第三百八話 低く良く通る声
読んでくださりありがとうございます。ジャロに声をかけてきた人物は何者なんでしょうか。
「……え。ええと、……そうです。ヴォルカパルスに行こうと。……この先にあるんですよね?」
低いが良く通る声でそう尋ねられたジャロは少しばかり驚いたが嘘を吐く必要も無いだろうと素直に答えた。男はジャロの方に見向きもしなかった。その代わり低く良く通る声がまた聞こえて来たのである。
「止めておけ。あんなところわざわざ行く必要なんてねぇんだ」
……このお爺さんが言っているんだよね。こっちを見向きもしないから会話しづらいんだけど。止めておけ……ねぇ。確かに好きで行く訳じゃ無いし、ギルドじゃなくて自警団が仕切っているとか言う噂でそれは確かになるべく行きたくは無いけどさ。
「ありがとうございます。でも行かなくちゃ行けないんです」
そうジャロが答えると今まで見向きもしなかった男が首だけこちらに向けた。そしてやはり低く良く通る声がしたのである。
「ほう……ならば仕方あるまい。進むが良いさ。ヴォルカパルスはすぐそこだ。……俺は行かない方が良いと思うがな」
やっぱりこの人が言っていたんだな。しかし行かない方が良いなんて何度も警告されるとなると……例えばかなり治安が悪いとかなのかな。気をつけてロンドールさんを探さないとな。その前にダイガさんだっけ? 上手くその人が見つかると良いんだけどね。
……お、関所が見えたな。確かにあの男の人が言っていた通りすぐそこだったな。
――
ヴォルカパルス 西関所
――
さてと、ヴォルカパルスってどんな所なんだろうな。通常ならギルドに向かうからね、まずは自警団の所に行けば良いのかな。
「こちらヴォルカパルス西関所である。現在ヴォルカパルスへの通行は制限中だ」
「ええと、ギルドカードは……あれ? 通れないって事ですか?」
驚いた顔でジャロは門番の顔を見た。ギルドランク☆5以上で行くことが出来るとは何だったのか。そんな疑問がジャロの頭を占めていた。
「分からないか? お前のようなコマンダーを通す事は無いと言う事だ。分かったら即刻この場から去るのだ」
えぇ? なんだこの言い草は。コマンダーを通す事は無いだって? ギルドランク☆5で通れないって事はもうそれは通る事は無理って事じゃないかい? 一体どうすれば良いんだよ。
その時困惑し何が起こっているのか分からない顔をしていたジャロの後ろから低く良く通る声が響いて来たのである。
「通してやれ。……身元は俺が保証しよう」
「! あなたは……。良いんですか? 通しても」
「あぁ、通してやれ。……俺は止めたぞ? 何がしたくてこんな国に入るのかは知らんが精々自分で自分を守ることだな」
どうやら先程のお爺さんが助けてくれたようである。しかし門前払いされる所が一転して入れるようになったのは間違い無くこのお爺さんのおかげである。このお爺さんは一体何者なんだろうか。関所を通る時に聞きたかったがその姿は既に消えていたのであった。
関所でひと悶着ありましたがどうやら無事にヴォルカパルスに入国出来そうです。しかしあのお爺さんが結局何者かはわかりませんでしたね。いずれ分かるようになると思います。