魔法は可能性に満ちている
俺がこの世界から瘴気を消すと決めてから一週間ほどが経った。いきなり瘴気を消すなんて大それたことをできるとは思っていない。だから一先ずは瘴気に立ち向かえる武器が欲しかった。
バカな俺でも思いつくこととしては、瘴気という毒を中和する解毒剤のようなものを作るとか、ガスマスクのようなものを作ることだろうか。しかしそのどちらも瘴気を中和する物質がなければ成り立たず、そんな都合の良いものがおいそれとそこらに転がってるわけがない。
ということで、瘴気へのアプローチは完全に行き詰まっていたのだが、そんな時はたと閃いたのだ。この世界には幸いなことに魔法というファンタジーなものが存在するのだ。それを利用して瘴気をどうにかできないだろうか。そう思い至った俺は神父様へ魔法について話を聴くことにした。
この世界には実に多種多様の魔法あるようだ。なにかを確認しながらというわけでもないのに、神父様はスラスラとたくさんの魔法を教えてくれた。そういえばテトが以前、ヨルだけじゃなく神父様も壁内出身だと言っていたが、この膨大な知識量もそこらへんが関係しているのかもしれない。
なにはともあれ、教えてもらった魔法の中で瘴気を消すという目的を達成する上で一番可能性がありそうなのはやはりというか、光魔法だった。聖なる力で瘴気という悪しきものを祓うというのが一番しっくり来るだろう。
「ところでなぜそんなことを?」
急に魔法について熱心に聴いてくる俺を不思議に思ったのだろうか。神父様はにこやかにそう聴いてきた。本来なら事情を話して、光魔法の使い手である神父様に協力を願うところなのだが……。
「えっと、自分の使える魔法がわかった時の下準備……ですかね」
俺は神父様に嘘をついた。なぜなら神父様に瘴気を無くすという俺たちの目的は隠すようにとテトに言われていたから。