第三百六話 関所の門番は不可解
読んでくださりありがとうございます。どうやらティムニーの森への通行が制限されているようです。なぜかは少し分かりませんが。
「知らなそうな顔をしておられると言う事は大方、国外からギルドに寄らずにここを通ろうとしていらしたのでしょうが、こちらにも仕事と言うのがありましてね。もっとも違う目的があれば話は別ですが」
これは面倒な事になったぞ……。グラッドが極秘のクエストと言った以上はヴォルカパルスに行くことも伏せた方が良いんだろうけど言わなければ通れない雰囲気だ。……これじゃあ誤魔化して通る事は出来そうに無いね、仕方ない。
「僕は……、ティムニーの森ではなくヴォルカパルスに用があるのです。これで通してもらえますか?」
門番はジャロから提示されたギルドカードを一通り見ているようであった。その行為はジャロには分からなかったが何か意味のある行動であるように思われてならなかった。
「やはりそうでしょう。ギルドランクの条件は満たしておられますから私にそれを止める権限はありません。無事に帰って来られることを願っております。どうぞお通りくださいませ」
どうやら通してくれるようだ。まさか関所で一悶着あるとは思わなかったがひとまずは無事に通過出来たな。……しかしどうしてティムニーの森への通行が制限されているんだろうな。
これならギルドに寄って情報を仕入れてからヴォルカパルスに向かうべきだったか? まあ何はともあれグラッドさんから貰った地図を見ますか。……ん? 何か手紙のようなものも入っているな。
……その頃ジャロが通った後の関所では門番が先ほどのジャロとのやり取りを思い出しながら首をかしげていた。
「……しかし仕事とは言え変な指示だよなぁ。ティムニーの森へは制限しているが、ヴォルカパルスへは制限していない。だからその場合ギルドランクさえ満たしていれば名前を聞いてそのまま通せなんて今まで聞いたことがないや。まあギルドマスターからの指示なら従うんだけどね。……お、上官が来たな」
門番が上官に向かって敬礼をした。その仕草を一瞥するとニヤリと笑って口を開いた。
「指示通り動いているかね?」
「はい! 1人を除きこの関所を通った人物はいません」
「1人? ヴォルカパルスに行こうとする人物がいたという訳だな。……してそやつの名前は?」
「ジャロと言う名のコマンダーです。ギルドランクが☆5に達していたため名前を聞き通しました」
「ほう、……案外早いものだな」
「……早いとはどういう意味でしょうか?」
「こちらの話だ気にする事はない。そやつ以外は誰も通してはいないな? 引き続き業務に励め。私は今からそのことを報告せねばならん故に少しここを離れる。……絶対にサボるんじゃねぇぞ?」
「了解致しました!」
敬礼をする門番を見届けて上官は静かに関所を去って行った。彼は知り得た情報を報告しに行くようである。しかしその情報はギルドマスターであるカナリアに届くことは無かった。代わりにその情報が届けられた場所はヴォルカパルス近くのとある場所……言い換えればゲッコウ団の拠点であった。上官はいずれ手に入るであろう大金の事を考えまたニヤリと笑ったのであった。
結論から申し上げますとこの門番の上官はゲッコウ団によって買収されているのです。上官の指示を健気に遂行している彼ですが残念ながらギルドマスターからそんな指示は出ていないのです。