3・試験です
6月半ばに試験はある。
「お父さん、お母さん試験に行ってまいります」
試験会場までは歩いていく、平民の子供が馬車で会場に乗り付けるわけにはいかない。
試験会場の受付で受験票を見せる。
「はい、10番ミーナさんですね。では、奥の試験会場に進んでください」
「えー、は、はい、10番のミーナです。奥に行きます」
ミーナと呼ばれるのにまだ慣れていないのだ。
試験が始まり問題を確認する。
数年前までの試験問題集もきっちりやってきた、私にとっては簡単な問題だ。
しかし、優秀な成績で入ってしまっていいのだろうか。
今は革加工職人の娘だ。マナが使えないのに成績トップでは怪しまれてしまう。
しかたない、難しい問題は白紙にし、ちょっと勘違いした回答を混ぜて、真ん中くらいの成績を狙うことにしよう。
試験はぺーバーテストだけだ。実技も面接もない。
『よかったマナが使えないのばれないで済むぞ』
私はほっとしたが、そもそもマナの使えないものが薬学科を受けるとはだれも思わない。
マナの確認は必要ないのだ。
帰って受験案内を読めば、試験は筆記だけと書いてあった。読み落としたようだ。
ちなみに魔法科は魔力の測定があるらしい。
メシール王国では7歳で魔力検査があるが、検査を受けないでいた者もいるからだ。
試験の合格発表は三日後にある。
今年は定員しか受験してないから、よほどひどくなければ合格できると試験後に会場で言われた。
もし落ちたら、よっぽどひどい人に認定されてしまう。間違った回答をしない方がよかったかな。
「ミーナさん、手数料がかかりますが、通知は送ったほうがいいですか」
「あっ、ここに見きます。大丈夫です」
秘密の任務である。通知を家に送られるのは好ましくないし、手数料がもったいない。
三日後、試験会場だった場所に合否が張り出される。
「あった10番」
一人で来たが声が出てしまう。なにか知らないが試験に受かると嬉しいものだ。
『ここは自分にご褒美で、スイーツ店でも行こうかな』
せっかく町中に来たのだ。楽しんでから帰りたい。
ロベルトでは一人が多かった、一人喫茶店も問題ない。
帰りには、ちゃんとキグナスでの両親にケーキのお土産を買いました。
帰ると、ちょっと豪華な夕食が用意してあった
「ミーナが受かるのを信じてましたから、お祝いの食事を作りました」
お母さんが、お祝いの料理を用意してくれた。
「ああっ、ありがとう。ううう、あありがとう」
なんか涙ぐんでしまった。
試験が終われば、ローズ学園のある寮に入る準備だ。
寮は夏休みの7月になれば入ることが出来るが、ほとんどの人は8月に入ってからだ。
王都に住む人も寮に入るが、前日ぎりぎりに入る者もいる。
「王都まで、乗合馬車で五日もあれば着くのだろ。それまでここにいてもいいんだよ」
とてもうれしい言葉であるが、出来れば少しでも早く寮に行って、マナを教えてくれる人を探したい。
「ありがとう、私もできるだけ居たいんだけど、向こうでやりたいことがあるの、だから7月の終わりにはここから王都に向かいます」
そして旅たちの日
「行ってきます。短い間ですけど、楽しい時間でした。お世話になりました」
両親は乗合馬車の停車場まで見送りに来てくれた。
「行ってらっしゃい、体には十分気を付けるのよ」
「頑張って来い、駄目ならいつでもここに帰ってきていいんだぞ」
乗合馬車は帝国に向け発車した。
私は両親が見えなくなるまで手を振っている。
ロベルトを出るときは無かった涙がほほを伝った。