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第二百五十三話 夜の分岐点

 読んでくださりありがとうございます。今回はいつもより少し長めです。夜は不思議なものです。夜の間に思わぬうちに物事が進んでいたりするのですから。


――

ギルド ムーロサッケル支部

――


 ジャロがギルドへ戻るとウィーノとマバロがいるテーブルがやけに静かな事に気がついた。不思議そうにテーブルへと近づくと微かに寝息のようなものが聞こえてきた。


 ……これもしかして寝てるのか? 起こすのも申し訳ないとは言え起こさないとどうしようもないよな。とりあえず2人に近づきますか。


 ジャロが静かにテーブルへと近づこうとすると閉まりが悪かったのかギルドの扉が軋んだ。


 その音でようやく2人はジャロに気づいたらしくハッとするとすぐにジャロへ振り返った。


「おや帰還なされたか。何か情報は掴めましたかな」


「……そうですね。これは教会近くの孤児院からの情報なんですが……」


 ジャロは居眠りをしていた2人を追及しないことにしたようだ。まだ頭が冴えて来ては無さそうな2人に少年から得られた情報を伝えた。少し理解が遅かったようだが2人にもその情報は有意義なものに感じられた。


「なるほど、教会に見張りをつけているのですな。確かにご遺体が保管されているとすればその場所が今のところ一番怪しいですな」


「しかし突入するとして鍵はどうするんだ? 鍵をどこからか手に入れるよりはぶっ壊した方が早そうな気がするがよ」


「僕もそこが気がかりでして。鍵ってそんな簡単に壊せるものなんですか?」


「仮に鍵がどれだけ強固だろうと扉はそこまでだろうよ。魔導士がバリアを貼っているならともかくただの鍵だったらぶっ壊せると思うぜ」


 なるほど、中に入れれば良いんだから別に鍵を使って開ける必要は無いのか。それじゃあ明日の夕方に突入すれば良いかな。


「突入されるのは明日の夕方でよろしいですかな?それならご遺体を見つけられましたらこれを使って我々に伝えていただければ我々もその場に向かいましょう」


『携帯式狼煙を手に入れた』


 狼煙かぁ……。なんだか雰囲気があるな。これは俄然明日が楽しみになって来たな。






 ……夜も更けて辺りは真っ暗闇であった。辺りが闇に包まれ人影が判別出来なくなっても教会の鍵付きの部屋を孤児院から眺める者がいた。少年である。彼はジャロの事を思い出しながら明日の夕方にあの謎の場所に何が隠されているのか分かるかもしれないと夜から気持ちを抑えられずにいたのだった。


 少年が鍵付きの部屋を眺めているとどうやら鍵付きの部屋の様子が少しおかしいことに気付いた。目をこらして見ると何やら見張りと男が話をしているようであった。一体何の話をしているのだろうと少し興味が湧いた。そこで孤児院の敷地内で一番、鍵付きの部屋に近い場所に向かい聞き耳を立てたのである。


「……の中の遺体を……。本当なの………」


「良いから……。俺の言う……」


 ……ダメだあんまり聞こえないや。でも遺体って聞こえたな。遺体ねぇ……。あのお兄さんが探していた遺体と一緒なんだろうか? もう少し詳しく聞きたいけどここじゃあんまり聞き取れないや。


 少年は夢中になって大人たちの言葉を聞き取ろうとしていた。しかしそのせいで孤児院から大人が少年に近づいていることにまったく気づけないでいた。


「お前さんここで何をしているんだい? 寝る時間はとっくに過ぎているんだがねぇ……?」


「……あ。あの……その……」


「問答無用! さっさと孤児院に戻って寝るんだね。まったく聞かん坊なんだから嫌になるね」


 ……これ以上は無理か。せっかくお兄さんが私の話に興味を持ってくれたんだから手助けになればと思ったけど……。まあ良いや明日になったらあそこに何があるか分かるんだ。素直に明日まで待とうか。


 少年は素直に孤児院の自分の部屋へ戻るようだ。しかし少年が思うように事は進まなかった。そしてそれはジャロやマバロたちにとっても誤算であった。その日のうちに鍵付きの部屋からビリジオ妃の遺体がどこかへ運び出されたのである。


 それはすなわちビリジオ妃の遺体を厳重に保管しておく必要が無くなった事を表していた。ジャロが鍵付きの部屋に突入する事に決めたその日はムーロサッケルで最も黒く陰謀が渦巻いた日であった。……しかしそれはジャロたちには知る由も無かったのである。


 少年は可愛らしいですね。まるで遠足前日の子どものようです。しかしそのせいで僅かに夜の一端を見てしまうことになりました。そして次の日はムーロサッケルの歴史に深く関わる出来事が起こってしまうのです。

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