第二百二十一話 スートにはお見通し
読んでくださりありがとうございます。さて報告する流れですのでグリオは上手く誤魔化せるでしょうか。
「アグエラさんは喫茶店と酒場を営んでいらっしゃいました。グリオさんがたまたま入った場所で会いまして……」
「酒場か、あの人らしいな。あんな静かな出立ちであの人はグリオより酒を呑むんだぜ? 懐かしい、昔はどっちが先に潰れるかでアグエラさんに挑んだもんだ。対抗出来るのが親父くらいで他の誰も勝てなかったがな」
そう言うとスートは遠いどこかを見つめていた。かつてアグエラとスートの父スピノがタッグを組んでいた頃を思い出しているのでは無いかとジャロはその姿を見ながら考えていた。
「クロンの弟子についてはジャロが知っておいて損が無いだろうから聞いてこさせただけだ。内容は僕も知っている。僕はアグエラさんがムーロサッケルのどこで何をしているのか知りたかっただけだからな。それでグリオの方はどうなった? そもそも野良の傭兵を見つけるのが難しかったと思うが」
「はいはい、それはそれは難しかったですよ。アムニスヴェーレから傭兵が来たってだけで目立ちますからね。慎重にかつ大胆に探し出しましたよ。そしてついに見つけましてね。その人が言うには……」
「ほう、アグエラさんはどう言ったんだ」
「そう! 見つけた傭兵はアグエラさんと言う方でしてね。その人が言うには……あれ?」
グリオは慌てて口を抑えたが最早誤魔化すことは不可能であった。野良の傭兵が見つけられずにアグエラさんに聞いた事をバレないようにグリオが報告しようとしている事はスートにはお見通しのようであった。
スートが真顔でグリオをまっすぐ見ていることで、グリオがやらかした事に気づいたマルコはこみ上げる笑いを噛み殺すのに必死であった。
「君のことだからアグエラさんに聞いて済ませるだろうってのは想定内だ。勿論それを誤魔化そうとすることもな。正直に言えば別に許してやるつもりだったんだがなぁ? ……ひとまず報告を聞こうか」
「…………、と言う訳なんですよ」
バレないよう気をつけていたつもりがスートにあっさりバレてしまい冷や汗をかきながらグリオは指令達成の報告を終えた。
「なるほどね、女王が君臨してからレイテントが躍進したまでは知っていたけどまさか重臣まで務めているとは知らなかったな。その辺りを叩けば何かしら埃が出てきそうなもんだが今は静観しておくか。全部アグエラさんに聞いたことだな?」
「はいっ、そうです。その後すぐ戻りましたので……」
「ふむ、まあ指令は達成で良いだろう。グリオ、君の給金の査定に今回の件は組み込んでおこう。さらに励め。そしてジャロには報酬金をあげないとね。クエストの報酬で大体決めようとしていたんだけどなぁ……。まあ良いや、ジャロとは今後も仲良くしてたいしね報酬金は弾ませてもらうよ」
「ありがとうございます。コマンダーが要る時は是非またお願いします」
「勿論、そうしたいところだ。……おや? グリオ、君の持っているその光る物はなんだ?」
ハイ、あっさりバレました。まあ嘘は案外あっさりバレてしまうものです。教訓ですね。さてスートはグリオの持っている指輪が気になるようですね。何か秘密があるんでしょうか。