ご主人様は断れない
次の日、アイナたちに会うといきなりシャティは、土下座をしてきた。とんでもなく綺麗な土下座だ。辞書の挿絵に土下座の手本として載っていてもおかしくないレベルだ。
「ど、どうしたんだ、シャティ?」
「マスター、頼みごとがあるの。聞いてくれる?」
「何?俺に叶えられるものだったら聞くけど。」
「調理道具が、欲しいからお金ちょーだい♪」
そういえば、買ってなかったな。今まで使ってたの、
肉焼き機だけだもんな。それにしても言い方、どうにかならないのか。
「いいよ。お金どれくらい欲しい?」
シャティは、うーんと、可愛らしく考えている。
「えっと・・・じゃあ、10万ジルくらい?
ダメかな?」
上目遣いをしてきた。正直、ドキッときた。
自分でもチョロすぎだろと思ってしまった。
俺は、承諾しシャティに、15万ジル渡した。
「マスター、5万くらい多いんだけど。10万ジルも少し多めに見積もったんだけど。」
「ついでに欲しいものを買うとか、お昼ご飯とか食べてこい。えーっと、これからご飯を作ってもらうからそのお給料だと思ってくれればいい。」
それを聞くとシャティは、パァと効果音が付くくらいの、眩しい笑顔を見せる。
頼み事を断りづらいところは自分でも甘いと思う。
「愛してるよ、マスター♡。ぜひ、毎朝お味噌汁を作らせてね。朝ごはんでもいいよ?」
「あぁ、ぜひ頼むよ。」
・・・アイナ、リシアどうして二人とも、何故目から光が消えているんだ。
シャティ1人では心配なのでリシアに付き添いを頼む。
ということで、今は、アイナと2人きりだ。
まだ、アイナの目からは光が消えている。
見るからに不機嫌だ。尻尾がビタンビタン床を叩いている。これはまずい。とりあえず、機嫌をとろう。
不機嫌な女の子ほど怖いものはないからね。
「あー、アイナ。俺、本を買いに行くけど一緒に行かない?」
「それって・・・はい!行きます!ぜひ行かせてください!」
ものすごい勢いで迫ってきた。
アイナ・・・ちょっと怖いよ。
尻尾は、かなりとんでもないことになっている。
感情がダダ漏れだな。
「面白そうな本がたくさんあってよかった。」
「そうですね。ご主人様。」
本屋で見かけた面白い本を大量に買った。
全部を«影収納»に放り込む。
ちなみにアイナの服は、いつものメイド服ではなく、俺がこの前買ったワンピースだった。本当によく似合っている。街を歩く人の視線を独り占めしている。もちろん、俺や女性の方も含めている。
俺はトラックの前に飛び出して『俺は死にません・・・君のことが好きだから!』と言ってしまいそうになる。
まぁ、そもそもトラックが無いんだけどね。
「これで・・・デートは終わりですか。はぁ。」
アイナが小さくそう言った。犬耳と尻尾が、へたれていて、悲しそうな顔をしている。こんな顔をさせてはいけない。シャティの件ていい、つくづく俺は彼女たちに甘いなぁ。もしかして俺は彼女たちに・・・、これは置いておこう。
「えっと・・・」
俺は精一杯の勇気を出す。コミュ障には少しキツい。
「もしよかったら、このまま街を観光しない?
アイナが嫌じゃなければだけど。」
この言い方は正直ないと思う。
本当に どうにかしたい この性格。
川柳が出来た。
その言葉を聞いて綺麗な花が咲いた。いい笑顔だなぁ。
アイナ、マジでいい子!
「あの・・・ご主人様、手を繋いではくれませんか?」
「あ?どうしたんだ?突然。」
「あ、あー、えっと・・・そうだ!私が迷子にならないようにです。ほら、私って方向音痴じゃないですか。ま、迷子にならないか、ふ、不安だからですよ!」
たしかに迷子になるといけないな。こんな美人な人が一人で歩いていたら危ない。
「いいよ。俺もアイナが迷子になるのは困るからな。
じゃあ、はい。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
アイナの手は柔らかくて暖かかった。
女の子の手を握ったのは小学校の低学年の頃以来だなぁ。
顔に出ないように、ポーカーフェイスをしたつもりだ。
そのあと、食べ歩きをしたり服屋に入って服を見たりした。いつのまに、俺はこんな幸せになったのだろう。
とりあえずアイナに言っておくことがある。
「今日はありがとうな、アイナ。」
「いえ、ご主人様、こちらこそありがとうございます。ま、またお買い物に一緒に行きましょうね。」
「あぁ、今度はリ・・・いや、また二人で行こうな。」
俺は何となくこう言った。
それにしてもアイナたちには、ドキドキされっぱなしだなぁ。元の世界ではこんな気持ちになることが少なかった。やっぱり彼女たちが可愛すぎるからかな?
もし、恋人が出来るなら彼女たちのような一緒にいて楽しい人たちがいいな。
まぁ、贅沢を言えるような人相じゃないんだけどな。
それにしても今日は楽しかった。
日記を書いていたら、書きながらこう言いたい。
『今日はとっても楽しかったね。明日はも〜っと楽しくなるよね。ハ○太郎?』と。




