第二百六十七話 トリバの過去
読んでくださりありがとうございます。どうやらトリバはウィーノに恩があるようです。
「……なるほど、正面から王殿へ入れたら良いと言う訳だ。……うん、無理かなそれは」
「……だよねぇ。でもウィーノさんは私も救出して差し上げたいんだ」
「へぇ、トリバはウィーノさんと知り合いなの?」
「うん、命の恩人と言っても良い。みんな私が流行り病で亡くなったと思っているのにも関わってくるんだけどね、実は私は誘拐されていたんだ」
……誘拐? 当たり前だけど初めて聞く話だな。そしてその話がトリバが流行り病で亡くなったことになっている事にも関わってくると。……一体何があったんだろう。
「ある日母上と口論になってね、王殿を飛び出したのさ。あの時母上は人が変わったかのように私にはよく分からない事を言い出したんだ。あなたは王族に相応しくないって言われてついカッとしてしまってね。そして王殿を飛び出して孤児院に差し掛かった時辺りにいた孤児院の子どもたちと一緒に攫われたんだ。……10人くらいだったかな」
「へぇ、トリバは王殿を飛び出してしまったんだ」
「今では後悔しているんだけどね。孤児院の子どもが大勢攫われたのに捜索は大々的には行われなかった。むしろ私を捜索する人たちの方が多かったらしい。私たちを攫った暴漢たちがラッキーだとしきりに言っていたよ。だから私は誰も助けて来てくれない。どこかへ売り飛ばされるんだと覚悟を決めた……。その時突入してきたのが当時騎士隊だったウィーノさんだ。ウィーノさんは暴漢たちを薙ぎ倒し私たちを全員開放してくれたんだ。ウィーノさんは私だとは気づいてなかったようだけどね。そして王殿へ急いで帰ろうとしたんだ。そうしたら……」
「そうしたら? そうして……どうなったんです?」
「父上が崩御され私も亡くなったことになっていたんだ。王殿にいるのは母上だけ、……とても王殿へ戻る気にはなれなかった。そうして私はトリバの名を捨てたのさ」
ううむ、結構根深い事情があったんだな。でもどうしてそれじゃあトリバは流行り病で亡くなったことになったんだろう?
「なるほど、トリバ様が亡くなったことにされたのは恐らくトリバ様が生きていることがなんらかの理由で不都合だったのでしょう。その理由までは分かりませんが、流行り病で亡くなった場合多くは死体を誰にも知られずに処分します。死体から病が広がる恐れがあるからです。その時トリバ様が王殿へ戻られなかったのは良い判断かと。恐らく戻れば殺されていたに違いありません」
なるほど、トリバをいなかったことにしたかったって事か。……うん? ちょっと待てよ。
「それじゃあそれも含めてレイテントの策なのかもしれません。実は……」
ジャロは2人にビリジオ妃がガロン王が崩御されるより前に崩御されていたことを話した。
「……かなり信じられない話ではありますが、辻褄は確かに合いますな。トリバ様が人が変わったと感じられたのは本当に人が変わっていたのかもしれません。そしてビリジオ妃が暗殺されたと言うのもレイテントの謀略だとすれば、彼らの目的は……」
「この国の王になること……」
「許せない……。つまりレイテントによって私の家族が殺されたって事だよね。……ジャロ、ウィーノさんを救出しに私も行こう。そしてレイテントの闇を暴くのだ。この国をそんな奴らに好き勝手にさせてたまるものか」
トリバの過去が明かされました。喧嘩して家を飛び出すなんてことは良く有ることだとは思いますがタイミングが悪かったですね。いや、トリバが王殿を飛び出すことも織り込み済みだった……のかもしれません。
レイテントの陰謀の一部を知ったトリバはかなり怒っているようです。さあ悪者を退治する時が来ました。