第六十八話 その頃関所では……
読んでくださりありがとうございます。この回には珍しくジャロが登場しません。こういう話もたまには良いですね。
……同じ頃、ヴァルトプトル南東の関所
やや眠そうな顔をしていた門番の所へ男女2人組が関所を通ろうと近づいてきた。
「ふぁあ、はっ! 失礼しました。こちらヴァルトプトル南東の関所です。どうぞお通りください」
「ははは、なんだか眠そうだね。危うく寝そうになっていたことは内緒にしておくよ」
「……すみません、助かります」
いやぁこの関所に全然人なんて来ないからうとうとしてしまったなぁ。なんか顔を確認するよう言われてたけどろくに確認せずに通しちゃったな。まあ大丈夫でしょ、多分。……うげ、上官が来たよ普段は来ないのになんでこういう時に限って来るんだよ、まったく。
「こちら異常ありません、何か御用でございますか」
「少し前から貴様の働き振りを見ていた。先程の男女2人組の顔は確認したのか? 確認したようにはとても見えなかったが。」
「すみません、ちゃんと確認しておりませんでした」
「馬鹿者! ここは俺が見ておいてやるからさっさと確認してこい」
「わかりましたぁ! 至急行って参ります!」
かなり焦ったのかはたまた怯えたのか青白い顔になりながら門番は先程通した男女の顔を確認しに駆け足で追いかけていった。
「人間焦るとロクなことはねぇよなぁ? おい、マゼンタもう出てきていいぞ」
「隠れるのもなかなか堪えるもんたぜ、しかしそんな服どこにあったんだよ?」
「もちろん上官らしき人物から強奪したに決まっている。昼間っから酒呑んでるような奴だからすぐにバレやしないさ」
「早く戻んねぇとな、急ごうぜ」
「お前が姿丸見えで煙幕張るのが悪りぃんじゃねぇか。おかげでコソコソ逃げるハメになっちまったんだろうがよ。バイクもねぇから徒歩で行くぞ」
「それはあなたがコマンダーに止められたからじゃないの?」
「そう言うな、アイツは中々強くなるぜ。アイツのことも早く報告しないとな。早くしねぇと門番が戻ってきちまう」
そう言うとマゼンタと呼ばれた赤い髪の女と、ビエラは関所を抜け火の国ヴォルカパルスへと足を急がせた。2人の姿が見えなくなった頃に漸く門番が帰ってきたようだ。いもしない上官を探しているその姿はやや滑稽にも思われた。
不注意な門番もいるものだと思っていらっしゃる方も多いかもしれません。こうした眠い時や疲れている時ほど人間は信じられないポカをするものです。彼は寝ていたことを誤魔化すことしか頭になかったのでしょう上官の顔すらロクに見ていません。まあ怒っている人間の顔を怒られている張本人がまじまじと見れるほど肝が据わっている(?)人の方が珍しいかもしれませんね。