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「優葵、?」
眼鏡をとった雅先輩は、僕の顔をみて、そう呟いた。
そう、僕の二つ目の名前は『優葵』。
『優葵』、それは3年前、突然姿を消した伝説の歌姫。
性別、年齢などは何も分からない。ただわかるのは『優葵』という名前だけ。
美しい白銀の髪にブルーの瞳。神秘的なその姿は、天使のようだ。
そして、歌姫は突然姿を消した。何年月日が流れようとその歌姫の歌を忘れる者はいない。
そして、その時、あるひとつのバンドも引退すると噂が立っていた。
そのバンド名はASUKA。
唯一、優葵のバックで演奏できるバンド。
優葵が歌うときだけ成り立つバンドだ。
ボーカル 優葵、ギター ジュンこと本名純也、ベース ハルこと本名晴季、リーダーでドラム タクこと本名拓夜。優葵以外はみんな僕のいっこ上で幼馴染みらしい。
優葵が消え、引退かと思われたが、優葵がいつ帰ってきてもいいようにと歌はCDで演奏だけを自分達がするという活動をしている。
それでも人気は衰えない。全世界の誰もが歌姫の歌を、声を知っているだろう。
そして、僕がその『優葵』なんだ。今、拓としか連絡は取ってなくて、純也と晴季は、僕の居場所を知らないし、僕が拓夜と連絡をとっていることも知らない。
僕は、逃げた――。
見つからないために、変装もした。こんなに早く見つかるなんて…。
「…雅先輩、この事は、誰にも言わないでください。ばれちゃ、ダメなんです。お願いします。どうかこの事は…」
雅先輩に必死にお願いする。すると、雅先輩は優しく笑って眼鏡を掛けてくれた。
「…わかった。 でもひとつ条件がある。」
「…条件?」
「あぁ。3年前、何故突然姿を消した?」
その瞬間、自分でも顔の血の気が消えていくのがわかる。きっと真っ青だろう。
「…ダメ、?」
雅先輩は諦めないで聞いてくる。
(…雅先輩なら、大丈夫かな?)
「…ゎ、かりました。お話します。
僕は、―――