相棒の名前は
今回は、話の都合上、鈴木あきら視点です。
あと、更新が遅くなって申し訳ありませんでした!
「やっと着いたよー、ここまで長かったー。」
あたしは街が見えたのでため息混じりに声を出した。あたしの名前は鈴木あきら。クラスはサモナーなんだよねー。召喚獣を召喚して戦うクラスみたいだよ。今は、レベルが低いから、一匹しか召喚することが出来ないけどね。今、あたしはパーティのみんなと一緒に、次の街に行くための船に乗るために『港町ケルプ』に来てるんだよ。
「そうね、あきらちゃん。なかなか辛かったわ。しかも、お尻が痛くなっちゃったわ。」
あたしのひとりごとのような呟きに答えてくれたのは、倫お兄ちゃんの先輩の瑞希さんだ。今は乗り物酔いして、グロッキーになって、先輩のチャームポイントのツインテールがだらんと垂れて怖いことになってるけど、キレイな人だ、時々怖いけど。
そういえば、倫お兄ちゃん元気かな?
前の街では銭湯にいたらしいけど、会わなかったし。
「今回も凄いなぁ、これ、またたま達だけが使うの?」
とても、大きな屋敷の前で同じパーティのたまちゃんが、驚きながら、屋敷を見ている。誰だって驚くくらいに立派な建物であるりあたしたちは勇者ということでどの街でも大きな屋敷を使わせてもらってる。
やっぱり、なんか抵抗があるなぁ。高校生くらいの人たちが使っていい建物じゃないよー。
「お風呂、お風呂〜♪やっと風呂ー♪」
私たちが二の足を踏んでいると、瑞希さんが嬉しそうに屋敷に突入していった。こういう時の度胸は凄い人なんだけどなぁ。あたしたちも続いて屋敷へと入っていった。
次の日の朝、街に鐘の音が鳴り響いた。
目覚まし時計かと一瞬思ったのは秘密なんだ。
その鐘がなり終わったすぐあとにあたしたちがいる屋敷に、仰々しいと言えばいいのかは分からないけど、立派な鎧を着た街の騎士団の人達がやってきた。
「勇者様方!街に魔王の手先の者がやって来ました。どうか力をお貸しください。他のパーティの方々にも声をかけてあります!」
あたしたちは二つ返事で引き受けた。勇者として、この世界に連れてこられた以上仕事はしないとね。
「魔物達は南門の方向から来ているようです。そこに向かってください!」
あたしは、スキル«召喚獣召喚»を使い、召喚獣のイヌワノフちゃんを呼び出す。つい最近、この名前に決めた。
この子はすごく可愛い。愛らしいクリクリとどんぐりのような眼にふっかふかの毛皮。元の世界の犬種で言えば『サモエド』って言う犬種にそっくりなんだよ。
雰囲気でいえばあの、倫お兄ちゃんのメイドさんのアイナさんに似てるかも?失礼かな?
こんな小さい子でもかなり強い。この前なんて、ダンジョンでオークの首を簡単にもいでいたし。
「ワゥ!」
「よし、行こうイヌワノフちゃん!」
あたしたちはすぐに南門へと急いだ。
南門に着くと、既に戦闘は始まっていた。
敵は、スケルトンやゾンビのようなアンデッドが多いみたいだ。ゾンビの匂いなのか、夏場の三角コーナーのような腐臭がして臭い。イヌワノフちゃんなんて、犬がしていい表情をしていない。ものすごい顔をしかめている。
フリフリの衣装を着た男の人が、次々と、アンデッドたちを浄化しているが、数が多いようで苦戦している。
「あたしたちも戦うよ!イヌワノフちゃん!」
「GURURURURU!!!」
イヌワノフちゃんは戦う時は体の大きさが変わる。今は、あたしが乗っても大丈夫なくらいな大きさだ。
もの○け姫に出てきそうって倫お兄ちゃんなら言いそうだよ。
あたしは鞭で、イヌワノフちゃんは爪と牙で、無我夢中で敵を倒していた。倒しても倒しても数が減らない、お風呂場のカビをとっているみたいなそんな感じ。
ちなみにあたしの戦い方はイヌワノフちゃんが敵に噛みついたり、爪で切り裂き、少し離れた敵は上に乗ったあたしが鞭で倒す、そんな戦い方だ。
「GURURURURU?」
「どうしたの?イヌワノフちゃん。」
あたしたちが街から少し離れた位置まで来た時
イヌワノフちゃんがゾンビたちが来ている方向を見て、牙をむき出しにして威嚇している。怯えているようにも見えるのは気のせいかな?
