第二百四十五話 小包の中身は……
読んでくださりありがとうございます。今回は居場所が分かっているので楽ですね。
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ムーロサッケル
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……なるほど確かにグリオの考える通りモンスターに遭遇しないルート取りってのは大事だな。こんなにも早く国間の移動が出来るなんてね。
まあなるべく早くっている話だから遭遇しないに越した事は無いんだけど全く遭遇せずに着けるとは思わなかったな。それじゃあ早速アグエラさんの所に行きますか。ええと、喫茶ディアホーンだったっけ。……あ、ここだ。
ジャロが店内に入ると甲冑に身を包んだ男がカウンターで珈琲を啜っていた。ジャロが探すアグエラは確かにカウンターの中にいたが、他の客に聞かれて良いものか少しジャロは迷った。ジャロは珈琲を飲みに来た訳では無かったためすぐに注文しようとはしなかった。出来なかったとも言えるか。
その様子を不思議がってかカウンターに座る男が首だけこちらに向けてきたのである。果たしてカウンターに座っていたその男はジャロも知る人物であった。
「おや、貴殿は確か……、コマンダーの方では? 確か名前はジャロと言いましたか」
「! なんで僕の名前を知っ……、あ、ウィーノさんでしたか。こんなところでお会いするとは。お久しぶりですね」
「おや2人はお知り合いでしたか」
「ええ、以前に少し。……そうだ以前一緒にいた酒好きは今日はおられぬのか?」
「酒好き……、あぁグリオさんですね。今回は一緒に行動していないので……。でもどうしてそれを?」
「良かったですねぇウィーノさん。飲んでいるのが酒だとはバレなさそうですよ」
……ん? 飲んでいるのが酒?
「マスター、困りますよ。私は休日にここで酒を飲むのが楽しみだと言うのに。まあ彼がこの事を知ったところで何も支障もありはしませんが」
「ええと、酒……と言いますと?」
「こちらのウィーノさんは酒が大層お好きでいらしてね。ただこの国では現在酒は規制されていますし、そもそもこの人の部隊が取り締まっていますからそれがバレると部隊に示しがつかないと言うことです」
「左様、貴殿もここでの出来事は他言無用で頼む。……貴殿はここに何か珈琲以外の目的があったのでは無いか? それもあまり口外しにくい事で。私の秘密を守って貰うのだから私も貴殿の秘密を守ろうではないか」
……こんな風に言ってくれてはいるんだが果たしてこの手紙をここで渡して良いものなんだろうか。……まあ良いか。
「……実は、アグエラさんに手紙と小包を預かっていまして」
「おや?私にですか? ……ふむ、なるほど。そして小包の中身がこれになる訳ですか」
アグエラは手紙を一通り見ると小包を広げた。小包の中には小さな指輪のようなものが入っていたのである。ジャロはなんとなくその指輪に見覚えがあると感じ、朧げながらグリオさんが協会付近で見つけた指輪かなとうっすらと思い出していた。もっともその事をウィーノは知らない上にそんな指輪など知る由も無かった。……はずであった。
ウィーノが再びの登場です。実は彼はグリオと同じくらいの酒好きなのです。お忍びで酒を呑んでいたようですがアグエラにばらされてしまいましたね。
さて小包にはグリオが拾った指輪が入っていました。これに一体何の意味があるんでしょうか。