第百十四話 洞穴の中ではお静かに
読んでくださりありがとうございます。一体どんなギミックが隠れているのでしょうか。
しかしただの行き止まり……でも無いようである。左側の壁の側面がやや崩れかかっているのである。それは少なくとも先程びくともしなかった壁の様相とは異なるものであった。
「ふむ、右側の壁がやや脆そうではありますな。と言っても他の壁と比べれば……ではありますがね。ジャロ様、一度で構いませんからこの壁目がけてスキルを放っていただけますか?」
アリエテは右側の壁を少し叩くとジャロに仲間モンスターにスキルを発動させるよう促した。かく言うジャロも同様なことを考えていた。
『スキルを発動させますか? ▶︎はい いいえ』
少し壁の質が異なる気は薄々していたがこの表記ってことは何かギミックがあるんだろうな。ここでいいえを選ぶ理由が見つからないね。
『バットの魔弾【闇】』
バットが魔弾【闇】を発動させ壁に思い切りぶつけた。ガラガラと何かが崩れるような音がしたかと思うと目の前にあったはずの壁は消え去り、奥までの道が続いていた。
「ふむ、これで奥まで進めそうですな、急ぎましょう」
塞がれていた道を見事に開通させたジャロたちはダリアを救出するため奥へと急いだ。
――
「うん? ……近めの場所で何か崩れたか?確かあの辺りは…岩で塞いだところか。……ってことは誰かしら追っ手が来たってことか、良いね、とても楽しみだ」
マルコに強烈な催眠をかけた男はさらにダリアにも催眠をかけようとした。無論秘密裏にこの場所から逃走するためである。しかし催眠をかけようとしたその手を止め、何か別のことを思いついたようである。
「そうだな……。お前は起こしておいた方が面白そうだ。ただし声は封じさせてもらおう」
そう言うと男はダリアにマルコにかけたのは別の催眠をかけた。催眠によりダリアは声を発せなくなってしまった。まるで声の出し方を忘れたかのように……尤も既に恐怖で声など出ないのだからその催眠はあまり意味をなさないのだが。
「面白い、言わば余興ってところだな。特等席で見させてもらうぜ」
そう言うと男はどこからかコウモリ型のモンスターを呼び寄せそれに跨ると空中を漂った……かと思うと姿を消したのであった。
――
ジャロたちが道を進んで行くと今度は道が二手に分かれていた。とは言え右側の道は道……と言うよりは最近掘られだした穴の様であった。
「ふむ、ジャロ様。どちらに進みましょうか」
右側の道は道って感じがしないんだよね。多分何かしらにエンカウントするんじゃないかと思うから左側に進もうかな。そろそろ急がないとマズい気もするしね。
「左側に行ってみましょう」
ジャロたちは左側の道を進んで行った。今度も敵とエンカウントすることなくスムーズに進むことが出来たのである。そうしてジャロたちはやや大きめの空間へとたどり着いた。
そこには何者かに襲われたのか倒れているポールとピエールの姿があった。そしてその奥に進むとまたさらに大きな空間があるようであった。
「……あれは、確か傭兵として同じく護衛をしていた人ですね」
ずいぶんと大胆な救出作戦になってしまいました。そのせいで救出しようとしているジャロたちの存在がばれましたね。余興とは一体何でしょうか。まあ少なくとも楽しいことでは無さそうですね。