第百八十四話 戦いの後始末
読んでくださりありがとうございます。ファトーレの企みを見事に阻止することが出来ました。しかし彼は如何にして王国から逃げ出し、またこのように悪事を働くことが出来たのでしょうか。
ギルドの職員たちがどこからともなく現れ、両手を上げて素直に降伏しているファトーレを取り押さえた。降伏とは形ばかりで逃げ出すのではないかと少し訝しんていたがどうやらそういう訳では無さそうであった。
「……ふぅ。この騒ぎを起こしたのはあなたですか。少し取調べに応じていただけますかね?」
ギルドの方から聞こえて来たその声にジャロが振り返ると、そこには慌てて出てきたのだろう息が少し切れ切れになったシロガネの姿があった。
「ギルドマスター、この男が先程から噴水を汚すと騒いでおりましたが何分汚されては困るもので私共はどうすれば良いか困っておりました。しかしここにいらっしゃるジャロ様の働きで見事にこの男を取り押さえる事が出来ました」
声高々にギルドの職員がシロガネにそう説明していた。かなり詳しく知ってるようだがそれならもっと早く取り押さえに来てくれれば良かったのにとジャロは職員に対して思わないでもなかった。職員のその報告を聞いたシロガネは、そんな事をぶつくさと考えているジャロに近寄り話しかけた。
「ジャロ様此度は誠にありがとうございます。しかしこの男、確か名前をファトーレと言いましたかな。先日王国で捕らえられていた者かと思ってましたが少し事情が掴めませんな。ギルドでこの人物は預かっておきますのでご安心ください。職員諸君、この男を取調室へ連行しなさい。私はこれから地下へ行きますのでこれ以降はキャロットに指示を仰ぎなさい」
ジャロへ感謝の念を述べながらシロガネはこうしてギルド職員に指示を飛ばしたのであった。その指示を受けすぐさま職員らはファトーレをギルド内へ連行して行った。連行して行く職員らの姿を見ながらジャロはテキパキと指示を出したシロガネに毒を抜かれると共に、少し気になる事を思い出した。
「さっきシロガネさんも言ってましたが、コイツは捕らえられていたはずでは無かったんですか?それに時間稼ぎとも言ってましたが……」
「ええ、ですから私はこれから地下へ向かうと申したのです。時にジャロ様一つ頼まれてくれませんか」
ジャロが問いかけた質問に対しては曖昧な答えが返って来た。その上でシロガネはジャロに協力を求めて来たのである。先程の様子から明確な答えが返って来るだろうと思っていたジャロは少し驚いた。がしかし、ジャロの問いかけへの返答を聞くにはどうやらジャロにはその頼みに応じるしかないようである。
「頼みですか? 一体何があるって言うんです?」
流れからして断ることは出来ないのだが、ジャロがシロガネの頼みに対してすぐに応じようとしたことにシロガネは満足そうな顔をしながら話を続けた。
「即答とは頼もしい限りですな。噴水を狙って来た以上は賊らの狙いはこの国のオアシスで間違いないでしょう。この国におけるオアシスと呼ばれるのは大きく二つでございます。一つはこの目の前にある噴水、そしてもう一つはスレド砂漠中にある源泉ですな」
前回ファトーレも言ってましたがどうやら彼は時間稼ぎで行動していたのであり、まだ更なる企みがあるようです。