用意周到
そろそろ、長かったこの章も終わりです。
屋敷の扉に手をかける。
アイナたちにギルドマスターのロットさんの件について話さなければいけないのか。
・・・・屋敷の扉こんなに重かったっけ?
屋敷の扉を開けると、アイナがいた。
彼女は、優しく微笑みながら、『おかえりなさい、ご主人様。』と言ってくれる。
その笑顔を見ると・・・・俺の心の中のモヤモヤが少しだけ解消されたような気がした。
頭の上に乗っているココが、注意してなかったら、ずっと見続けていただろう。
「ただいま、アイナ。」
「それで、ギルドマスターさんの話はどんなものだったんですか?」
アイナは俺が着ているスーツの上を脱がして、軽く畳む。
「ありがとうアイナ。やっぱりスーツは苦手だよ。ネクタイが特にキツいね。少し息苦しいよ。
あと、ギルドマスターさんの話の内容は、夕食を食べた後にでもみんなに話すよ。」
「承知しました。」
みんなの食事も終わり始め、アイナがチラリと視線を向けてくる。
言わなければいけないのか・・・・・。
『ただ、お前は言われたことを繰り返すだけだ。もっと楽にしておけ。』
・・・・・フゥ・・・ヘルプ機能さん。
それが難しいんだよ。
「みんな・・・食べながらでいいから聞いてくれ・・・・。」
俺が話終わると、彼女たちの顔は暗かった。
リシアが、グイッと酒を飲み干した。
「倫さん。貴方は私たちにどうして欲しいっスか?」
いつもの明るい笑顔ではなく、射殺すような目付きに少し驚いた。
さらに彼女は口を開く。
「貴方が、私たちに着いてこいと言えば、私たちは喜んでついていきます。しかし、貴方が来るなと言えば着いていきません。大人しく待っています。
貴方は、どちらを望むのですか?」
いつもの軽い口調ではなく、例えるなら尋問官のような問い詰める話し方に・・・・・俺が選ぶのか。
「・・・・・今、この場では答えを出すことが俺には出来ない。」
「・・・・・・なら3日、3日あげます。
その期間内に答えを考えて、私たちに言ってください。」
「分かった。」
「それじゃあ、お願いっスね。あっ、洗い物は私たちがしておくので、倫さんは休んで構わないっス。」
俺は、少し影があるように見える彼女の笑顔を見ながら、言葉に甘えさせてもらって部屋に戻った。
「はぁ・・・・彼女たちにどうして欲しい・・・か・・・・俺はどうして欲しいんだろうな。」
ベッドに体を預けながら誰に言うわけでもなく声を出す。
そのまま、俺は意識を手放した。
・・・・・うん?なんだ?誰かが部屋をノックしている?
寝ぼけまなこで部屋にある時計を見ると・・・・まだ朝と言うには早すぎる時間だった。
こんな時間に誰だ?
ドアを開けると、俯いているアイナがいた。
「アイナ?」
「すいませんが部屋の中にいれてもらえませんか?」
「うん、いいよ。」
彼女は俯いたまま部屋の中に入る。
「それで、どうし・・・・・アイナ?」
いつのまにか俺の背中に抱きついていたアイナ。
彼女の体はいつも・・・いや、いつも以上に温かく感じた。
しばらく抱きついたままにしていると、彼女は、掠れるような声を出し始めた。
「(ご主人様は、私たちが一緒に行くのを嫌がったら、自分だけで行くとおっしゃっていましたけど・・・・・・私たちが本当にアナタと離れ離れになりたいと言うと、思っていたのですか?)」
「・・・・君たちがこの街に残りたいと言ったなら俺だけで依頼をこなしてくるつもりだった。
俺は、人の意見を尊重したい。
」
その言葉を聞くと、本当に悲しそうに声を出していた彼女の、俺を抱きしめる彼女の力はほんの少し強くなった。
そして、彼女は、俺から離れて俯いていた顔を上げた・・・少し暗いあかりに照らされた彼女の顔は・・・・目が真っ赤になっていて、目元は赤く腫れていた。
まだ目尻にはキラリと光る何かがある。
「・・・どうして泣いているんだい?」
ここで、俺はこの言葉を言うべきではないのだろう。しかし、気がついたらそう言っていた。
彼女は、そのまま体重をかけるように俺の胸に頭を付けた。
そして、小さな子がだだをこねるようにに両手で交互に胸ぐらを叩いた。
「そんなの!好きな人と離れ離れになるかもしれないと思ったからですよ!
私たち・・・・シャティちゃんやリシアちゃん、私がアナタのことを好きなくらい、頭の良いアナタなら分かっているんじゃないですか?
・・・最近よく、アナタは傷を作って帰ってきます。
いくらアナタのスキルで大抵の傷が塞がるからといっても、自分の好きな人が傷を作って帰ってきたら誰だって心配しますし、出来るなら傷を作らないでほしいって思います!」
アイナは自分の気持ちを吐き続ける。
「・・・いいですか?ご主人様。
・・・怪我をしたら、自分には痛みがあります。ですが、自分には痛みだけです。
しかし、周りの人には、心配と本人の痛み以上の心の傷をつくるんですよ!
