第百七十話 シロガネの長い話
読んでくださりありがとうございます。シロガネの話とは一体何なのでしょうか。
ジャロがシロガネの自室と思しき部屋にノックしてから入るとシロガネが既にその部屋に備え付けられたソファに腰掛けてジャロが来るのを待っていたようだ。シロガネは自分の向かい側に座るようジャロに促した。
「それで、詳しく教えていただけると言う話でしたが一体何があったんです?」
「まずは、ジャロ様。ギルドの危機を救っていただきありがとうございます」
どうやらジャロは知らぬ内にギルドを救っていたようである。とはいえ何が何だかジャロには分かってはいない。分かっているのはジャロの戦闘ログを見てシロガネが動き出した事から、戦闘ログの中にすなわちジャロがシャダル砂漠で行った行動の中にヒントがあると言う事だけである。それだけではジャロには何の事を言われているのか皆目検討がつかなかった。
「……はぁ、まず僕が一体何をしたのかがわからないのですが」
ジャロのこの反応を予期していたのかシロガネはジャロが困惑している顔をしっかりと見据えながらさらにこう続けたのである。
「ジャロ様が“マザー・スネーク“というモンスターを倒された事で我々ギルドは救われたのです」
それからシロガネはジャロに対してマザー・スネークを倒した事とギルドの危機を救った事との因果関係を説明したのである。
そもそもギルドは登録されたコマンダーに対してクエストの斡旋を行う組織であるが、同時にクエストのランクを管理する組織でもある。そのためマザー・スネーク等のようにクエストのランクに不釣り合いな程のモンスターのゲリラ的出現に対して処置を行わなければならないのである。
シロガネはマザー・スネークに対して出現が確認されたシャダル砂漠への一部のコマンダー出入りを禁じ、コマンダーの精鋭をシャダル砂漠へと緊急に派遣する事でこの問題の解決を図ろうとしたが、ジャロがマザー・スネークに遭遇、そして討伐に成功したため事なきを得たという事であった。
「……、マザー・スネークというモンスターはあの辺りでは出現しないはずの高ランクモンスターでしたから遭遇されたジャロ様は不運ではありましたが討伐に成功されたことは我々にとってまさしく救済となったのですよ」
「はぁ、何だか照れますね」
「つきましてはギルドとしてはギルドランクを上げる際には推薦を頂く必要が無くなりましてね、ジャロ様が規定数に達せられ次第早急にギルドランクを上げられるよう手配をして……」
続くシロガネの言葉はジャロには初耳であった上に、身に覚えの無い話であった。そのためジャロは慌ててシロガネの言葉を制した。
「ちょ、ちょっと待ってください。さっきギルドランクを上げる時に推薦を既に適用させて上げてもらったんですけども……」
「なんと、それは申し訳ございません。こちらの伝達の不手際でした。しかしそれはちょっと困りましたな……。推薦を頂かなくても良いというのがそもそも異例でして、頂いた推薦をお返しするシステムがまだこちらに無いのでジャロ様にお返し出来ないのでございます」
「……ええと、つまり使った推薦を戻す事が出来ない……と?」
ジャロの言葉にシロガネは心苦しそうに答えた。
「……そうなりますな。がしかし、ジャロ様が我々を救ってくださった事は事実でありますからね、それではこういたしましょうか」
『シロガネ(アムニスヴェーレ)の推薦を受けた』
……長っ。シロガネの話が長いので一部省略したにも関わらず一話に収まりませんでした。長い話を簡潔にまとめると、シロガネからマザー・スネークの討伐報酬として推薦を受けた、以上であります。