第百二十九話 早速なんですが
読んでくださりありがとうございます。前回はシロガネが話を忘れたところで終わりました。シロガネは果たして思い出せるんでしょうか。
……大丈夫か? この爺さん。話があるって言って自分でその話を忘れてるっぽいんだが。
そうジャロが心の中で心配しているとバタンと勢いよく扉が開いたかと思うと端正な佇まいをした女性がシロガネのもとへ駆け寄ってきた。
「遅くなりました、ギルドマスター。お呼びでしょうか」
高めの張りのある声が響いたかと思うとシロガネがゆっくり女性の方を向いた……かと思うといきなり思い出したかのような顔を見せた。
「おう、そうじゃったそうじゃった。最近物覚えが悪くなってかなわんのぉ、まったく。さてジャロ様、ちと紹介するべき人物がいましてな。この方ですな、名をキャロットと言うんてすがギルド受付兼私の第二秘書になります。よほどの機密事項でなければキャロットに聞けば教えてくれるので今後は私ではなくキャロットに聞いてくだされ」
紹介されたキャロットはジャロの方へ向くと軽い会釈をした。
「ご紹介にあずかりました私キャロットと申します、今後ともよろしくお願いします。早速ですが、ジャロ様に伝達事項がございます」
何が何やら話についていけていないジャロはただ頷くことしか出来なかったがそれをキャロットは気にも留めていないようだ。
「ギルドに到着次第アムニスヴェーレの王殿へ来るよう国王より仰せつかっております。急ではありますがギルドより案内役を手配しますのでよろしくお願いします」
「……はぁ、そうですか」
いきなり王殿へ来いと言われる謂れがあまりないが恐らくは護衛クエストの件で呼ばれたという予想がジャロにはついた。国王と言うことはダリアの父親でありダリアが怪我をしたことを怒っているかもしれないと思うと正直行く気は微塵も起きなかった。しかし逃げ出す訳にもいかなかった。
「ギルドを出たすぐの所にいるよう手配しておりますのでジャロ様は王殿へお向かいくださいませ」
……って言われたからギルドから出たけど、案内役ってのは誰だろうか?手配してることは確かなんだろうけど、誰かがわからないから結局いないのと変わらない気がするんだけどね。ええと……。
「ジャロって言うのは君かな? コマンダーの若きホープって聞いてるんだけど本当に若いんだね」
ジャロがどうしたらとまごついているとそう話しかけてきた人物がいた。恐らくこの人物がギルドの案内役なのだろう。言動はかなり俗っぽいがスラっとした出立ちで立居振る舞いには教養が感じられるがこの人物はギルドの職員だろうか、それともコマンダーなのだろうか。
「若きホープかはちょっと知りませんが、確かに僕がジャロです。ギルドから案内役が来ると聞いているんですが、あなたで合ってますか?」
ということでシロガネの第二秘書キャロットが登場しました。ギルマス案件は基本的にこの人が出てくると思っておいて大丈夫です。ギルドマスターになるには条件が結構ありましてシロガネに後任がいないことがアムニスヴェーレの目下の課題のようです。