第百三十二話 あの時の要求は
読んでくださりありがとうございます。ウェザリア四世の話の真意が未だつかめませんが国王は何が言いたいのでしょうか。
「君も心当たりがあるだろう? ダリアが拉致された時の要求だよ」
レイテントに相当の苛立ちがあるのだろうか。ウェザリア四世は少し冷静さを欠いていた。
「あの時レイテントは私の娘を人質にこの国における傭兵訓練所をレイテントのみにすることを要求してきたのだよ。そんな要求がのめるはずかない。そもそも傭兵はコマンダーと同じく国の依頼をこなしてくれる存在なのだよ? それを自国の王女を要求のために拉致出来得る神経の持ち主に委ねるなんてことは、……出来るはずが無かった、当たり前のことだよ」
レイテントは一気にまくし立てたかと思うと立ち上がり声を荒げていた。その声には国の行く末と我が子が天秤にかけられ苦悩しているウェザリア四世の苦しみがありありと感じられた。
「……すまない、少し興奮してしまったようだ。だから彼らの要求を無視……すなわちダリアを見殺しにするしかなかった。……君には感謝しているというのはこれでわかっていただけたかな? ……話が逸れたね、つまりはこういうことだ。……私はレイテントの壊滅を望んでいるのだよ」
レイテントの壊滅……。すなわちウェザリア四世は、アムニスヴェーレ国王は他国の新興の傭兵訓練所の壊滅を望んでいるのである。そして先程のウェザリア四世の話からしてレイテントはムーロサッケルでの力が強い故にともすると両国間の戦争もあり得る。そういう規模での話が今ジャロに聞かされたのである。
「……壊滅ですか。しかしそれは……かなり難しいのでは?」
「左様、かなり難しい。隣国のお抱えの傭兵訓練所を潰すとは決して簡単では無い。……がこの国にはいずれは絶対に必要なことと考えている。誰かがやらねばならないのだよ」
誰かがやらねばならない……。それはジャロにも分かる話ではあった。しかし今のところ傭兵の話だけでありジャロはコマンダーなのである。従ってジャロにこの話をする理由がジャロにはわからなかった。
「国王様、今までの話は理解出来ましたが、……この話をなぜコマンダーである私にするのでしょうか?」
ジャロの率直な疑問はウェザリア四世も予想していた事だったのだろう。ジャロをまっすぐ見据えてさらに話し始めた。
「私も傭兵に依頼して達成してもらえばいいと考えていた。……そんな折り君が担当した護衛クエストの詳細をアリエテから聞いてね。アリエテ曰く傭兵らのボスはコマンダーだったと言うじゃないか。となれば私はレイテントの壊滅には傭兵だけの力では不足だ。コマンダーにも頼まねばならない。しかしだ……この国のコマンダーはそれを依頼するには少し心許ない。そこでギルドランクからすれば遠く及ばないが君にも協力を頼みたいのだよ。君にこの話をする理由をわかってもらえたかな?」
ダリアが拉致された時にダリアを見殺しにするとなった背景が明かされました。国王は国と子を天秤にかけ血の涙を呑んで国を選んだようです。ジャロがダリアを救出出来て良かったですね、ホントに。