第1話 ここで会ったが100年目とか
楽しんで頂けると嬉しいのですが、自信は全くありません。
10話程度で第1章を完了させる事を目標に書いています。
本日15時頃に第2話を投稿予定です。
「お前がファミリーの事を嗅ぎまわっているガキだな?ここで会ったが100年目、死んで貰おう。」
うわーぉぅ!
ベタな台詞を投げつけられた。
念の為に辺りをキョロキョロ見回して見たがそこには光一人しか居なかった。
知らない、お前なんて知らないから!
「我が名はチェアー。デザインターゲットはその名通り’椅子’だ!」
舞台などにいる黒子そっくりな恰好から察するにチェアーのデザインレベルはとても低い。
なぜかって?
もしレベルが高ければもっと外見もファッショナブルだからである。
こちらの見立てではせいぜいDeL1~2って所であり、負ける要素は見あたら無かった。椅子のデザインは得意とは言え無いがデザインターゲット{お題}は攻撃を仕掛けた者の権利なので黙って従う。
「しかし先行は貰った。ガキって言うんじゃない。」
俺の名は光。DeL3のデザイナー志願者だ。
そして描きなれたスケッチブックにスラスラと椅子を描いて行く。勿論そんじょ其処等にある代物じゃあ無く、背座には金色に光る沢山の突起を並べた。
その姿は正に大仏の頭。このイボイボによって椅子に座りながら健康になって貰おうという目論みなのである。
健康の理屈はイボイボサンダルと同じ。ただ座っているいるだけで健康になれる...筈である。
...いや、いい。言わなくてもいいです。
ごめん。だけど聞いて欲しい。人には得手不得手がある。つまりこれは得意分野じゃあ無いんだ。
そう心の中で言い訳をしていると敵が大きく動いた。
チェアーの反撃である。
「食らえ!」
彼のスケッチブックに描かれていたのは背中のツボに当たると思しき場所に鋭利な長針が植え付けられた画期的な椅子。
「てか、そんなもん背の低い人が座ったら変な所に刺ささってダメだろう!(自分のもだが。)」
「ぐはぁ!」
敵の自爆により記念すべき4勝目を飾る事が出来た光はDeLもめでたく5にアップして万々歳、これが一部始終である。
戦いが終わり歩き出そうとすると、ヨロヨロと地面を這う様にチェアーが手を伸ばしてズボンの端を掴んだ。
「待て!これ以上行くなら我等がファーニチャーカンパニー七戦士が黙って於かないぞ。彼らの筆頭であるデェスク様はDkL99。お前など100人乗っても大丈夫...。うっうおぉーーやめろおぉぉぉーー..ガクッ」
ごちゃごちゃ煩いので鼻と目の下にメ〇ソ〇ータムをしこたま塗ってあげたらスッキリ鼻詰まりがとれて寝苦しさも解消!チェアーは気絶する様に眠りに落ちた。(良い子は真似しないで下さい)
ふっ。いくら止められようが行かなくてはいけない。
そう、あの男に復讐するまでは。
◇
「我が名はウインドウ。決してOSの名前などでは無い!
違うったら違う。デザインターゲットは’窓のある家’だ!」
勝負を挑まれた光はズボンのポケットからスマホを出して話しかけた。
「知恵太郎、奴のDLは?」
知恵太郎はとても賢い人口知能である。
「ピー!DeL10です。貴方様なぞ足元にも及びません。短いお付き合いでした。せいせいするぜ、さようなら。ピー!」
いつもながら正直な回答にとても好感が持てた。しかし窓のある家か...デザイナー魂を揺さぶるターゲットだな。
「これでどうだー!」
光が描いた家とは屋根に天窓を設けた物で、その天窓が頂辺を支点に翼の様に開く構造だった。トラックの荷台やガルウイングを想像して貰えば良い。
側面にはアコーディオンを取りけて窓を開けっぱなしにしてもにわか雨で部屋が濡れない配慮もした。
そして外壁は暖色を用いたレンガ模様のサイディング材で覆い、周辺の屋根にはソーラーパネルもサービスする。うむ、エコロジーである。
「ぐぅっなかなかやるな。しかし此れでどうだ。」
敵の描いたスケッチブックには窓の中に小さな小窓がある家が描かれていた。
...敵があほで助かった。
「実用性が無いじゃ無いか!」
しかし敵はふてぶてしい笑いを浮かべるとどや顔で言い切った。
「デザイン性を重視したからな。」
出た、言い切りだ。これはDeL10以上で使える高等テクニック、但し格下にしか効かない。
どうやら初撃は互いに決定打に至らなかったので二人は同時に次の攻撃をスケッチブックに仕込み始めた。するとそこに新たなスケッチブックが投げ込まれたでは無いか。
「父の敵!」
突然現れた可愛いらしい少女はスケッチブックを投げ込むなりウインドウに宣戦布告をした。
そしてバトルは混戦となった。
少女のスケッチブックを見て見ると、そこには出窓が付いた七色の屋根が描かれていた。
家の前には猫の額ほどの芝生が描かれており、芝生の上では爺さん婆さん、孫まで含めると3世帯の家族が正面に向かって手を振っている。
「ぐはー!」
それを見た敵は前のめりに倒れた。
小学生の図工作品の並みの絵にも拘わらず何が彼の心をそれ程までに感動させたのだろうか?
地面に衝突した衝撃で彼の胸ポケットに入っていたポータブル・マヨ・ケチャップがブッと破裂してワイシャツを赤く染めていた。
「君は?」
光は惨劇から目を背けながら突如助太刀をしてくれたその少女に尋ねた。
その少女は細身でショートヘアーをしていた。年の頃は14~5歳だろうか?えんじ色のタンクトップに空色をしたストーンウオッシュジーンズ生地のショートパンツというラフな格好である。
「ごめんなさい。私一人では負けるのが怖くて誰かと勝負になる隙をずっと待って居たの。私の名前は羽織、ハオリンって呼んで良いわよ。」
勝てそうに無いと言う割には一撃で沈めていたが?
「そうか。じゃあ羽織、この先は更に危ない。だからお前は家に帰った方がいい。」
そう言ってクールに立ち去ろうとすると羽織は前方に駆けだしクルリと振り向いた。
その両手は大きく広げられ、光の行く手を塞いでいた。
「どういう積りだ? まさか俺と迄バトルをしようっていう気か?」
すると羽織はタンクトップからすらりと伸びた健康的な腕を小さなお胸の前で組むと不敵に笑った。
「ちがうわ、私の復讐は未だ終わらないの。ファーニチャー7戦士って聞いた事があるかしら?その筆頭は悪名高き”泥酢苦”。そいつがコイツに命令してパパを殺したのよ。」
どうやら仇討ちの為に是が非でもついて来る気であった。
「そうか、では仕方が無い。好きにしろ。」
こうして光はこの日初めて会った娘を旅のパートナーとして得たのであった。
読んで頂いて有難うございました。