様のご実家のレーヌ公爵家。嫡男は私たちの従兄弟のローレンス様よ。

それから、アマリア様のご実家であるシャーリー公爵家。

その3つの家に、サリアンヌ公爵家とイルグリッド公爵家の2つの家を加えた全部で5つの公爵家がグルノー皇国の “五大公爵家” と言われているの。

この五大公爵家は歴史も古く、グルノー皇国内での発言権もかなりあるらしいわ。


残りの2つの家は、アルフォンスお祖父様が王位にお就きになられた際、お祖父様の弟たちが公爵位と領地を賜ってできた、歴史的にはとても新しい公爵家ね。

マーリン公爵家とファボ公爵家よ。


ねえ。ファボって名前に、聞き覚えは無いかしら?

私が香水を作る時の原料にしちゃったせいで庭師のエドガーが絶望した、あの高級ワインの産地よ。

あの時のワインは、お祖父様の甥っ子(お祖父様の下の弟は既に亡くなっているので)が毎年お祖父様のために贈って下さっているワインだったそうなの。

ファボは美味しい葡萄と、その葡萄で作られた高級ワインで有名なんだそうです。



あはっ。どうしてかしら? また話が逸れてしまったわ。


アマリア様はグルノー皇国の五大公爵家の1つ、シャーリー公爵家の次女よ。

シャーリー公爵家も例に漏れず、アマリア様の上に姉、下に妹、妹、そしてやっと弟。その1番末っ子の弟君が将来のシャーリー公爵ということになるわね。


シャーリー公爵家は、代々聖女様を数多く輩出している家系らしくて、4人いる現公爵の娘たちは6歳の属性検査で全員が光属性だと判明。4人とも聖教会で “聖女候補” として暮らすことになったそうなの。


結局アマリア様は15歳になっても癒しの力は発現しなくて、公爵に戻られたわ。だからラファエルお兄様と結婚できたってわけ。

他の姉妹たちは、長女は12歳で聖女に(現在は23歳)、三女は14歳で聖女に(現在は16歳)、四女はまだ聖女候補(現在は12歳)だそうよ。

ちなみに、アマリア様はラファエルお兄様よりも1歳下の19歳。将来シャーリー公爵となる弟君は、まだ8歳です。



アマリア様も他のシャーリー公爵家の3人の姉妹たちも、6歳の属性検査の前までは、よくお城に遊びに来ていたわ。

年も近いし、アデルお姉様とラファエルお兄様と、あの頃はヘンリエッタお姉様も一緒に。お城のあちこちで皆で仲良く遊んだのを、私もはっきりと覚えてる。

そういえば、ローレンス様もいらしたわね。

でも、シャーリー公爵家の4人が6歳以降聖教会で暮らすようになってしまってからは、当然だけれど、お城へ来ることは無くなったわ。

1人減り、2人減り……。そのうち誰も来なくなった。


ラファエルお兄様とアマリア様は幼馴染。小さい頃からすごく仲が良かったのよ。だから、アマリア様が聖教会で暮らすことが決まった時、お兄様はとても落胆されていたわ。

そんなアマリア様が、聖女になれずに15歳の時にシャーリー公爵家に戻って来られた。


アマリア様が聖女になれないことが決定した時は、シャーリー公爵家の方々は表向きはガッカリを装っていたみたいだけれど、内心はかなり喜ばれたみたい。それは皇王家も同じよ。

すぐにラファエルお兄様とアマリア様の婚約話が両家で持ち上がったみたいなの。

でも、流石に聖教会から戻ってすぐにそんなことになっては、聖教会から何を言われるか分からないだろうと、お父様がそう仰って、婚約はすぐには決まらなかったのですって。

結局、お二人の婚約が正式に発表されたのは2年後。


アマリア様ご本人もラファエルお兄様との結婚を小さい頃からずっと夢見ていたようなので、大きな声では言えないけれど、結果として聖女になれなくて本当に良かったのではないかしら。


と、私も思っていたわ。あの日までは……。

あの日。私は目撃してしまったの。アマリア様の真実を。



  ◇   ◇   ◇



あの日、私は1人でルイーズ畑の近くにあるお気に入りのガゼボで読書をしていたの。

ガゼボを含む畑の周りはぐるっと一周蔓薔薇の生垣で囲われているので、この場所を知らない人は絶対にここへ近付くことはないの。だからガゼボは、私のお気に入りの読書スポットなのよ。


あの本を手に入れてから半年は経っていなかった筈だから……。あれは私が14歳になって2ヶ月後くらいかしら。

何の本だか知りたい?

