第二百七話 いざムーロサッケルへ
読んでくださりありがとうございます。指令書の中身が気になりますね。
「そう、指令書だ。まあ無いと思いたいけど受注出来るクエストが1つも無い可能性がある。その場合その指令書に従って動いて欲しい。今はそれだけしか言えないけどまあ使わないだろうし大丈夫、気にする事はない」
スートはジャロに安心しろとばかりに笑いながら語りかけたがその目の奥は笑ってはいなかった。その目にやや不安を感じないではなかったが、スートの話が終わる頃にまた別の人が準備を終えてカードへやって来たようでスートは次の人への指示を伝えるため立ち去って行った。
その人への指示が終わるまでジャロはスートにそのことを聞くのを待っていたが、その人への話が終わるとスートは全員の方へ向き直り口を開いた。
「さて、これで全員揃ったな。知っているとは思うが自己紹介はさせてもらおう。私は今回君たちをムーロサッケルへ派遣する責任者であるスート・アニュラスだ。先程君たちにはムーロサッケルでやって来てもらいたいことを指示した。各々思うところがあるとは思うがひとまずはそれに従って欲しい。また個人行動を好む者もいるかと思うが今回の派遣は危険が伴う可能性もある事から2人1組で行動してもらう。そのペアはこちらで選ばせてもらった。それではムーロサッケルへ行って来たまえ」
……色々と整理が必要だな。この話からして今からすぐ向かうのか……。もう少し詳しく事情を聞いておきたかったが仕方ない。ところでペアって言っていたっけ? 僕のペアが誰かも知らないんだけど……。
「コマンダーのジャロってのはアンタで良いのか?」
考え事をしていたジャロに話しかける人物がいた。その人物は傭兵の1人なのだろうかやや大きめの剣を2つ背負っていた。
「……そうですが、あなたは?」
「オレは傭兵のグリオだ。今度の派遣でのアンタのペアだよ。よろしく頼む」
話しかけて来た人物はどうやらジャロのペアであるらしい。傭兵らしい屈強な肉体に怖さが全く伴わないほどの柔和な笑みを浮かべていた。この人物のことはあまり知らないが信頼出来る人ではありそうだとジャロは彼の人となりを見て考えたのであった。
「あぁ、それはどうも。こちらこそよろしくお願いします。ええと、ムーロサッケルには何で行くんですか?」
ジャロがグリオに聞くとグリオは笑いながら当然とばかりに答えた。
「そりゃバイクだろうよ。大所帯でみんなして行けば何かしに来ましたって言っているようなもんだからな。タイミングをずらすんだがオレらは早めに行っていいらしいからな。早速行くぜ? あ、まさかバイク持ってないとか言わねえよな?」
「バイクなら持ってますが、ムーロサッケルへの道は知らないんですよね」
「お、向こうには初めて行くのか。そりゃ道は知らんわな。ま、バイクがあるならオレのバイクについてくれば良い。それじゃさっさと行くとしますか」
そう言うとグリオはアムニスヴェーレの東の関所まで歩いて行った。ジャロは慌ててグリオの後を追いかけたのであった。
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アムニスヴェーレ 東関所
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「お、そうだ。バイクに乗るのは途中までってのを言うのを忘れてたよ」
「途中まで……と言いますと?」
「バイクってのはそれなりに優れた腕前の傭兵やコマンダーが持つもんなんだよ。だからムーロサッケルにバイクで着けば腕は確かだってアピールしちまう訳だ。向こうでやる事に支障が出るのはマズイからな、なるべく波風立てずに行くって事よ」
そう言うとグリオは勢い良くヘルメットを被りバイクのエンジンをかけた。
「それじゃあ行くぜぇ。ちゃんとついて来いよ?」
こうしてグリオと共にジャロはムーロサッケルへと向かうのであった。
今回の派遣で行動を共にするのはグリオという傭兵のようです。マルコでないのは残念ではありますが彼でも問題ないかと思います。ちなみに派遣されるのは3ペアの合計6人です。それぞれ傭兵とコマンダーのペアなのは襲撃された時に柔軟に対応するためです。