大きいものを見る時は下から見る
また、途中で消えてしまったので、遅れてしまいました。
ギルドマスターのロットさんに依頼についてのことを聞いていると、意外にも時間がかかってしまい、お昼をすぎてしまった。
俺たちが乗る船は、お昼をすぎて夕方頃の船だったため、結構ギリギリだった。
ギルドから船着き場までは、かなりの距離があり、走って向かった俺は、息が上がってしまった。
一緒にギルドに行ったリシアは額に汗をほんのり滲ませている程度だったのを見ると・・・・・俺の運動不足がすごいな。
もっと、頑張らないとな。
息を整えながら、船着き場に停泊している俺たちが乗る『海洋国家プルモ』行きの幌船を見る。
「ハァハァ・・・・・はぁ・・・・船物凄いデカくないか?」
「いや、こんなもんじゃないっスか?
まだ、小さい方っスね。」
船着き場にあった幌船は、名前は忘れたが、中学の頃夏休みに見た海上自衛隊の護衛艦も尻尾をまいて逃げだすだろうな。
「なんでこんなに大きいんだ?」
「私もよくは知らないんスけど、魔法学っていう魔法を生活のためにもっとよりよく使えるようにしようを目的にした分野があるんですよ。
それによると、船はこれくらいの大きさの方が魔法による効果が最も大きいみたいっスよ。」
「へぇー・・・・・よく分からん。」
「まぁ、難しいっスからね、あっ!アイナたちがいましたよ!ほら、倫さんも、いそいで!」
俺は、リシアに手を引かれて、船の中へと入っていった。
船の中は、外見の通り木で出来ていたが・・・・・・接合跡がまったく見当たらなかった。
まるで1本の大きな木を削り取ったように見える・・・・・これも魔法によるものかな?
「ご主人様?どうかなされましたか?」
「いや、なんでもないよ。それで、部屋はどこ?」
「こっちみたいですよ。
・・・・・・あの、ご主人様。私は、今まで通りでいいのでしょうか?」
アイナは妙なことを聞いてくる。
彼女の尻尾はくたりと力無くヘタレている。
「何を言っているか分からないけど・・・・君はそのままでもいいんじゃないかな。
何を心配しているかは分からないけど、気にする必要は無いさ。」
耳に触れないように、頭を優しく撫でると、彼女は表情を柔らかくさせた。
「いやー、やっぱり嬉しいっスねぇ。」
部屋に着いて、荷物を置いた後、
唐突にリシアがそんなことを呟いた。
その表情は、頬を染めて口元に笑みをたたえていた。
「どうした?唐突に。
船に乗れることがそんなに嬉しいのか?」
俺の言葉に、リシアは、白い歯を見せてニカッと笑う。
「それも理由の一つとして、あるっちゃあるんスけど、やっぱりッスねぇ・・・・・えへへっ・・・・倫さ〜ん♪」
「おっとっと・・・・。」
リシアは、ル○ンダイブをしてきてふところに抱きついてきた。
彼女らしくないなぁ・・・・・酒でも飲んでるのかな?
今、彼女は俺の胸に、ウリウリと顔を埋めて左右に振っている。
「お前・・・・もしかして酔ってる?」
「まるで新婚旅行みたいっスね!あははははっ♪」
「あっ、ダメだ。完全に酔ってるな。
アイナ、水を用意・・・・・あれ?どこに行った?よく見たらシャティもいないじゃないか。」
いつの間にか部屋から2人は出ていっており、閉めたはずの部屋の扉はまだユラユラと揺れていた。
部屋には、酒瓶が1本、船の揺れに合わせて揺れているだけだった。
「ん、船が動き出したみたいだ。甲板に行く?」
「そうっスね。アイナたちも探しに行かないとですし。」
「あの、歩きにくいから離れてくれないか?」
「気にしたら負けっス!」
そんな感じのやり取りをしながらリシアが脇腹にくっついたままの状態で甲板に向かった。
何があるかわからないから、部屋には鍵をかけて、この鍵無くさないようにしないとな。
甲板に着くと、気持ちいい風が吹いていた。
のびをしながら船の進行方向と逆を見ると、思ったより岸から離れていた。
「えへへー・・・・あっ、倫さん。あそこにいるのって・・・。」
「あっ。」
リシアの指さした所には、海を見ている幸せそうな顔をした女性が二人いた。
頬を色っぽく染めて顔を蕩けさせながら、
2人からは幸せオーラが滲み出ているような気がする。
