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5・一年生一学期が始まります

まずは入園式である。今年は定員50人に対して入園するのは40人であった。

王都から遠い生徒も多く、入園式に出席する保護者は少ない。

当然私のどちらの両親も来ていない。


入園式は学園長の挨拶と先生の紹介で終わってしまった。


式が終われば各科の教室に向かう。生徒数が少ないので薬学科と魔法科は同じ教室だった。


教壇には薬学科のタミ先生と魔法科のキルダ先生が立っている。


「名前を呼びますので、呼ばれたら壇上に来て自己紹介をしてください」

名前は成績順で呼ばれる


「一番、ドナ:マーリックさん」

「はい」

返事をすると、ドナは壇上に上がる。

「ドナ:マーリック 家はベアリル領の都市ベアリルにあります。マーリックドラッグの娘です」

自己紹介が終わると次の生徒が呼ばれる。


「二番、リズさん」

名前を呼ばれ教壇に立つ

「リズです。生まれはタクロア領 ロズ村です」


そのあとも成績順に名前を呼ばれ自己紹介が続く


「六番、リコさん」

「リコなのです。リズ姉の妹なのです」


リコの自己紹介は変であったが、そんなことは関係なく自己紹介は続く。


「八番、キャロルさん」

「クエンチェス領から来たキャロルです。村の薬師になるために来ました。よろしくお願いします」

しっかりした挨拶である。


「九番、ニーナさん」

「…」

「ニーナさん」

「あっ、ははい」

慌てて教壇に上がる。

「ロベ… えーと、キグナスのほうから来たニーナです。よろちく」

嘘をつくと言葉が変になる。出来るだけ喋らない様にしよう。


「十番、ペネロペさん」

「ペネロペです。サンザナ領のパンチョ町から来ました。薬師の娘です」

ペネロペが最下位である。

成績優秀ではまずいと思って、わざと間違えたが、間違えすぎたようだ。

私の下にはペネロペしかいなかった。


薬学科の初回が終わり、魔法科の紹介のためにキルダ先生が名前を呼ぶ。


「一番、エマ君」

女性だが君で呼ばれた。

「俺がエマだ。ボーデン領 都市ソーラの港町リンマで親父と冒険者をしている。魔法が使えるから人数の少なくて困っている魔法科に入ってやった。冒険科の生徒をコテンパンにやっつけるので見ていてくれ」


無茶苦茶な挨拶だが、エマが一番なことの方が驚きだ。


そして自己紹介は続く


「五番、ナル君」

どうやらこの先生は生徒を君付で呼ぶようだ。

「ナルです。出身はアサラ連合国です。二年前から王都に住んでいます」


これで全員の自己紹介が終わった。

薬学科は全員女性である。魔法科の5人のうち男性は二人だ。

二人は居心地の悪そうにそわそわしていた。


そのあと、これからの授業内容の説明があった。


一年の一学期は、全学科の生徒が一緒に基礎学力や一般常識の授業を受け、薬学科としては薬草の基礎知識を受けることになる。とりあえず、マナを使った授業はないようだ。

マナを使う授業の前に何としても、マナの扱い方を習得しなければいけない。


一学期の授業が始まる。

講堂で行われる全学科生徒の共同授業の一般常識や基礎学力は私には問題ない内容だ。

ここで苦労しているのは冒険科の生徒である。


問題なのは薬学科の授業だ。

『薬草なんかまったく知らないぞ、だいたいロベルト帝国は岩だらけで薬草なんかあるのか。薬なら他の国から買っていたぞ』

心の中で叫ぶ。

薬師は居るには居ると思うが、私はロベルト帝国で薬師に会ったことがなかった。


一学期は9月から12月だ。10月の終わりには中間試験がある。

中間試験までの2か月で薬草に関する基礎知識を詰め込まなければならない。


さいわい、午後の授業は自習が多い、私は自習時間になると図書室にこもり必死で勉強することにした。

とてもリコのことを調べてなんかいられない。


「今日のは授業基礎的なことばかりだったね、知ってることばっかりだった」

薬師の娘ペネロペである。

「ペネロペは薬師になる気がなかったから勉強してこなかったんじゃないの」

キャロルも私と同じく薬草の知識がなくて授業に苦労しているのに、ペネロペは余裕をかましている。


「そりゃ、生まれた時から周りは薬草だらけだもん、嫌でもそれくらい覚えちゃうよ」

「ねー、ペネロペ薬草のこと教えて。キャロルも一緒がいいな」

そうだ、マナが使えなくても教科書の授業はペネロペに教わればいいんだ。


「いいよ。そういえばミーナがいつも図書室に行ってたのは授業についていくためだったんだね。次の自習の時から3人で勉強しよ」

それから3人の勉強会が始まった。


あれからひと月、3人の勉強会も順調である。

そん時ペネロペが

「ミーナとキャロルは薬草を見たことあるの」

私たちに聞いてきたのだ。


「ここに来る前に、村の薬師のところに行ってたから、少しだけ見たことあるわ」

「ミーナ見たことない」

「そうか、じゃあ学園で栽培している薬草を見に行きましょ」


教科書に書いてあることは必至で丸暗記する。

図書室にある参考書も必死で読む。

これで中間試験は何とかなりそうだ。

しかし、それだけでは薬草の本当のことはわからない。

中間試験後は、薬草を使っての授業が始まるのだ。


学園には薬草を栽培している温室がある。

薬草は王都から出てすぐのところにローズ学園で管理する森があり、そこでも薬草が採取できるようになっていた。


「ここにあるのは薬草のほんの一部よ、薬作りの基本に使うものばかりだわ」

ペネロペが説明する。

私とキャロルは薬草とただの草の違いが判らない。


「ねえ、ペネロペ。どうやって薬草って見分けるの」

「今の私にはできないけど、薬草のマナを感じるんだって、お姉ちゃんは小さい時から薬草をなでてマナを感じていたみたい。やっぱ、お姉ちゃんの方が薬師に向いているのにな」

ペネロペは薬草を見慣れているので、見ればある程度分かるそうだ。だが本格的に薬草を見つけたり薬を作るにはマナがどうしても必要みたいだ。

何としてもマナを教えてくれる人を探さねばならぬ。


「おいお前たち、薬学科のリズとリコってどんな奴だ」

寮に帰るとエマが聞いてくる。


「急にどうしたの。リズとリコは一緒に授業を受けているけど、彼女たちはバレッサ製薬商会の会長のお孫さんよ。マーリックドラッグの娘のドナと3人が薬学科のエリートで、私たちは近寄ることもできないでいるの」

キャロルが答える。


「いや、同じ部屋のアニスやナルといつも一緒にいるだろ。ナルとは魔法科で話をするがそこでリズとリコの事を聞かされる。その話からすると、どうもあの二人ただ物ではないきがするのだ」

ナルはリズとリコの自慢話をしているようだ。


リコのことを調べなければならない私にとって、興味を持つものが増えるのは良いことなのかな。

エマを使って、うまくリコのことがわかるといいんだけど。

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