その事をアナタは理解してください!」
さらに、彼女の俺の胸を叩く力は強くなった。
「・・・苦しいんですよ。
自分の好きな人が傷つくのを見るのは。」
「アイナ・・・・。」
彼女は今まで我慢してきていたのだ。彼女は、賢い人だ。自分の気持ちを話すことはあまりしない。特に辛いことについては。
・・・先日彼女が酔った時に言っていたのは彼女の本音の1部なのだろう。
その我慢していた感情が今回爆発したのだ。
・・・彼女の心からの言葉に俺はどう返せばいいのだろう。
・・・・この場合は・・・謝罪の言葉じゃないと思う。
「ありがとう、アイナ。俺のことをそこまで想ってくれて。」
その言葉を俺が言うと、彼女はさらに体重をかけてきた。
そして、叩いていた手を止めて、またぎゅっと抱きついてきた。
俺も同じように彼女を抱きしめた。
そして、今度は少し声をあげて泣いた。
それから俺は、彼女が泣き止むまで抱きしめていた。
どのくらいの時間抱き合っていたのだろう。
1分かもしれないし、1時間かもしれない。
ようやく気分が落ち着いたらしく、彼女は、俺から離れた。
そして、顔を上げて笑顔を見せてくれた。
しかそ、その笑顔はいつものように明るいものではなく・・・・・ぎこちのないものだった。
「ご主人様、落ち着きました。
朝早くから申し訳ありません。それでは、失礼します。」
アイナはそれだけ言うと、部屋を出ていった。
・・・・・・俺は・・・・。
約束の3日が経った。
俺は、彼女たちへの答えを出すことが出来た。
たった3日で出せるのかと言われるかもしれないが・・・・彼女の、アイナのあの時の顔を見てすぐに出すことが出来た。
朝ごはんを食べ終わると、リシアがニコニコと俺の顔を見ていた。よく見ると、隣にいるシャティも同じような顔をしている。
「ご主人様、私たちに話すことがあるんじゃないですか?」
「そうっスよー。隠し事は無しっスよ?」
2人は俺が答えを出したことが分かっているようだった。
「ご主人様・・・・。」
アイナも俺を見ているが、少し不安そうだ。
「・・・ギルドマスターさんに次の街に行ってくれないか?と言われました。
それで、次の国に行こうと思っているんだけど・・・一緒に来てくれるかい?」
俺の言葉の返事に、3人は、笑顔で声を合わせて、『もちろん!』と言ってくれた。
「それじゃあ、準備してくるよ。」
「私も、持っていくものはほとんどないっスけど、準備してくるっス。」
「今すぐ、出発するわけじゃないぞ?」
2人は首を傾げて、何を言っているんだ?みたいな表情をする。
「ご主人様。
すでに船のチケットもとってありますし、私たちもつぎの国に行く準備も済ませてありますよ。」
・・・・準備がいいね。
シャティとリシアの2人は、そのまま自分の部屋へと走っていった。
アイナは今も俺の横に座っている。
「あれ?アイナは準備しないの?」
「あっ、そうですね、私も旅の準備をしてきますね。」
彼女はそう言って、自分の部屋がある2階への階段の方へ走っていった。
さて、シェラたとにも、このことを言わなくちゃなぁ。
屋敷の中を探し回るのも面倒なので、«マップ»を使って4人の場所を調べる。
・・・4人とも庭にいるのかー。狐っ娘三人衆は畑仕事をしているのは分かるけど、ラータは何をしているんだ?
まさか、畑仕事・・・ってそりゃあないか。
シェラたちに伝えに行こうと玄関に向かうと、アイナが追いついてきた。
慌てていたのか少し息が上がっている。
「そんなに慌ててどうした?」
「ご主人様は、三日前、私たちの意思を尊重すると言いましたね?」
「あぁ、言ったよ。俺に君たちがしたいことを止める権利はないからね。
まぁ、危ない行為とかには注意くらいはするけど。」
俺の言葉を聞くと、アイナは少し悪そうに笑った。
そして、彼女は俺の目の奥を見つめながら、言葉を続ける。
「・・・ではご主人様。私のしたいことにご主人様の力が必要と言ったら、手伝ってくれますか?」
「うん?あぁ、もちろんだよ?でも、俺の力で出来ることならね。」
「はい、それはあなたの力でも叶えられることです。ご主人様、あなたは約束をキチンと守ってくれる人ですか?」
・・・なんだろう、さっきから、まるで尋問されているような気がする。
それこそ、言質をとるかのようだ。
「もちろんだよ。俺は、『出来ない約束は絶対にするな。しかし、1度した約束は何があっても遂行または、守れ。』ということを座右の銘にしているからな。」
彼女の笑顔が・・・・なんだろう・・・急に怖さが出てきたな。
「では、ご主人様。これから、私のお願いを言います。絶対に叶えてくださいね?」
晴れやかな笑顔?で彼女は言葉を出す。
その言葉は・・・・。
最後の方が少し無理矢理になってしまいました。
いずれ改稿します。
あと、次回更新は少し空きます。
理由は、ストックが足りないのと私に少し忙しい用事が入るからです。




