第5話 トレーニングする卵達
書き写す事も修行になるのでは無いかと勝手に想像しています。
現在パーティーは一人500ギラ払ってトレーシングペーパーを使った書き写し訓練で画力アップのトレーニングをしている。
トレーシングペーパーの購入が別会計であるが豊富な下絵は選びたい放題であった。
そしてお昼になったので出前を取る。
階段をヒイヒイ言いながら登って来たピザ屋の店員さんに、配達時間が30分をすぎていたので値引き交渉をすると、もう二度と注文しないで下さいと涙目で言われた。
本当に済まなかったピザ屋さん。と光は心の中で深く反省する。
その後、ピザを仲良く分け合いながら4人で今後のプランを相談した。
「とりあえず目標はDeレベルからDレベルへの脱却だな。」
因みにeはエッグのe。Deとはデザイナーの卵という意味である。
「じゃあもっと敵を倒さなきゃ」
羽織のいう事は正しかった。しかし敵を倒すためにはまず強くならなければ行けない。卵が先か鶏が先かである。
「今日は夜までここで修行し此処に泊まる事しよう。」
光はそう宣言し、レベルアップを目指して作業に没頭した。
◇
「本当はもう数日間ここで修行したいのだが残念ながら予算の関係で次に進む事にする。つぎ勝ったら相手の坊主が持っている金を根こそぎ奪うように」
悪の軍団長が行う朝礼みたいな挨拶になってしまったがお金が無いのは切実なのである。
「はい、闇の光様!」
「花地君。名前の前に勝手に闇とか付け無い様に。」
「3ラウンドからは若干づつ懸賞金が付きますが?」
そう花地が説明してくれた。
「なんだ、じゃあ勝って進めばお金の心配は無くなるって事?」
羽織はもう勝ち進む事を前提に話を進めようとしている。
「ふふふ、甘い、甘いぞ!」
あっそれ、俺が言いたかった台詞!
「シロー 、なんで?」
「何故ならば3ラウンド目から一気に敵が強くなっているからです。」
そうりゃあそうだろう。ギャンブルなんかでも勝てば沢山貰えます的に始まり、少し花を持たせていい気になった所をガッポリ毟り取られるパターンが王道である。
発言するタイミングを失った光は暫く聞き役に徹した。
「うーん、負けたらどうなるの?」
「貰える経験値は僅かで千ギラ取られて山を下りるだけ?」
「其れだけじゃあないんですよ!俺たちは又監獄長の元に戻る羽目に。」
そんな話をしている内に次なる小門へたどり着いてしまう。
「良くぞいらっしゃいませ、今日最初のお客さんだ。皆さん纏めて2千ギラになります!」
黒いシャツを着た愛想のいい男が二人、出迎えてくれた。
良く鍛え上げられた体はシャツの上からもその筋肉を主張している。
「いやあ、今日も暑くなりそうですね?そこのお嬢さん、日焼け止めなんか必要じゃ無いですか?1本650ギラで売っていますよ。」
商売人だな。
「所で4人でも挑戦できるのか?」
「ええ、その代わりお客様が勝った時の賞金は半額になりますが如何されます?」
「因みに懸賞金は幾らかな?」
「通常は一人倒すごとに3千ギラ差し上げています。」
其れを聞いた羽織が手を叩いて喜んでいる。
甘いぞ羽織、参加費用を受け取った途端にこいつらは凄まじい気を発し始めた。しかしもう2千ギラ払ってしまったのだから当たって砕けろの精神しか無い。勝率を上げるために賞金を犠牲にして4人で挑む事にした。
「デザインターゲットは指輪!」
敵が装飾品を一切付けて居ないない事から推測し、光は考えうる中で一番勝率の高そうなお題を宣言した。
「師匠俺が行けます!」
驚いた事に’転生・しろー!’が一番手を名乗り上げる。
敵はにこやかな黒シャツ。但し発せられる気配は半端なかった。
「ではこの様な指輪で如何でしょうか?」
「ぐぼあぁぁあー!」
転生シローは自身の攻撃を待たずして砕け散った。
黒シャツのスケッチブックには緻密な模様の刻み込まれた環に大小7個の石が埋め込まれた誰もが欲しくなりそうなスタイリッシュかつ職人さん泣かせな指輪が描かれていた。
「光!この人エッグレベルじゃないわ!」
羽織のやつめ今頃気が付いたのか?仕方のない奴だ。
「ハナジ行け!」
花地がペンを走らせルビーでバラの花をあしらった指輪を描く。
しかしその程度の発想では敵のダメージは微々たる物だった。
続く敵の攻撃であっさり地面に臥した花地。
「次は私!マイドリームリングはこれよっ!」
「ぐぁはぁっ」
今度は羽織のスケッチを見た光がダメージを受け、地面に倒れそうになった。
何故ならばお菓子に付いて来る玩具かと思うほど巨大なダイヤを止め石に使ったアンバランスな指輪が描かれていたからだ。石がデカけりゃ良いってもんでも無かろうに!
当然敵はノーダメージ、頼りになる羽織も敗れ残りは唯一人残された光は唇を噛み締めた。
「こんな所で負けてる訳には!」
(つづく)
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