第三百三十二話 星が降る夜
読んでくださりありがとうございます。冥狼の登場です。
落ちた小さな紫色の宝石から膨大な魔力が溢れその中から銀と黒に輝くものが飛び出して来た。突然現れたそれはCM・起源型が展開した魔力を瞬く間に無力化した。
「何だと……? ……何が起きた⁉︎」
ジャロの目の前にはついさっきまでは存在すらしていなかった大きな狼が佇んでいた。その銀と黒に輝く狼の名をジャロは知っていた。
「……冥狼……ウプウアウト?」
[……いかにも、わたしの名は冥狼ウプウアウト。我冥界を縄張りとするものなり。……そこにいるわたしに魔力を向けたものはかつて我が縄張りを荒らした……、違うか?]
突然のウプウアウトの登場にCM・起源型はたじろいだ。なにしろ目の前でジャロを処理するために展開した魔力をいとも容易く無力化されたのである。ウプウアウトとの間に実力差がかなりある事は明白であった。
「……なんだこいつは。……だが私に死は存在しない。魔力複製装置がある限り永遠に不滅なんだぞ‼︎ ……あぁそうさ。私が冥界の扉をこじ開け大量の魔核を……」
「ヒュンッ‼︎」
CM・起源型が言い終わる前に目に見えない速度で何かが彼の真横を通過した。背後で何かが崩れる音がした。彼は最早振り返って見ようとはしなかった。
[……貴様の言う魔力複製装置とやらは、……そこにあるガラクタか? ……さて冥土への土産はもう十分だな。冥界で貴様の罪を悔いるが良い]
そう言うとウプウアウトは膨大な魔力を展開し始めた。展開された闇の魔力によってCM・起源型はもがく事もなく奈落へと吸い込まれて行った。
「……終わったのか……?」
矢継ぎ早に起こったことをロンドールは処理しきれていないようだ。困惑した顔でウプウアウトを見つめていた。…無論それはジャロもまた同じであった。困惑しているジャロをじっと見つめた後ウプウアウトは静かに頭を下げた。
[……礼を言う。お前のおかげで縄張りを荒らしたものが分かったのだ。あやつには冥界できっちりと罪を償ってもらうつもりだ。あやつがこの世界で出来る事はない]
ウプウアウトのその言葉はCM・起源型に、アトリエに関わる事がすべて終わったことを示していた。悪事を働こうとする主体がいなくなった事はそれすなわちこの世界の平和が守られた事を示していたのであった。
「そうか、……世界を守る事が出来たんだな。……あぁ、星空がとても綺麗だ」
ロンドールのその言葉を聞き、長い長い戦いを終えたジャロは夜空を見上げた。平和が守られたことを、今までの頑張りを労うかのようにその夜空には、幾度も、幾度も流れ星が降り続いたのであった。
この作品を楽しんでいただきありがとうございます。次回が最終回となります。最後までこの作品を楽しんでいただけると嬉しいです。