もちろん私のお気に入りの、騎士様が捕われの姫君を救出に行くシリーズよ。あの頃の最新巻の第9巻を読んでいたの。

もうそらで暗唱できるほどには読みこんでいたわね。

そうね。だから、ラファエルお兄様とアマリア様の婚約が発表されてから、3ヶ月か4ヶ月後くらいだと思うわ。



「大丈夫よ。何も心配いらないわ。こんな傷、すぐに治してあげるからね。神々の御力をもって、()の者の傷を癒やし給え。ヒール!」



癒しの()()を唱える小さな声が生垣の向こうから急に聞こえてきたの。

ん? 誰かが誰かの怪我を治しているってことよね?

今の声。クロエお姉様でも、ヘンリエッタお姉様でも、ましてやマリアンヌ伯母上様の声でもないわ。

ちょっと待って。今このお城に、どなたか聖女様がいらしているなんて、私は聞いていないわよ?



「はあ。なんとか大丈夫そうね。でも、これが私にできる精一杯なの……」

「アマリア様? もしかして、聖女のお力が……?」



小さな野兎を抱えてしゃがみ込んでいたアマリア様が、私の声に驚いて立ち上がって振り返ったの。

私を見つめて見開いたアマリア様の目から涙が溢れ出して、お顔から血の気が失せていく様子が、手に取るように分かったわ。



「ル、ルイーズ、様……。あ、あの、私。どうしたら……」

「落ち着いて下さい、アマリア様。お兄様は、ラファエルお兄様はこのことをご存知なのですか?」

「いいえ。父にも母にも、誰にも話していません」

「……そうですか」



私はアマリア様の手を取って、ガゼボまで引っ張って行ったわ。しばらくしてようやくアマリア様は落ち着きを取り戻したようで、少しずつ話を始めたの。



「本当は、14歳の誕生日の半年程前に聖女の力が発現したのです。でも、本当に弱い力しかなくて。このまま私がこのことを黙っていれば、誰にも気付かれずに15歳になって、もしかして家に戻れるかもしれないという考えが頭をよぎりました」



アマリア様は既に発現している聖女の力を隠したまま、何事もなかったかのように共同生活を続け、教会で日々の訓練と奉仕活動を行っていたそうです。

聖女になるのが嫌だったわけではないけれど、最低限の力しか持たないまま、半永久的に聖教会に縛り続けられるのは耐えられない、そう思ったのでしょうね。



「もし、この事実が発覚したら、どうなるのでしょうか?」

「……分かりません」

「アマリア様は、このままずっと隠し通せるとお思いですか?」

「……分かりません」



もちろん私はこの秘密を漏らすつもりはありませんし、黙っていたことを責めるつもりもありません。

でも、秘密を抱えたアマリア様のお心が、いつか壊れてしまうのではないかと、とても心配なのです。



「ラファエルお兄様に、お話になってみては如何ですか?」

「ラファエル様に? ですが、それは……」

「お兄様なら、きっとアマリア様にとって最善の道を、アマリア様とご一緒に考えて下さると私は思いますわ。もちろん私からお兄様にこの件についてお話することは絶対にありませんし、アマリア様がこれ以上誰にも知られたくないとお考えでしたら、それでも構わないとは思います」



結局、決めるのはアマリア様ご自身なのだから。


ラファエルお兄様は、私が本当は “白の手” の持ち主だってことをご存知です。

それを「絶対に誰にも秘密にするように」と小さかった私に約束させたそのお兄様が、秘密を抱えたアマリア様を(ないがし)ろにするはずはありません。まして婚約者なのですもの!



「少し、考えさせて下さい」

「もちろんですわ」



アマリア様は私に向かって小さく微笑んだ後、ずっと膝の上で抱えていた野兎を地面に下ろしてから、お城の方へ戻って行かれました。



「あら、この野兎。まだちゃんと傷が治っていないのね……」



私は地面で縮こまっている野兎の傷をそっと撫でました。



「畑の野菜を盗み食いしようだなんて考えるから、こんな風に怪我をするのよ。どうしても食べたいなら、もっと深く抜け穴を掘らなくちゃ! 中途半端だと、また薔薇の棘にやられるわよ。ほら、もう完全に治ったでしょ? 次にここを通り抜ける時は気を付けてね」

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