1人は、尻尾をプロペラ機のように震わせて、もう1人は、ほんの少し見えるエルフ耳がぴくぴくとしている。
・・・・・可愛いなぁ。
「私もさすがにあれは・・・引くっスねぇ。」
「うん・・・・すっごい表情だもんな。お前もさっきまであんなだったぞ。」
「うへぇ・・・気をつけるっスよ。」
さっきまで、ニマニマと同じような感じだったリシアも正気に戻ったらしい。
リシアと甲板をぶらりと歩いていると、どこかで見たことのある角刈りと、紫色の髪で片目を隠した女性が話をしていた。
「あっ、あれって・・・・・やっぱりそうだ。」
「倫さん、どうしたんスか?」
「あそこにいる角刈りは、俺の弟なんだよ。」
「そうなんスか・・・・挨拶をしに行きましょう!」
「そうだな。じゃあ行こうか。」
怜に近づいて挨拶をする・・・怜と話していたボーイッシュな女の人に睨まれた。
彼女は、怒りのこもった口調で言ってきた、
鋭かった目をさらに鋭くして。
「お前は、オレの怜とどんな関係の奴だ?答えによっちゃあ、オレと怜の時間を取った罰を受けてもらうぞ。」
彼女は、腰にさしたサーベルのようなものに手を掛けながら尋ねてくる。
・・・・・怖い。
怜は、笑顔でエルレオーナさんを諌めた。
「落ち着いてよ、エルレオーナ。
この人は俺の兄だよ。
兄ちゃん、紹介するよ。この人はエルレオーナさん、ほら、『迷宮都市ラカタ』でみせたエプロンをくれた女性だよ。
それに・・・・・ワタシの恋人でもあるんだよ。」
・・・お前、なに笑っとんねん、俺実際斬られそうになったんだぞ。
思わずエセ関西弁をしてしまった・・・リシアも落ち着け、いつの間にプレートアーマーを着た?
さっきまで、レザーアーマーだっただろうが。
リシアの頭のアホ毛はつんつんに立っていた。
「怜の兄なのか、お前?
そう見ると・・・若干似てなくもないなぁ。」
訝しげに俺の顔を覗くのを止めてくれよ、エルレオーナさん。
まぁ、斬られそうにはなったけどいい人そうなので自己紹介をしておこう。
気にしないことも時には大切なのさ。
・・・・・正直に言うと、怖くて思考が上手くまとまってない。
とにかく挨拶をしないと失礼だよな。
「はじめまして、エルレオーナさん。
俺は怜の兄の勝頼倫太郎って言います。
うーん、特に言うことはありませんが、これからよろしくお願いしますね。あと、横にいる彼女は、アリシア=ヘルベルトさん。俺の旅の仲間です。」
・・・・自分でも、なかなか丁寧にできたんじゃないかと思う。
俺に続いて、リシアも自己紹介をする。
「ご紹介に預かりました、アリシア=ヘルベルトっス。
倫さんの説明はちょっと・・・いや、だいぶ説明不足ッスよ。」
リシアは照れるように頬を掻きながら自己紹介を続ける。
「その・・・・私は倫さんの、婚約者っス。これからよろしくお願いします。」
いったいどういうことだろうな。リシアの頭のアホ毛がハート型をとっている。
リシアの自己紹介を聞いたエルレオーナさんが目を見開いて、驚いている。
そして、彼女は恐る恐るといった感じでリシアに尋ねた。
「も・・・もしかして、『ヘルベルト』ってあの、『ヘルベルト』か?」
「そうっスね。でも、もうすぐ名前は変わるッスよ。・・・えへへっ。」
なんだかよくわからない会話をしているな。
そんなリシアは、いつもの笑顔よりほんのり頬が上がってた。
・・・・・頭を撫でておこう。
「・・・なるほど理解した、これからはあなたのことをアリシア義姉さん、と呼ばせてもらうぜ。・・・・良かったな、お前。」
エルレオーナさんは、俺をキッと激しく睨みつけながらそう言った。
俺なんかしたか?
「そう言えば、アリシアさんは第二夫人って言ってるけど、前に見たあの小さい子と、第一夫人さんはどこにいるの?兄ちゃん?」
すっかり蚊帳の外にいた怜が聞いてくる。
ニヤニヤ笑顔で。
「教えてやるよ・・・ほろ、あそこにいるだろ。あそこでボーッと海を見てる娘たちだよ。」
「うん?どれ・・・・あぁ。何があったのあれ?」
何があったと言われてもねぇ、説明出来ないよ。
「あの2人は今になって、倫さんにプロポーズを受け入れられた嬉しさでああなってるんスよ。
しばらくすると、元に戻ると思うッスから。」
リシアは、頭を撫でられながらそう言った。
あれ、いつ戻るんだろうな。




