第6話 羽化しない芋虫
ふう~ばかばかしい。と肩の力を抜いて頂ける様な話を目指しています。
当て字が酷くて申し訳ありません。
目の前の黒シャツの闘気に全身を悪寒が襲った。
これが恐怖?
いや、光は対戦相手を恐れてなど居ないし。逆転して勝つ積りである。
それなのに体が動かない。まるで海藻だらけの海中を泳ぐかの様に、体がナメクジに変化したかの様に鈍い動きの指先がゆっくりと指輪を描いて行った。
それはシンプルなエンゲージリング。
2カラット相当のダイヤを銀色に光る立爪で止めたありふれた品。
日々色々なデザインが生まれるこの世の中だがそれでも昔ながらに良い物は良いと光は考えていた。更に人々が求める新しさとは躍進的な刷新よりも良い物に対して僅かに新しい要素の付加する事だとも。
光がシンプルかつオーソドックスなリングに付加したのは金のしじま模様1本。其れだけであった。
◇
カモン・ザ・ジャッジ!
敵がジャッジを呼び出した。
『あー、既に意匠登録されていますねえ。残念ですが』
「ぐはあっ!」
こうして光たちは脱落した。
「...どうしよう、私達破産よ?」
山を降りた羽織と光は麓の平原を歩いていた。
羽織は破産だというが正確にはほぼ破産である。
そしてエロ組は再度寺に収監されてしまった。
「金が無ければ稼げば良い。幸い此処は平原だ。」
「通りがかりの旅人を襲うのね?!」
羽織、お前...
「違う!平原に出没するデザイン芋虫を退治してお金を稼ぐんだ!」
デザイン芋虫...
真っ白な体をキャンバスに様々なデザイン模様を浮かべるという素晴らしい魔物である。
奴らは相手より素晴らしいデザインを示す事により個体の優劣を付けた。そして負けた個体は糸を吐きそれを相手に進呈するという習性があり、その糸が都では高く売れるのだ。
近くの街でも都程では無いがそこそこ高値で引き取ってくれるに違いない。
「いたわっ!」
1匹のコロコロとしたデザイン芋虫が目の前を歩いて...いや、這いづっていた。
「でもお題はどうやって決めるの?」
「良い質問だ羽織。こればっかりは相手の体に浮かんだ絵柄から推測する他無い。
要は相手が好む物で素晴らしいデザインを提供すれば良いのだ。」
「分かった、やって見る!」
平原に住まうデザイン芋虫の平均レベルはDeL3だから今の羽織なら楽勝だろう。
「ええっと、これは草かしら?
貴方の好物なの?
うーん、素敵な草ってどう書けばいいのかしら?
そもそも動植物はデザインする物じゃないわ?」
羽織、そこは草にちなんだデザインでいいんだ。
「だからハイ。貴方の体にお花を書き足して上げたわ。
うふふ、とっても素敵よ。わあ、喜んでくれた見たい、
ねえねえ糸を吐き出してくれたよ?あれ、ちょっと!」
「馬鹿、それは怒って攻撃されているだけだ!
芋虫の体に筆を入れる事は彼らに取って焼き印を押されるに等しい侮辱なんだ!」
「助けて~!」
俺は即座にスケッチブックを開くと蔦で出来た椅子を描き青々とした様々な葉っぱで其れを装飾した。
「きゅううう~!」
それを見た芋虫は負けを認めたのか羽織を糸でグチャグチャに丸めてたまま逃げ出した。
「全く世話の掛かる...。」
そう言って羽織の体から糸を丁寧に巻き取った俺は有る事を思いついた。
「羽織...これ行けるかも知れん。」
◇
「いやだあ~」
泣き言を言う羽織の足がまた1匹の芋虫の糸によって絡め取られた。そして羽織が糸玉にされた頃に光が救出に向かう。
そう、怒って吐き出された糸を解しながら思ったのだが、普通に勝負して糸を吐かせるよりも糸の量が断然多かったのだ。
日暮れまでの短い間にかき集めた糸を鮮魔竿村の宿で売ると数万ギラの稼ぎになった。これが都会なら更に3倍くらいの値で売れるだろうから修行が終わったら暫く糸集めをしようかと考える。因みに何故買い取り先が宿屋なのかというと、田舎では旅人が物品で宿代を提示する事が珍しくなかったのでそのうち宿屋連盟が物品の買い取りをしてくるようになったからである。
「よし、今日はこの金で豪勢に飲み食いして明日の朝一番に彼奴らを助けに行くぞ?」
「え~。明日は休憩したい~。」
「つべこべ言うなっ!」
こうして翌朝一番で寺院の門を叩いてみると、第一の小門には顔を腫らしたエロ組の姿が有った。
(つづく)
読んで頂き有難うございました。