第二百四十六話 指輪の持ち主は……
読んでくださりありがとうございます。どうやらウィーノには指輪に心当たりがあるようですね。
「……失礼、その指輪を詳しく見せてもらっても?」
「ええ、見て下さい。ともするとあなたの方が詳しいのかもしれませんね」
手紙を読んでいないジャロには何の事だかさっぱり分からなかったがアグエラはどうやらウィーノには指輪に心当たりがあるだろうと言う事を分かっていたらしい。しかし心無しかアグエラの顔から血の気がやや引いているようにジャロには感じられた。感じられただけでその理由には見当もつかなかったのだが。
「……間違いありませんな。その手紙の送り主はこれをどこで?」
「部下が少し前に錆びて汚れた状態で発見したのだとか。場所はこの国の教会近くだそうですよ?」
「……あの。すみません何が何だかわからないのですが……」
ジャロが意を決して2人に尋ねた。辺りには少々重い空気が流れたがやがてウィーノが口を開いた。
「……この指輪は、まだ国王が健在でいらした頃に今の女王に贈ったものだ。まだ女王が王妃でおられた時だ。それを大層喜ばれ肌身離さずいつも着けておられたと聞いているが……。それがなぜこんなところに」
「……えっと、今の女王様? の指輪なんですか?」
「左様。であるからして……恐らく国外の者からの手紙に添えられる物では到底有り得ぬ。ましてや錆びて汚れた状態で見つかったと言うのは……、私には信じられないのだ」
そう言うとウィーノは頭を抱えた。目の前で起こっている事が本当に信じられないのであろう。そんなウィーノにかける言葉は無いのではあるがしかしジャロには疑問が尽きなかったのである。
「……すみません、では今女王は指輪は着けておられないと? 代わりに何か着けている……とかですか?」
「今詳細は分かりませんね。……ジャロさん少し頼まれてくれませんか?」
なるほど、こう言う流れでスートさんへの手紙が渡されるのか。……しかし何が起こっているんだろうな。ちょっと首を突っ込むだけではさっぱりわからないな。
「手紙……ですか?」
「おや、話が早いですね。……この手紙を、マバロさんに届けて欲しいのです」
はいはい、手紙ね。スートさんに早速届け……。……マバロさん? 誰?
「あぁ、名前で言っても伝わりませんね。コマンダーのギルドマスターであるマバロさんにこの手紙を届けてもらいたいのです」
「あ、ギルドマスターに届けるんですね。……ギルドマスターって言いますとギルドの中で酒を飲んで酔っ払っているあの方で……」
「はっはっは。そうです、その酔っ払いにこの手紙を届けてください。私の名前を出せば手紙は受け取るでしょう」
「……わかりました」
以前に完全に門前払いにされたからあんまり気は進まないけど……、行くしかないよなぁ。
やはりあの酔った男はギルドマスターであったようです。しかしアグエラはギルドマスターとも面識があり他国の傭兵訓練所のオーナーとも交流があるとは不思議な人ですね。