「・・・ほう、そのイヌは、我の強さを理解したのか。いや、そいつは召喚獣か。」
イヌワノフちゃんが威嚇した方向から、不気味に低い声が聞こえた。その声があたりに響くと同時に、周りにいたゾンビやスケルトンが道を開けるように街の方向に走る。他の人達がやって来たモンスターを倒してはいるが、なかなか辛いようだ。
まぁ、瑞希さんたちがいるから大丈夫だろう。
「それで、あなたは誰?」
「我は『ドラウグル』という魔物のルドール。魔王様の部下よ。我は魔王様の命令で貴様達、勇者を倒しに来た。」
そいつは、ボロボロの鎧を付けていた。不自然に割れた兜のなかから半分は白骨化、もう半分は腐乱した頭が見えた。その眼は青白い炎が灯っているように光っていて、手には小さな鎌が握られていた。そして、他のアンデッドたちと同様に物凄い腐臭を放っていた。
「あなた、とても匂いがキツイのね。ちゃんとお風呂に入っているの?」
「ハッハッハ、言うじゃないか小娘。」
ルドールは、気前の良いおじさんのように快活に笑う。
イヌワノフちゃんが酷く怯えている。
おかしいな?今までこんなに怯えたことは無かったのに。・・・そこまでコイツは強いの?
「どこを見ているのだ?相手はきちんと見ないといかんぞ!」
少し離れた位置の正面にいたはずのルドールの声が真横から聞こえた。
「ガゥ!」
イヌワノフちゃんが、あたしをルドールの手に持った鎌から庇ってくれた。
その子は、とても酷い傷を背中に受けた。その傷からは血はもちろん、白い何かが見えた。イヌワノフちゃんは気を失ったようで、小さな子犬の姿に戻った。
この傷は、かなりマズいと医療にあまり詳しくないあたしでも分かる。
「ほう、主人を守るとはたいした奴だな。その、忠誠心に命じて、我も本気を出して、楽に殺してやろう。」
目の前から、ルドールが不自然に消えた。まるで、霧が晴れるように。
っ!何か嫌な予感がする。あたしはイヌワノフちゃんを抱えて、前に跳んだ。
『ザクゥ!』
「うっ!痛いっ!」
背中の右肩から、左脇腹のほうに向かって少し切られた。もし、避けていなかったらと思うと・・・ゾッとする。多分、首がとんでた。
「今のを避けるとは・・・。」
あたしが切られた方向からルドールが姿を現した。
どうやら、透明化していたようだ。
「今のを避けなかったら、もっと楽に死ぬことが出来たのに。・・・次で終わりにしてやろう。」
また、ルドールは手に持っていた片手で持てるくらいのサイズの鎌から、背中に背負ってた両手で持つような大きな鎌に持ち替えて再び透明化した。
あたしは痛みで身体がうまく動かない。
痛い、痛い、痛い、痛い!ということしか、頭に無かった。傷口からは痛みと、同時に熱さも出てきた。
「これで、終わりだ。」
背後からルドールの声が聞こえた。
・・・ここで、あたしの人生は終わるのかな?
何だろうねー、呆気がないなぁ。
「一思いに殺してやろ『ドン!』ぎゃあああ!」
背後から断末魔と、何かがぶつかる聞こえた。
その数秒後べチャリと、鈍い音が離れたところから聞こえた。・・・えっ!?何が起こったの?
痛みを我慢しながら、あたしは恐る恐る後ろを見た。
そこには・・・。
この世界にはあるはずのない、『車』があった。
でも、なんだろう。どこがが違う気がする。まぁ、いいか。そんなことより・・・。
「うーわ、ヤベェな、なんか弾いたぞ。」
そして、その中には・・・、あたしの見知った人が。
「り、倫お兄ちゃん!どうしてここに!」
「おぅ、あきら、久しぶりだな。元気だった?」
倫お兄ちゃんは、笑いながら呑気に挨拶してきた。
何故だろう、とても安心するなぁ。




