フリーチェ王国編5〜上腕二頭筋とスライム殺し〜
多分本日ラストの投稿です。サブタイトルが、思い浮かばなかったので適当に考えました。
個々の専用武器とクラスが判明した次の日、俺たちはここの戦闘能力を確認するために、街の外へと連れ出された。
ひとつの馬車には、6人程度ずつしか乗れないため、大量の馬車が街から出ていく光景はさぞ……そう言えば、俺……得物を持たされずに連れてこられているんだけど……素手で倒せってことかな?
と、とりあえず、同じ馬車に乗っている全身甲冑の騎士さんに余っている武器がないか尋ねてみようと思う。
「あの………余っている武器とかって無いですかね?」
全身甲冑の人はピクリとも反応しない………鎧が重いから動けないという訳では無い………よね?
「あ、あのすみません………あの……」
「………ん……あっ、寝てませんよ!起きてるッスよ!」
全身甲冑の人の声は女性のような高い声で………中の人は女性なのだろうか?
全身甲冑の騎士さんはアタフタしたように動いて、なんだが、面白い。
「あ…なんでしょうか?何か用でしょうか?」
急に装ったような冷たい声を出す騎士さん………やや怖い。
「あの………余っている武器とかって無いでしょうか?」
「専用武器がありますよね?あと、スキルとかも持ってますよね?それで充分乗り切れる相手を選んでいますから安心してください。」
それだけ言うと騎士さんは再び動かなくなってしまった………やはり、素手で挑めということらしい………スキルなんてもの、使い方も知らないし、そもそも俺にあるか分からないし………素手か………柔らかい奴が相手だといいな。
さて、馬車が止まり、俺達が降りた場所は、芝生のような植物が生えているグラウンドのようなところだった。ただ、人が整備してこういうものになったということではなく、たまたま、自然的にこうなったみたいである。
鹿のような生き物がモサモサと芝生みたいなものを食べていたり、ウサギみたいなものが跳ねていたりと………微笑ましい場所だった。
そんな場所で俺たちが相手にしたのは、フィクション史上最弱の敵キャラ………近年のライトノベルでは強いものも現れてはいるが………それでもなお、最弱の名を背負っているスライムさんだった。
倒すスライムの大きさは中型犬程度………色は、緑ガシャポンに、入っているおもちゃのスライムみたいな気持ちの悪い緑色だ。
今回は1人につき一体…こいつを倒すことが目的らしい。
この世界では、スライムは小さな子供でも頑張れば倒すことが出来る程度の強さしかなく、魔物のため油断は出来ないが、油断さえしなければ倒せる相手らしい。
…………スライムって食べられるのだろうか………見た目的にはグロテスクだが………後で聞いてみよう。
俺はスライムを倒すのに中々の時間がかかった。
俺は何も持っていないため素手だし………しかも、スライムは触るとカエルの表面みたいにヌメヌメしてるしで………すごい触るの嫌だった。
それに殴ってもあまり効果がないみたいだったため………頑張って掴んで、押しつぶした。
中からはなんか………泡立った緑色の体液が出てきて………もう二度とスライムを握りつぶすなんて真似はしたくない。
俺が近くを流れている小川で手についたヌメヌメをとっていると、急に背後から何かが弾けたような爆音がした。
驚いて振り向くと、そこには全身謎の緑色の液体まみれの、半裸の男性がポージングをしながらドヤ顔を浮かべていた。
半裸の男性は……はい、俺の友人の青木駿です。
思わず、誰得なんだ?男のスライムまみれなんて、と言いそうになったが、耐えて無視をした。
ああいうのには関わっちゃいけない………チラリと横目で確認すると、先程のポーズとはまた違うポーズで近づいてきていた。
………あんな殴りにくいやつを爆発四散するなんて………どんな技術だ?まさかあれがスキルってやつなのか?
だんだんと近づいてきてうざくなってきたので、相手をすることにした。彼は満足そうにポージングを決めている。
「駿!スライムを倒す前に、服を着ろよ、服を。
後、そのポージングウザイから止めろ。」
「我が肉体に恥ずべき場所などない。どうよ!この筋肉………素晴らしい上腕二頭筋だろ?」
そう言って、ボディビルダーでお馴染みのポーズである、“サイド・トライセップス"という、腕を後に組んで上腕二頭筋を強調するタイプのポージングを、変わらないドヤ顔で向けてきた………俺はどういう感想を持てばいいのだろうか……すごいすごーいとでも言ってあげればいいのか?
それとも馬鹿めとでも言ってあげればいいのか?
俺が何故こんなにもポージングのことが、分かるかというと、一時期コイツはボディビルダーのポーズの練習に俺を巻き込んだからだ。あれは夏休みのことだったかな………夏休みの自由研究に、ボディビルダーのポージングを選んだこいつに手伝わされ………思い出しただけでも頭が痛くなる。
あの時は、地獄だった。
よく周りを確認すると、何人かの女子がキラキラとした目で黄色い声援を送っている………あぁ、そう言えばコイツって、すごいモテてたっけ………告白も何回が全て断わっていたな……そう言えば。
さて、そんなモテモテなこいつを見て、荒い息を向けている女子もいる………気のせいだろう……見ている女子が俺とコイツの二人を見てハァハァしているということは。
………腐りきってやがるぜ!
すっごい私事なんだが……俺は、女性とあまり話さないため……時々勘違いされる……0ソッチ系の趣味なのか?と思われることがある。
俺は、女性と話すと緊張するため、あまり話さないだけで、ノーマルだ!
大事なことなのでもう一度言う、俺はノーマルだ!
思春期まっさかりの男子高校生はこんなもんだよ………女性と緊張せずに話せる人のことは尊敬します。
ヌルヌルの筋肉男に、小川でスライムを洗い流すように伝えたあと、他の人の戦い方をるために、ぶらぶらと歩く。
………例の巫女(笑)さんは、スライムに向かって月に代わってお仕置きよ!、とどこかの、セーラー戦士を彷彿とさせる、セリフを言いながら杖で、親の仇のように滅多打ちにしていた………お前が、然るべき機関にお仕置きされろよ。
武器がないって、こんなに辛いんだね。