第7話 奪還
あと数話で第一章完結の予定です。
第二章までは暫く投稿が開く事が予想されています。
翌朝、再び修行寺を訪れると昨日連れ戻されたエロ組が顔を腫らした状態で第一門に立ちはざかった。
「しっ師匠っ!仕方がないんです、やらないと殺されるんですっ!」
大げさな...。前にも言ったがここの住職は立派な人で有名なんだ。
「遠慮する事は無い。お間ら如き片手1本で片がつく。」
光は1,000ギラを払うとそう二人に宣言した。
因みに嘘は言っちゃいない、地面にスケッチブックを置けば片手で書けるから...。
「「ぐはあっ」」
「ふはははは、見ろ瞬殺では無いか?!」
「師匠~!一生ついて行きます!」
しかし待てよ、この調子だと第2門の茶色Tシャツはまたあのインチキ組か?
そう思ったら第2門は別の修行僧達が茶色いTシャツを着て出て来た。
Tシャツの表は’不’と’不’。不動?不惑?もしかして..不死身?!
そう言えば顔に生気が無く目の下に黒っぽい痣が浮かんでいた。もしや奴ら世に聞くところのキョンシーって奴か?いやここの寺は道教では無いはずだ、ならば彼らの正体は?!
「ごくり」
光は生唾を飲み込んだ。
しかしここで羽織が暴走した。
「今度は私の番ね?デザインターゲットは’キーボード’よっ!」
「拙僧がお相手しよう。これで如何に?」
ゴツイ茶モンペが提示したデザインはラウンド上に配置されたキーボード。一見使いがってが良さそうだが、よくよく自分の手をデザインに当ててみると如何にも打ち辛らそうであった。
「私のはねえ、じゃーん。タッチキーボード!」
「おい羽織、それはデザインとは言えないのでは?」
「ふふん、カモン、ザ・ジャッジマン!」
ぼよよーん
羽織に呼び出されたジャッジマンは彼女が書いたデザインの柱脚部をしげしげと眺めて言った。
「ふむ、まだこの世の中に無いアイデアですね。デザインとしては認めましょう。」
なにいっ!
俺はジャッジマンの白い手袋から羽織のデザインをひったくると脚注を読んだ。そこにはこう書いてあったのだ。
『注1)一般的なキー配列でスタートするが、使用頻度が高い文字が指から一番近い場所に自動配列される機能を有す。』
「あっありえない!こんな物使いづらくて仕方が無いに決まっているじゃないか?」
『ですから、判定はドローです。何方も使いずらそうですからね。』
次のターンで辛うじて勝利を拾った羽織がさも一仕事終えた様に陣地に戻ってくるが、今後コイツと旅を共にして本当に正解なのだろうか?と不安に思った事は言うまでもない。
◇
『勝者、いつも生意気なガキ!』
おいジャッジマン!そろそろ俺の名前を覚えたらどうなんだ?
しかしクールな光は不敵な笑みを一つ浮かべただけで次の門へと向かう。
因みに本日の茶シャツ達の背中側の文字は’休’と’眠’だった。道理で二人共目の下に隈を作っていた訳である。
おっと、途中にトレーシング・トレーニング場に寄って行くことも忘れない。修行は効率よく行わなくては。
そして再び訪れた第3門、一行は黒シャツ達の前に立つ。
「おやおや、昨日のお客様ではありませんか?
どうも有難うございます、本日も来て頂けるなんて光栄です。
今他のお客様が試合中なので終わったらお呼び致しますね?」
中断されたバトルの再会と思しき客の相手をしながら黒シャツの片割れが丁寧に対応してくれた。
光達は参加費の2千ギラを払うと座禅を組んで静かに待つ。
やがて黒シャツに破れた挑戦者達がうな垂れて彼らの前を通り過ぎると、それはまるで昨日の自分たちを見ている様で心が痛んだ。しかし勝負の世界に情けは禁物、そう言い聞かせて奮い立った。
「お客様、今日のお題は何に致しましょうか?」
「今日の一戦目はペットボトルで行きたい。」
(つづく)
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