ケモナーwith猫パンチ
猫っぽい召喚獣は、ふらつきながらも器用に二本足で立ち、前足で自分の胸のあたりを抑えながら言った。
「余は『キャスパリーグ』。災悪をもたらす偉大なる悪魔じゃ!余はおヌシを主と認めよう。光栄に思うがいい!あーはっはっは。」
ネコは、ものすごい偉そうにそう叫ぶ。多分声に凄みをつけて名乗ったのだろうが、台無しだ。なぜなら・・・。
「カワウイィィー、何この子〜。ハァハァ。へへへっ。うへへへへ。」
あきらがネコ?を抱いて顔をスリスリとこすりつけている。口からはヨダレが出て通報ものの顔をしている。というか、笑い方が怖いよ。
「や・・止め、やめろぉおぉお!あるじ様助けてください!この変態を余から遠ざけてくれぇぇ!」
ネコは、前足を必死に伸ばして助けを求めてくる。あれ?俺がとばしたはずじゃ?
「変態・・・あたし達の業界ではご褒美だよ、それにしても喋り方もかわいいねぇ。よーしよしよし。」
「おい、あきら。話が進まないから後にしてくれ。」
「・・・はーい。じゃあ、後でねネコちゃん♡」
「それでネコ、なんで右手が治っているんだ?そもそも、どうして死んでないんだ?たしかに殺したはずなんだけど。」
ネコはすっごい面白い顔になっていて、前足を使って額の汗を吹くような仕草をしている。
「余は死なないのじゃ!正確には再生能力が異常に高いだけじゃがな!・・・で、いつ余と契約を結んでくれるんじゃ?」
落ち着いたらしくまた偉そうな態度でそう言う。今ネコは胡座を組んでいる。器用すぎるだろ。
「分かった、契約しよう。でも、どうするんだ?」
俺がそう言うと、ネコは自分の前足で俺の額に向かって猫パンチをしてきた。すると、ネコを召喚した時と同じ黒い魔法陣が足下に出る。
「これで契約は完了じゃ!これからよろしくじゃ、あるじ様。」
・・・なんだろう、釈然としない。思ってた契約を結ぶ儀式と違うんだけど。
「それであるじ様。余の名前を決めてくれ。契約した魔物は名前を付けてもらうのが決まりじゃ。というか、ネコと余を呼ぶな!」
名前か・・・おれネーミングセンス皆無なんだよな。う〜ん、それじゃあ。
「『ココ』にしよう。お前の名前はココだ。これからよろしくココ。」
「『ココ』か、分かった。余の名前は今日からそれじゃ!ちなみに聞くが意味とかあるのか?」
「意味は無い!ただそう呼びたかったからそんななまえにしたんだよ。」
「あるじ様・・・めんどくさかっただけじゃろ?」
図星をつかれたけど、名前も決まったし言うことないね!
それにしても何か忘れているような・・・。
「あのー、すいません。」
あきらのメイドさんがしずしずと尋ねてくる。なんで俺の方をチラチラと見ているのだろう?
「どうかしたの?ケトちゃん。何かあるの?」
「あのですね・・・そのなんというか言っていいのかは分からないんですけど・・・。」
何かを躊躇うように彼女はそう言う、一体どうしたんだろう?
今言うことじゃないんだけど、あきらのメイドさんの名前ケトさんて言うんだな。
「えーっと・・・勝頼様?大丈夫なんですか?その傷。血が大量に出ていますけど。」
「「「あっ!」」」
そういえば完全に忘れていた。痛みが急になくなったから忘れてたよ。俺は急いで«回復魔法»をかける。
・・・あれ?手応えがない?いつものように魔法陣が出なかった。
もしかしてと思い、ちょっと袖をめくり傷口を見てみる。
「・・・傷が塞がってる?なんで?」
『スキル«自動回復»のおかげだよ。あの、傷とかが回復するスキルだよ。最初の方にコピーしただろ!自分が持ってるスキルくらい覚えとけよ!』
ヘルプ機能さんが言ってくる。何かだんだん乱暴な口調になってきたな。きっと彼(彼女)?も疲れてるんだろう。
「だ、大丈夫なの?お兄ちゃん?し・・死んだりしないよね?今更だけど。」
「治ってるから大丈夫、大丈夫。じゃあ俺は帰るよ。バイバイ。ほら行くよ〜、ココ。」
「ハイじゃ!あるじ様♪」
ココは俺の頭の上に飛び乗った。重い、重い。
ちょっと首がグキって音が鳴ったぞ。
帰り道俺は考える。
俺はまだ自分しか守れない。
ほかの人を守れる人は余裕があるのだ。余裕があるからこそほかの人にも気を回すことができる。
しかし、俺にはその余裕が無い。このままでは、アイナたちを守れず、この前の、『迷宮都市ラカタ』のアイナの時と同じようなことが起こってしまうだろう。
・・・それは嫌だ。帰ったら小さなことから始めよう。まずは自分のスキルを知るとかね。
とりあえず、俺に目標が出来た。
『自分のスキルを確認しよう』という目標が。




