無茶振り
白衣の女に柊から神凪を奪えと頼まれ最初は拒否したものの二人が付き合っているフリをしているという情報を受け、神凪を諦めきれない木戸はそれに乗ることにした。白衣の女はブランコと呼ぶことになった
「で、別にブランコは今後具体的に何をしてくれるわけ?」
「君が私のラジコンにならない程度に指南する、つまりは恋愛相談に乗るってことだ」
「当てになるの?」
「大船に乗ったつもりで構わないよ」
なんでこんなに自信満々なのだろうか
「せっかくだから最初のアドバイスといこう。現在君と神凪をつなぐ大きな繋がりはアルバイト先が同じであることだ。学校外のプライベートな状況で客次第とはいえ容易に二人きりになれる。これを利用しない手はない」
「うんうん」
「シフトについては月曜日、木曜日、そしてサッカー部の活動次第だが土曜日に一緒になることが多いね」
何で知ってるのかという疑問は聞いても今更なので飲み込んだ
「そこでだ。次一緒になったらデートに誘いなさい」
「は?」
こいつは何を言っているのだろうか。色々段階すっ飛ばしてないだろうか
「質問よろしいでしょうか」
「孝太郎君、どうぞ」
「まずハードルが高すぎます」
「二人きりになるのには通常大きな労力を要するが今回は何もしなくても機は熟すんだ。なら楽した分違うことに労力を割くのは当然だ」
「にしても早すぎじゃ?」
「こういうのは時間が経っても成功率は上がらないものだ。寧ろ下がるまであるね。だからいくら理屈をこねても時間の無駄ってもんさ」
全くもって根拠のない、それも都合のいいことを並べ立てられただけだと頭の中では理解していた
しかし人間の信じたいものを信じる性だろうか。俺はその言葉に悔しくも少し自信が湧いてしまった
行けるのではないかと
「次、神凪は柊と付き合っているフリをしているんだよな。物語の設定あるあるで他の男に言い寄られない為にそういうことをする創作物がいっぱいあるが、奇しくもその術中にまんまと引っかかった俺にどうやってデートの口実を作れというんだ」
「何を今更。その問題は先送りしたところで目的達成のためには必ずいつか衝突する問題だ。君はこの計画を完遂させたいならそういったくだらない倫理観を捨てた方が賢明だよ」
否定できない。神凪にアプローチするならアイデンティティを失わないぐらいにはそうするべきなのかもしれない。
「じゃあ最後、ブランコから見てこの計画の成功率は何%?」
「失敗は許さない」
「答えになってねぇ」
イレギュラーが無ければ実行は明後日になる。何かしら策を練らねば。