第百六十八話 騒がしいギルド
読んでくださりありがとうございます。何やらギルドが慌ただしいようです。一体何があったんでしょうか。
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ギルド アムニスヴェーレ支部
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さて、戻って来たな。なんか慌ただしいような……。気のせいかな?
「おや、これはこれはジャロ様じゃありませんか。クエストから帰られたのですかな?」
ギルドへ戻ってきたジャロにそう話しかけたのはギルドマスターであるシロガネであった。
「はい、先程シャダル砂漠から帰って来たんですが……。一体何があったんです?」
ジャロはシロガネの問いには答えたがイマイチ状況が分かっていなかった。しかしジャロのその答えは予想に反してなのだろうか、シロガネは僅かに眉尻を上げた。
「ほう、シャダル砂漠からですか。あそこはもうじき出入口を封鎖する予定だったのですがね。まああなたの様子を見るに……、必要なさそうですかな。ちょいと失礼、ログを少しばかり拝見しますな」
そう言うとシロガネはジャロの戦闘ログを確認し始めると、すぐにジャロの顔を見据えニコリと微笑んだ。その表情は先程まで張り詰めていた雰囲気がまるで嘘だったかのようにやわらかなものであった。そしてシロガネはゆっくりと振り返ると相変わらず慌ただしいギルド職員に向かって高らかに宣言したのである。
「職員諸君、危機は乗り越えたようだ。直ちに通常業務へ戻りたまへ。ご苦労じゃった」
「……? 危機ってなんのことですか?」
相変わらず要領を得ていないジャロはシロガネに訊ねた。しかしシロガネには今すぐそれに答える気は無いようであった。
「ふむ、それより今はクエストの報告をなさる方が良いかと思いますな。それが終わりましたら私の自室へと来てくださればそこで詳しくお教えいたしましょう。私の自室は秘書キャロットの部屋の向かいにございますのでお間違えなきよう来てくださいな」
そう言うとシロガネは笑いながら自室へと戻って行った。ジャロはなんのことだか分からないがひとまずはシロガネの言う通りクエスト報告をすることにしたのであった。
「こちらギルド受付になります。何か御用ですか?」
「クエストの報告に来ました」
「かしこまりました、それではギルドカードを提示してください」
「どうぞ」
「はい、ありがとうございます。クエスト達成が確認出来ました。お疲れさまでした。宝箱はこちらで鑑定させていただきます。クエスト2件で達成の報酬金がこちらになっております、ご確認ください。それからこちらが今回のクエストの報酬になります」
『竜神石を手に入れた』
お、竜神石だな。これでレベル上げが捗るな、嬉しい嬉しい。
久々にシロガネを見ましたね。彼はギルドの業務の内あまり目につかない仕事を担当しているのでギルドで仕事をしている彼を見かけることはそう多くはありません。もっとも暇な時にはギルドの建物の中をふらついているので会うこと自体は割と簡単です。