1・初めましてソニアです
私の住むロベルト帝国の王様は幼くして王になった。
先代王の遅い子で、そして現王が小さい時に先代王が亡くなったからだ。
私が生まれる14年前のことである。
先代王が亡くなり、子供では政治をおこなう事は難しい。
そこで私利私欲に固まった貴族たちが、現王の代わりに政治をおこなった。
当然、国民の暮らしは厳しくなる。
ロベルト帝国は今でも貧しい国なのだ。
厳しい冬も終わり、暖かくなってきた頃
「ソニア、9月からメシール王国のローズ学園に通いなさい」
いきなり父親から言われる。
どうやら魔女ターニア復活で失敗し死亡したと思っていた子供が生きていたらしい。
メシール王国の都市ナーマムの近くで、魔熊を倒した少女がターニアの特徴である二本の片手剣を使っていたのだ。
少女の名はリコといい、今年の9月からローズ学園に入園することが分かった。
私に、リコのことを調べさせ、あわよくばロベルト帝国に連れて来いというのだ。
ロベルト帝国は500年前にドラゴンが出現した国である。
その後ドラゴンが封印され、荒らされたアサラの人々は互いに協力し、復興を成し遂げた。
メシール王国も復興に協力している。しかし、ロベルト帝国は何もしなかったのだ。
そのせいで、しばらくの間、条件の悪い貿易が続いたらしい。
大昔の話であり、今では普通に貿易をしているのだが、周辺諸国との街道の整備も悪く、冒険者ギルトや商業ギルドも、他の国の応援でやっと運営しているのだ。
当然余分な経費が掛かる。その分を乗せているだけだが、私の父は、まだ昔の嫌がらせで不当な貿易をさせられていると信じている。
王様も成長し、政治に強くかかわるようになると、私利私欲のための政治を行ってきた貴族も贅沢な生活が出来なくなってきた。
子供だった時の王様のように自分たちの言うこに従わせたい貴族は組織を作り秘密裏に活動していた。
秘密組織は、封印されたドラゴンを使って、王を自分たちの言いなりにし、周辺諸国を脅し自分らに有利な貿易をしようと考えているのだ。
そんなこと無理に決まっている。子供の私でもわかる。
ターニア復活失敗で、あきらめたと思っていたのに、秘かに活動を続けていたようだ。
「お父様、ローズ学園はメシール王国の国民でないと入れないはずです」
「わかっている。段取りが整ったからお前に話したのだ。メシール王国の都市キグナスにお前えの偽装用の身分を用意してある。試験から入園までの間、ばれないように偽物の家族も用意してある。お前は試験に受かるようしっかり勉強しておけ」
父は貧乏貴族の三男坊、自分が自由に使えるお金は少ない。
一生懸命働けばよいのに、楽していい生活がしたくて変な組織に入ったようだ。
寒い国に変な父、ここにいても碌なことはない。
父のほうから国を出してくれるのだ、私はこの話に乗ることにした。
旅の支度をして、ロベルト帝国からメシール王国のキグナスに向かう。
帝国内は貴族の娘だから、当然馬車に乗る。
国境の検問所も問題ない。
偽装するのは平民の娘だ、都市キグナスの町中を馬車で行くわけにはいかない。
キグナスに近い村で馬車を降り、偽装家族の父と母と一緒に歩いていくことになった。
キグナスにある、偽装家族の家に着く。
特別に用意したとは思えない、以前から夫婦で済んでいる感じの家であった。
「ソニアちゃん、今日からは私たちの子供ミーナとして暮らすのよ」
偽りの母である。
「そうだ、私たちを本当の親と思ってくれていいのだぞ」
偽りのも声をかけてくれた。
こうして、ローズ学園の入園試験に向かい、キグナスでの生活が始まった。