第百二十三話 怪しげな白い建物
読んでくださりありがとうございます。今回よりアムニスヴェーレでのストーリーが進んでいきます。
「ええと、この地図はどっちが北を指してるんだ?」
ジャロは護衛クエストを終えアムニスヴェーレに到着していた。アリエテの好意によりギルドまでの手製の地図は受け取ったもののジャロには方角がいまいちわからずギルドへは中々たどり着けそうになさそうである。
水の国こと、アムニスヴェーレは砂漠の真っ只中にあるオアシスを元にして建国された国である。
中央部分に巨大な噴水があることが大きな特徴で、その噴水の水源を繋げることで各々の住民は生活をしているようである。そのため噴水を汚すことはこの国ではかなりの死活問題であり、現在は浄水を得意としているものと汚れを好んで食すものと大きく分けて2種類のモンスターが噴水内部で活動することによってこの国の水は綺麗に保たれているのである。
「……ふぅ、ここがギルドだな。やっと見つかった」
国のシンボルである巨大噴水を背にやや大きめの建物にたどり着いたジャロはそう呟くと一息ついた。地図の読み取りに若干手こずりながらジャロはようやくギルドへたどり着いたようである。白を基調にした建物の木製の押し扉にジャロは手をかけた。
「……ギィ」
あれ? ええと……、間違えたかな?
建物の雰囲気とは裏腹に建物の中は暗く、何やら怪しげな雰囲気が漂っていた。ギルドにはあるはずの受付らしき場所もなければ服屋も見当たらない。目につくのは丸い木製テーブルと座り心地が良さそうな黒いソファとそこに座る数人の目つきの悪い男たちであった。
「なんだ? 若い兄ちゃんがここになんの用だ?」
一番手前に座っていたガタイの良い男がジャロにそう問いかけた。
「……ええと、その。……ここはギルドじゃない……ですよね?」
背中に嫌な汗をかきながらジャロは正直にこの建物に来た理由を話すことにした。男は一瞬眉をひそめるとこう答えた。
「違うな。ギルドなら噴水を越えた反対側だ。間違えるんじゃねぇぞ」
「間違えてますよね。……すみませんでした」
明らかにギルドの雰囲気ではなかったがやはりこの場所はギルドとは異なるようである。しかしじゃあなんの建物なんだという疑問は解消しない方が身のためだろうとジャロは足早にその場を去ろうとした。
「待ちな」
その時、一番奥に座っている暗くて顔すら判別出来ない場所に座っている男から呼び止められた。顔は確認出来ないがどうやら立場が上の人間なのだろうというのが雰囲気でジャロにはわかった。
「間違えたとはいえ折角ここへ来てくれたんだ。急ぎの用事がないのならちょっとここでゆっくりしていったらどうだ?」
「ええと、ゆっくり……ですか?」
突然の誘いにジャロは戸惑いを隠せなかった。とはいえギルドへは報告だけで特に急ぎの用事は無いのは事実であるためここでその申し出を断るには嘘をつかねばならない。だが雰囲気に押されたジャロにそれをするのは難しいことであった。
「……若様がそう仰るのも珍しいですな。ずっと立ってるのも疲れるでしょう? どうぞ座ってください」
そう言うとジャロの近くにあった1人用のソファに座るようジャロは勧められた。こうなればジャロには最早座る以外の選択肢が無いにも等しかった。
今回のイベントはメインストーリーではなくサブストーリーにあたるものです。そのためどれだけやらかしてもメインストーリーが進行できなくなることはありません。ですが進め方によってはメインストーリーの難易度が少し下がるイベントに繋がる可能性もあります。もちろん逆もあり得ますが。