第二百十七話 グリオは気持ち良さげに
読んでくださりありがとうございます。アグエラから様々なことが聞けましたね。さああとは戻ってスートに報告するだけです。
「ええ、そのはずです。……これはあくまで信憑性の低い噂ですがね。……レイテントのトップにはかつての国王様の血が流れているのではと言われております。信憑性の低い噂ですが、そもそもレイテントが躍進した理由が皆にもズバリピンとは来ていないのでしょう。こうしてまことしやかに噂が流れるのみですからね。私からすれば相当タイミングが良かったとしか言えませんな」
アグエラからレイテントから女王が即位した経緯など様々な事を聞き、礼とばかりにグリオがかなりの量の酒を飲んだためややおぼつかない足取りでジャロたちはアグエラの店から出た。グリオはいたくアグエラの店で出す酒が気に入ったらしく手持ちの小瓶の何本かに酒を注いでもらっていた。既に時刻は夜も更けて綺麗な月が2人を照らしていた。
「グリオさん……飲み過ぎですよ、ちょっとその辺りで休みますか」
「だいじょーぶだいじょーぶ。オレは酔ってなんかいませーんだ」
絶対酔ってる人の返しじゃないか。全くゲームの世界で酔った人の介抱をするとは思わなかったな。この辺でどこか休める所は……。あ、あそこに教会があるな。教会近くの木陰で休ませて貰おうかな。
ジャロは教会の近くまでグリオを連れて行き木陰にもたれかけさせるようにグリオを休ませていた。やはり相当酔っていたらしくグリオは気持ち良さそうに寝息を立てていた。その様子をジャロとファングが眺めながら暫し夜風に当たっていたその時、ガチャガチャと騒がしい音を立てながら鎧を着た数人にジャロたちは囲まれたのである。
「……! 一体何ですか?」
「貴殿はコマンダーかとお見受けする。報告に上がっているジャロなる人物で間違いありはしませんか?」
報告……? 何の報告だろう。ま、別に違うって言う理由も無いか。
「ええ、確かに僕の名前はジャロです。どうかしたんですか?」
「ふむ、ならばそこで酔い潰れているらしき男はグリオなる人物で間違いないな。なに君に何か処罰が下ることではないから安心したまえ。少し質問をしたいだけなのだ。ただし正直に答えなければ容赦はしないがね」
……なんだか物騒な話になってきたな。処罰、処罰ねぇ……。あ、もしかしてコマンダーを処分しようとしている人たちに囲まれているってことか? ……いや違うな、それなら僕に処罰が下るはずだ。……とりあえず質問を聞いてからにするか。
「……どうぞ。僕に答えられることならお答えします」
「ふむ、ご協力感謝する。我々はこのムーロサッケルの風紀を取り締まる部署の者である。正規の手段で入国された貴殿をコマンダーであるからと処分したりはしない。が、酔っている人物がいることは見過ごす訳にはいかない。酔っていると言うことはどこかで酒を提供している場所があると言うことだ」
やけに偉そうな態度のその鎧の男の言葉を聞きながら、ムーロサッケルでは酒場が少なくなっているというアグエラの言葉を思い出していた。アグエラは少ないとは言っていたが取り締まりの対象とは言っていなかったためジャロはやや狼狽えていた。
「……ええと、……つまり、グリオさんはなぜ酔っているのか。そして酒で酔っているならどこで酒を呑んだのか教えてくれ……と言う事ですか?」
「左様。昼頃訪れたハルバなるコマンダーも酔っていたが彼は単なる乗り物酔いであった。ケーブルカーで酔うとは稀有な人であった。しかしそこの人物はこの時間帯、そのおぼつかない足取りからして酒で酔っていると我々は判断させて貰った。さあ答えるが良い、どこで酒を呑んだのだ?」
酒場で有益な情報を得たんですからお礼に軽く酒を呑みますよね。だからと言って呑み過ぎはいけません。酔い潰れて休んでいるところに何やら声をかけられていますが、ちょっとこれはマズイ事態かもしれません。