第三百十五話 ロンドールの決意
読んでくださりありがとうございます。ロンドールが牢獄にいたのにはどうやら裏があるようですね。
「……それを今知って何になる? そんなことはどうでも良いだろ、早くついて来な」
名前こそ分かったが相変わらずダイガは謎が多い人物である。ダイガのことを詳しく知りたいジャロであったが今はとりあえずついていく他無いようだ。ダイガは牢獄を出ると少し進みやがて立ち止まった。どうやらここが先程言っていた医務室のようだ。
「……ジャロくん。さっきはありがとう。おかげで随分楽になったよ」
「いえいえ、僕は何もしてませんよ。……それより何で牢獄の中なんかにいたんですか?」
「それがね、……よく分からないんだ」
「その辺の事情は当人に聞くのが一番早いだろうな。……なぁ?」
ダイガは医務室の扉に向かってそう問いかけた。問いかけるのとほぼ同じタイミングで医務室に入って来たのは自警団団長のトガンであった。相当焦って来たのか息がやや切れそうであった。
「……ダイガさん。私をお呼びとのことで。何のことやらさっぱり分からないのですが。……それにこいつらは一体?」
医務室に入りまっすぐダイガを見ていたトガンであったがやがて近くにいるジャロとロンドールも視界に入ったようだ。自分が牢獄へ処罰した人が2人牢獄の外にいるためやや困惑しているようだ。
「……トガン、お前に率直に聞こう。お前誰に言われてこいつらを処罰した?」
「……?……誰とは一体どう言う意味……」
「やかましい! ごちゃごちゃ言うんじゃねぇ。……俺の質問にただ答えるんだ」
ものすごい剣幕に流れが上手く掴めていないジャロとロンドールはやや怯えていた。当然それを一身に浴びているトガンは目に見えて怯えてこそいないが、入って来た時と比べるとやや小さく思われた。
「……、この国の一般市民らによる告発により処罰いたしました」
「……その一般市民らとやらに、……アトリエなんていう奴はいねぇか?」
トガンは答えなかった。しかしダイガが発したアトリエという名前に反応を示していた事は傍目から見ていたジャロにもよく分かった。
「……すみませんオーナー、家族を盾にされ……仕方がなかったのです。……未熟な私を、……どうか許してください……」
「馬鹿やろう! ……そんなこと俺に早く言えってんだ」
「……すみません、オーナー……」
医務室の中は異様な空間になっていた。誰も言葉を発する事も許されないのではと思われるほど重い空間であったが、ロンドールが口を開いたのである。
「……つまり僕はアトリエによってこの国に連れて来られ、アトリエによって処罰されようとしていたってことか」
「……そのようだな。俺の弟子が済まんかった」
「いえ、あなたがそれを謝る必要はありません。……もちろんトガンさんも。悪いのはアトリエですから。……私の弟子が本当に申し訳ない」
「……そうか、つまり弟子がいるってのは本当だったようだな。……それでお前はアトリエをどうするつもりだ? まさか放っておく訳じゃねぇだろ?」
そう聞かれ、ロンドールは悩むように下を向いた。そして意を決したかのように強く顔を上げたのである。その顔には怖さが混じりながらも確かな決意に満ちていたのである。
「僕は……アトリエを、……止めてみせます。ですから皆さん協力をお願いします」
アトリエは随分と悪事を働くようです。目的のためなら買収や脅迫も厭わないようですね。かなり厄介な人物と思われます。そしてそのアトリエにロンドールは皆の協力と共に立ち向かうようです。つまりジャロの出番ですね。