一区切りついて
チョーカーを着けてから、ポーっと魂が抜けたように虚空をみつめているアイナ。大丈夫なのかな、あれ?
もしかして、あのチョーカー呪われてるんじゃないだろうか。俺は久しぶりに«模倣魔眼»を使って彼女の着けているチョーカーを鑑定した。
うん、普通のチョーカーだな、でもだったらどうしてあんな感じなんだ?
ご飯ができたと、俺とアイナを呼んだリシアとシャティが、小さな声で聞いてきた。もちろん、アイナのことだ。俺は、今シャティとリシアに引っ張られて、馬車の近くまで連れてこられた。アイナは少し離れたところにいる。
「(倫さん?アイナちゃんどうしたんスか?あの顔、只事じゃないっスよ。大丈夫なんスか?あれ?)」
「(マスター、アイナっちに何したの?変なことしたんじゃないだろうね?)」
「(俺は特に何もしてないよ。なんか、チョーカー着けてくれと言われて着けただけだが。それからあの調子なんだ。)」
アイナの表情は、どこか変だ、というか、変じゃないところの方が少ない。目は虚ろになってるし、口からはよだれ、さっきから小さい声で、うへへへへと、笑ってる。大丈夫か?あれ。変な薬でも使ったのか?
念の為、確認するために声をかけておこう。
「あー、アイナ?大丈夫か?」
「はっ!だ、大丈夫です。私は元気ですよ!」
彼女は、表情を崩したまま、例の『任せなさい!』のポーズをした。むしろ、任せられないよ!というか、俺はそっちにいないよ。
本当にダメだコイツ、早くなんとかしないとな。
「ちょっと、話を聞いてくるよ。女の子同士にしか話せないこともあるからね。ちょっと聞くのが怖いけど。」
「私も行ってくるっスよ。倫さんは、そこにいてください。」
彼女たちはアイナのところに行って話を聞いている。
・・・あれ?なんで2人ともコチラをチラチラ見てんだ?そして、アイナは、なんで俺の方を指を指しながら体をくねらせているんだ?
アイナの話を聞き終わったのか、2人は戻ってきた。
・・・なんか2人の目がすごく怖いんだけど。例えるなら、そう獲物を狙う獣の目って感じだ。
「ねぇ、マスター、頼みがあるんだけど。」
「な・・何?」
シャティは、不気味に微笑みながら、優しい声音で言ってくる。リシアは、アホ毛を激しく揺らしながら同じことを言ってきた。
「ウチに、アイナっちと同じようにチョーカー着けて欲しいの。」
「り、倫さん!わ、私にもお願いするっス!」
「べ、別にいいんだけど、俺チョーカー持ってないぞ。あれ、アイナの自前だし。」
「ご心配ありませんよ、ご主人様。ここに、あと3つありますから、はい、2人ともどうぞ。あと、ひとつは予備として取っておきますね。」
いつの間にか、俺の背後に移動していたアイナは、手に自分が着けているチョーカーと同じものを持っていた。
・・・いつの間に移動したんだ?
シャティとリシアは、アイナからチョーカーを受け取ると、こっちを向いた。・・・一瞬彼女たちの目が怪しく光ったように見えたのは俺の気のせいだろう。
「「着けて!」」
「は、はい、分かりました。それじゃあリシアから。」
2人とも怖い、と言うかアイナも怖い。
こうして、俺は2人の首にチョーカーを着けることになった。
「さて、一区切りついたし皆お昼を食べようよ!せっかく作ったのに冷めちゃうよ。」
シャティが、赤くなった顔のまま言う。チョーカーを着けた辺りからずっと顔が赤い。やっぱり、あのチョーカーなんか意味あるよね。
シャティ謹製のハンバーガーは素晴らしい見た目だった。パンズはクッションのようにもふもふで、そのパンズからはみ出るくらいの大きさにしてあるハンバーグ。それはカリッと焼けていてこれでもかと存在感を出してくる。見ているだけでヨダレがでて、お腹も空いてくる。さて、いただこう。実食だ。
俺は周りの視線など無視をして大きく口を開けてかぶりつく。
本当に美味しい。なんて言うのかな?もう本当に美味しい。俺の語彙ではこの気持ちを伝えることは出来ない。
アイナがR指定がつく顔をするくらいと言うと分かりやすいかな?
「ねぇねぇ、マスター?美味しい?」
ハンバーガーに夢中になっている俺にシャティが抱きつきながら聞いてくる。そんなの答えは決まってるじゃないか。
「あたりまえだろ、これも本当に美味しい。今までこんなハンバーガー食べた事ない。本当にいつもありがとうシャティ。」
「改めて褒められると、照れるよ。えへへっ♪」
シャティは、はにかむように笑った。
ちなみに、リシアが静かなのは夢中で、ハンバーガーを食べているからである。彼女のチャームポイントのアホ毛は分身していた。
お昼からは御者はリシアに代わりシャティに変わった。
リシアじゃなくなったのは、彼女がお昼寝がしたいと言ったからだ。寝るのが本当に好きな子だな。まぁ、朝も早かったしね。
いま、リシアは、大口を開けてだらしなく眠っている。美人が台無しだなぁ。どこかの森の妖精みたいだな、あのバスとか、トウモロコシとかで超有名な作品に出てくる奴だ。
アイナは、寝ているリシアの隣で、俺が以前街で買った本を読んでいる。乗り物の中で本を読んでいると、酔うぞアイナ。
俺はというとシャティに頼まれて御者台の一緒に座ってる。本当は、俺もお昼寝したかったのだが、有無を言わさずここに座らされた。
俺は空を見ながら、異世界に来てよかったなと考える。
この場合は思うというのかな?まぁ、本当に来てよかった。
馬車の音が一定のリズム街道に響く。
眠たくなってきたなぁ




