第百七十六話 フードを被ったよく喋る男
読んでくださりありがとうございます。さて雑貨屋の店主の言っていたスレド砂漠の湖はコールの祠で合っているんでしょうか。
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コールの源泉
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ジャロはすんなりとコールの洞穴を進んで行きコールの源泉に足を踏み入れた。まるで生物を拒んでいるかのように辺りには物音一つ無く、ジャロの足音が不気味に鍾乳洞を伝っていた。
あ、そうかここコールの源泉って名前だったっけ。祠の印象が強かったから名前間違えて覚えちゃったな。雑貨屋の店主が言うには、フードを被った声のデカい男がスレド砂漠の湖を汚すととてつもない奴が出てくるって言ってたんだっけ? でも黒いフードを被った奴どころか人影なんて一つも無いな。ゲッコウ団が絡んでくるって当たり付けてたんだけどこれは空振ったかな?
「あぁん⁈ なんだよ人がいるじゃねぇか。こんな寂れた所に来るなんてあんたも暇人だねぇ」
やけにデカい声がコールの祠の静寂を破った。その声の主ははまさしく雑貨屋の店主が言う人相の人物に違いあるまい。しかし彼は大きめの白いフードを目深に被っていたのであった。その男はジャロの傍らに構えるルインを横目に言い放った。
「それにそのモンスター、……割りかし腕の立つコマンダーと来た。面倒なことこの上ない。俺はぁよう、この場所で大きな仕事があるんだよ。分かるか? 仕事だ。分かったら邪魔なんかせずにまっすぐギルドに帰るんだな。こんな何もねぇモンスターもいねぇような所お前みてぇな者には用なんて無いだろ?」
やけにデカい声、そして横柄なその態度は圧があり、正直ジャロは言われるがまま帰ってしまいたかった。しかしながら雑貨屋の店主の話が本当であるなら帰る訳にはいかなかった。
「確かに、……この場所自体に用は無いですが、ここを汚してしまおうとする行為には用があります。あなたのその大きな仕事とやらはどうなんですか?」
思いがけず鋭い指摘をもらった男は訝しむようにジャロの顔を睨んだ。目深に被ったフードから分かりづらかったがその眼は薄暗い光を放っていた。
「……ほう、お前どこからその情報を手に入れた? 俺と一部の幹部しか知らんはずなんだがな、スパイでもいたかな? レイテントも組織としてはまだまぁってことかぁ」
男はジャロが何も聞いていないのにベラベラと自分の情報を喋りながらジャロに少しずつ近づいて来た。僕はスパイじゃないけど、この人の近くに張り込んでれば大概の情報が簡単に得られそうだ。そんな場違いな考えを頭に浮かべながらジャロは軽く身構えた。そうしている間にも男はさらに喋るのを止めなかった。
「そうだよ、確かに俺はお前の後ろのその湖を汚しに来たんだよ。邪魔するってんなら容赦しねぇよ? 俺はレイテント所属でありながらコマンダーでもある。俺の邪魔を俺を分かっててしてくれやがるんだ、お前に敬意を表してお前のフィールドで戦ってやるよ。覚悟しな」
『レイテントのカロルが勝負を仕掛けてきた。仲間モンスターは2体いるようだ』
『ヘドロフロッグ lv.20が現れた』
これは、……カエルかな? それも多分毒持ちの。また見たことないモンスターが相手だな。まあ見たことないモンスターなら別に誰が相手でも構わないよな? ルインの実力をこのモンスターで確かめようか。
よく喋る男ですね。レイテントの所属のようですがどうやらコマンダーでもあるようです。レイテントってどんな組織なんでしょう? ちょっと内情が気になりますね。