第三百十三話 男の正体
読んでくださりありがとうございます。男の正体が判明します。一体誰なんでしょうか。
「……いえ、僕は知らない人です。ディアノルトのギルドマスターのグラッドさんから頼まれたんです」
「グラッド……ねぇ。……あいつも偉くなったもんだな」
説教じみた男の口調がやや変化したように感じられた。あまり男の顔を見れずにいたがジャロは改めて男の表情を見た。深く刻まれたシワにやや迷いの色が感じられた……ジャロにはそんな風に思われたのである。
「……一応聞いてやろう。その協力してくれる人って言うのはどこの誰だ?」
「どこの人なのかは知りませんがダイガという名前の男の人です。グラッドさんの名前を出して協力してくれるよう頼んでくれ……と」
男は深くため息をついた。何故かはジャロには分からなかった。男は振り返ると壁際に向かって口を開いた。
「……おい。……ここの鍵を寄越せ」
「……良いんですか? 私は責任は取れませんよ?」
「構わんさ。トガンにはジジイが耄碌したとでも言っておけ」
ジャロが不思議がってやり取りを見ていると男は鍵を使ってジャロが入っている檻を開けたのである。
「ほらよ、お前だけ出してやる」
「……ありがとうございます」
どうやら牢獄から出してくれるようだ。檻の中にいる鎖で繋がれた男たちは羨ましそうに牢獄から出るジャロを見ていた。鎖で繋がれているために出たくとも出られないのだろう。
「……あぁ、自己紹介がまだだったな。……って言っても大体もう分かっているだろうがよ。俺の名はダイガ。お前の言うグラッドの知り合いって奴だ」
「ダイガさんはあなただったんですね。でもなんでここへ?」
「それは俺が説明しよう」
壁際から現れたのは自警団副団長であるソウガである。どうやらダイガに牢獄の鍵を渡したのはソウガだったようだ。
「トガンから牢獄へ新しくぶち込んだ奴がいると聞いてね。でも私も君のことをよく知る訳では無いからね。君を関所に通してくれたと言うダイガさんに来てもらったのさ。うちの自警団が済まなかったね。さ、こんな所長居は良くない。早く出ようか」
ソウガに従ってジャロたちはリダルフ牢獄から出ようとした。その時ジャロは何か固いものを踏んづけてしまった感触を覚えた。踏んづけた物を拾い上げるとそれはどうやら誰かの眼鏡のようである。誰の眼鏡かは分からないが何故だか見覚えがあるようにジャロは感じた。……その時どこからか声が聞こえて来た。
「…………、済まないが……その眼鏡を私に……返して……くれないか。…殴られた……拍子に……飛んで行って……しまったんだ」
息も絶え絶えのその声は檻の外で鎖に繋がれている男から聞こえて来ているようだ。拾った手前ジャロはその男に眼鏡をかけてあげることにしたのである。
……つまりここでジャロはその男の眼鏡をかけた本来の顔を目の前でまじまじと見た訳である。あちこち殴られて傷だらけで傷のない顔を想像するのが難しい程であったがその顔にジャロは見覚えがあった。……そう彼こそジャロが救出しに来た人物。ロンドールその人だったのである。
ついにロンドールを発見しました。一体なぜ彼はゲッコウ団に連れ去られこんな場所にいたんでしょうか。そしてどうしてこんな目に遭っているんでしょうか。