第百二十六 傭兵のスタンドプレー
読んでくださりありがとうございます。スートは良い人ですが時々無表情になるのが少し怖いですね。
スートはマルコにそう問いかけた。その声は静かであり、追い詰める気配が現れていた。マルコはその気配を敏感に感じ取ったのかややたじろいだが正直に話すことにしたようだ。
「すみません、オーナー。他の傭兵は元よりそのコマンダーの方の素性が掴めなかったものでスタンドプレーに走ってしまいました」
どうやらスートはそれを知っていて問いかけていたらしい。マルコのその返答に満足気であった。
「それが問題だとわかっているなら良いんだ。スタンドプレーに走るならあいつらと同じになってしまうからね。多分合ってるだろうけど、他の傭兵は?」
「はい、レイテントの者でした」
「やっぱりあいつらだったね、下がってて良いよ」
スートとマルコの間で交わされる会話についていけていないジャロは真顔でその間を過ごしていた。無論どんな顔をしたらいいのか見当もつかなかったからである。そんなジャロにはお構いなく話が進んで行ったが一部ジャロにも少し気になる事が聞こえてきた。
「ええと、レイテントというのは一体なんでしょうか?」
「あぁ、そりゃ知らないよね、レイテントっていうのは光の国ムーロサッケルに最近作られた傭兵訓練場だよ。でもちょっときな臭くてね。スタンドプレーが多くて困ってるんだよ。どうもあいつらは依頼とは別に動いている節があるんだ」
なるほど、傭兵側には傭兵の都合があるらしい。スートの話をジャロは興味深く聞いていた。その様子を見て下がろうとしていたマルコは何かを思い出したようである。
「そういえば、ジャロ……だったか。クエスト達成の報告はまだなんじゃないか? 俺はギルドへ報告する義務がないからしてないがコマンダーならいるんじゃないのか?」
「あ、確かにまだ報告してません。早く行かないといけないですね」
「そういえば、ギルドに報告しようとして間違えてここに来たんだったね。呼び止めちゃってごめんよ。でも報告は早くした方が良いな。……マルコ、案内してあげて」
スートもジャロが報告しなければならないことを完全に忘れていたようだ。丁度良いとばかりにマルコに案内役を押しつけた。マルコはやれやれとばかりに首を振ったが断ることはしないようだ。
「やれやれ、オーナーに頼まれちゃ断れないよね。ついてきな、案内してやるよ」
そう言うとマルコは先程入ってきた扉に向かって歩き出した。どうやらギルドへ案内してくれるらしい。案内されるがままジャロがマルコの後ろをついていくとアムニスヴェーレ支部にたどり着いた。
光の国ムーロサッケルに最近作られた傭兵訓練所のレイテントが傭兵界隈では有名らしいですね。悪い意味で……ですが。初めて聞くことばかりなのでちょっと分かりにくいんですが後々また改めて出てくるのでご安心を。