第二百十二話 喫茶ディアホーン
読んでくださりありがとうございます。酒場を探すようですが……。
「しかしこんな時間に酒場は開いてないし、開いていたとしても人で賑わっていなけりゃ意味がない。それにオレらの求める情報を探すには隠れ家的酒場を見つける必要がある。レイテントの連中が店内にいたら問題だからな」
グリオは自信満々に答えた。恐らくこの事態になってから考えたのだろうがそれにしては自信に溢れていた。しかし隠れ家的な酒場を探し出すのもまた難しいはずである。
「酒場ですか? しかも隠れ家的な酒場を探す。……それも大概難しくないですか?」
「その辺りは任せろ! オレは見たら分かるかもしれねぇが大の酒好きでな。大衆酒場やオシャレな店もよく知ってる。当然隠れ家的酒場もそうだ。そう言う店には特有のにおいがするんだよ。とは言えそんな場所もまだ開いてない。ひとまずここで時間を潰すぞ」
そう言うとグリオはある店の前で立ち止まるとそのままその店へ入って行った。その様子を見てジャロは慌ててグリオの後を追った。その店の看板には“喫茶 ディアホーン“と書かれていた。
店内は静かな雰囲気で包まれており客らしき人は確認出来なかった。マスターなのだろうか初老の男性がカウンターの中でコーヒーカップを磨いていた。グリオは静かなその雰囲気に構わずカウンター席へどっかり座るとマスターらしき男性に声をかけた。
「マスター、オレとコイツに珈琲をひとつずつ頼むよ」
「おや、いらっしゃいませ。珈琲はブラックでよろしいですかな?」
そう尋ねられグリオは首だけジャロの方へ向けた。ジャロはそもそも珈琲を飲む気では無かったので少し迷ったがブラックを頂くことに決めた。
「かしこまりました。それではおかけになってお待ちくださいませ」
待つこと数分、2人分の珈琲がジャロたちの目の前に出された。ブレンドなのだろうか珈琲の良い匂いがジャロには感じられた。
ふむ、ゲームの中で珈琲を飲むとは思わなかったな。前に誰だったか珈琲を飲む奴がいたから存在はしているんだろうとは思っていたんだがな。……って言うかこれ飲めるのか?
……ほう、飲めるのか。しかも味も感じる。ふむ、技術の進歩は素晴らしいな。まさかゲームの中で珈琲が楽しめるとはな。何か別の匂いを感じた気がするんだけど……気のせいだろうな。
「マスター、オレたちはちょっと酒場を探していてね。何か良い所はないか?」
「酒場ですか、そもそも喫茶店もこの店以外にあと一軒あるくらいですから今のこの国には少ないですよ。国王様が飲めない体質らしく一部の店を除き営業をやめさせたと聞いております」
「……ほう、つまりあるなら隠れて営業している店しか無い……って事かい?」
「……ええ、色々なところに行かれるともしかすると見つけられるかもしれませんね。私からはお教えすることは出来ません」
少し沈黙が流れた。静かな店内がさらに静かになりジャロはやや居心地が悪くなっていた。こんな場所で数が少ないという酒場が開くまで待つのは少し嫌だなとジャロが考え始めたその時グリオが突然口を開いた。
「そうかそりゃそうだ。酒場の事を喫茶店のオーナーに聞いても教えてくれないよな。それじゃあ改めて、オレたちはちょっと酒場を探していてね。何か良い所はないか?」
グリオは喫茶店のオーナーに酒場の場所を聞きましたが教えてくれませんでした。それなのになぜグリオはもう一度同じ質問をしたんでしょうか。なにかグリオなりの考えがあるんだと思いますが……。