第二百十一話 指令書の中身
読んでくださりありがとうございます。クエストが存在しないということはスートから貰った指令書の出番ですね。一体何が書いてあるんでしょうか。
「おい、追い返されちまったぞ。それにクエスト自体無いって話だ。オーナーからなんでもいいからクエストを達成して来いって言われたんだろ? オーナーの指令が達成出来ねぇじゃねぇか。どうすんだ?」
「スートさんからこういう時のための指令書を貰ってはいます。……確認しますか?」
ジャロたちはスートの指令書の中身を確認するようだ。一応スートはこの事態を想定していた。とは言え、適当にクエストを達成する事よりも難しい事が指令書を通じて要求されているに違いない。ジャロは恐る恐る指令書を開けると中に書いてある事を読み上げた。
「ええと、……私の父スピノ・アニュラスの旧友であるアグエラという人物を探し出し、クロンの弟子についての話を聞いて来たまえ。この指令書を読んでいるということはムーロサッケルでコマンダーが受けられるクエストが存在しない事になる。願わくばこの指令書が開けられない事を祈る。……だそうです」
「げぇ、人探しかよ。オレの指令と同じくらい面倒じゃねぇか」
そう言うとグリオは苦しそうに頭を抱えた。グリオはどうやら何をすれば良いか分かっているようだがジャロにはなんの事だかさっぱりである。
「僕には何が面倒なのかさっぱり分かりませんが、そもそもグリオさんの指令はなんだったんです?」
「あぁ? オレの指令はよ、野良の傭兵を見つけてムーロサッケルの黒い部分を探ることだよ。見つけられる気がしないけどな」
「野良の傭兵……と言いますと?」
「どこにも属してねぇ奴のことだ。この場合はレイテントに属してない傭兵だな。レイテントが幅を利かせている以上は肩身の狭い思いをしてるに違いないがそう言う奴らをピンポイントに探し出すのは中々面倒なんだよ」
なるほどグリオの言うことは一理あるだろう。スートの思うようにレイテントに属していなく、ムーロサッケルで活動している傭兵ならば掛け目なしにムーロサッケルの実情を把握しているだろう。
しかしそういう人は大抵隠れて活動しているため見逃されているに過ぎないのである。従って探し出すことは決して容易では無いのである。
「じゃあ僕の指令の方が簡単なように思うんですけど、同じくらい面倒とはどういうことですか?」
「お前はそりゃコマンダーだから聞いてもピンと来ないだろうがよ、オーナーの父スピノ・アニュラスって言やぁ傭兵の中では有名な方なんだよ。だから傭兵ならスピノさんの知り合いを探している時点で俺らがカードから来たって事がバレる。アムニスヴェーレでなら別に気にしなくて良いんだが、ここだとそうはいかん。つまりスピノさんの名前を出さずにアグエラとか言う人を探さないといけないってことだ」
なるほど、確かにグリオの言うことに一理あるだろう。そもそもジャロたちは敵対組織であるレイテントのお膝元である場所に来ているのである。そんな場所でカードのオーナーの父親の知人を探しているとなれば怪しむ人がいるだろうし何らかのトラブルに巻き込まれる可能性だってある。
「言いたいことは分かりました。でもそれじゃあどうするんですか?」
ジャロがそう聞くとグリオはどこかへ歩き出しながらこう答えた。
「こう言う情報を集めるのにうってつけの情報がある。酒場だ」
人探しをするようですね。ジャロたちは当面野良で活動している傭兵もしくはアグエラなる人物を探すようです。そのためにまずは情報収集のために酒場を探すようですね。……探してばっかりだな。