第二百九話 グリオなりの優しさ
読んでくださりありがとうございます。ムーロサッケルへは中々辿り着きませんね。
……ふぅ、ようやくたどり着いたか? 開けた場所に出たな。ゲームだから良いけどこんな場所現実だったら絶対行かないだろうな。でも周りに人は居なかったしムーロサッケルって結構寂れた所なのかな?
「こちらムーロサッケル南関所です。グリオ様とジャロ様ですね。どうぞお通り下さい」
やはり他に人の影が一つも見当たらない関所を通過するとどうやらようやくムーロサッケルに着いたらしい。城壁のような高い壁に囲まれた門を抜けると数多くの建物が確認出来た。無事到着した事に満足したのだろうか、グリオが一息吐くとこう呟いたのである。
「ふぅ、ようやく着いたな。やはりこの道だとモンスターに出会わなくて良いな」
……この道? 何個か他の道があるのか? ……いやマジか。
グリオは自分のルートで進んだからこそモンスターと遭遇しなくて済んだのだとやや誇らしげであったが、一緒に険しい道で進まされたジャロの目には明らかに安全で楽にムーロサッケルまで行けそうなケーブルカーが映っていた。丁度いいタイミングでケーブルカーから降りて来たのは見知った顔であった。
「おぉ、グリオにジャロじゃないか。今到着したのか?俺も今着いたところだぜ」
「マルコか、早めに到着予定だったが追いつかれちまうとはな」
「ええと、マルコさん。ケーブルカーから来られたかと思うんですが、そんなのどこにあったんです?」
「どこって……、そりゃ東の関所からすぐの所だがよ。……そういやお前らも今着いたって言うことは。……! もしかして山を登ったのか? そりゃないぜグリオよ。さすがにケーブルカーで着いても誰も訝しんだりしないぜ。むしろ山登った方が目立つんじゃないか?」
マルコの話から察するに、ムーロサッケル東の関所からなら楽に安全にムーロサッケルに辿り着くのだと言う。疲れてはいないとは言え無駄に危険な道を進まされた事にジャロはうんざりした表情を浮かべたが、当のグリオはそれが何かと言わんばかりにどこ吹く風である。
「そうか? モンスターにも遭わないし、誰かしらに遭遇することも無い良い道だと思うがな」
「……、やれやれジャロには同情するぜ。ま、もしかするとジャロも俺のペアみたいになったかもしれないけどな」
「そういやお前のペアのコマンダーはどこだ? 見当たらないが……。もしかしてアレか?」
グリオが指さしたのはケーブルカーの近くで青ざめて座り込む若い男であった。傭兵訓練所で見かけた人物かは分からないが大きな盾を持ったモンスターが近くにいる事からコマンダーであるようだ。
「そう、アレだ。乗り物酔いってのを俺はしない性質でね。ケーブルカーが動き始めてからずっとあんな調子だ。こんな感じだからすぐにムーロサッケルへ行く訳にもいかねぇ。どうせ一緒に入国する必要は無いんだからお前ら先行けよ」
「む、そうか。じゃあ遠慮なく行かせてもらおう。ジャロ行こうか」
戦闘が無かったのはグリオがモンスターに遭遇しない道を選んでくれたからであるようです。それはありがたいですが険しい道を進むのもそれはそれで嫌な気がします。ケーブルカーなるものがあるなら尚更ですね。