テレビから出てくる系溶けた餅
短くなったような気がします。あと、そろそろこの章も終わりに近づいてきました。
「あっ、ご主人様、ちょっと待ってて貰えますか?着替えてきますので。」
「あぁ、もちろんいいよ。」
アイナは寝巻きから着替えるために、自分の部屋へと走っていった。そう言えば、彼女のパジャマを見るのは久しぶりだな。大体いつも気づいたらメイド服だからな・・・・別に、メイドだからってメイド服じゃなくてもいいんだが。
「お待たせしました、ご主人様。」
「・・・・へ?・・・・うわっ!早くないか?着替えるの。」
彼女は、2回に上がって1分もしないうちに着替えて戻ってきた。もちろん、メイド服に着替えて。
いや、普通に考えて無理だろ。
「そこは・・・ほら、メイドの嗜みですよ。」
キリッとした真顔で、言ってくるが・・・・いや、考えるのをやめよう。メイドの嗜みったら、メイドよ嗜みなのだ。
全く関係ない話だが、この世界の人は基本的に化粧は薄めである。メイクをしなくても、あまり変わらないらしい。メイクをするのは、40を超えてからシワを隠す程度のメイクが最大で、あまりけばけばしい人は少ない。夜の蝶・・・夜の蛾
俺とメイド服のアイナは、2階の一番端の部屋、俺の部屋やリシアたちの部屋の方とは反対側のラータの部屋の前に来た。
俺とアイナは互いの目を見てうなづき合う。
俺は優しく扉をノックする。
「おーい、ラータ生きてるかー?」
「ご主人様、ラータちゃんは幽霊ですよ。」
そう言えば、そうだったな。
少し時間をおいて再度ノックをしてみたが、全く中からの反応がない。
「ど、どうする?アイナ。」
「どうしましょうか?」
これは、まさか・・・・部屋の中には、死体となったラータが・・・それは嫌だなぁ。
「だからご主人様、ラータちゃんは幽霊ですから、死体にはなりませんよ。」
どうやら、顔に出てたらしく、考えを読まれてしまった。それにしても、大丈夫なのか?
どうしようかと、アイナと相談していると、扉がホラー映画のようにゆっくりと、キィと音をたてて開いた。・・・・この屋敷のドアは立て付けが良くから、こんな音ならないはずなんだが。
その中からは、某ホラー映画のテレビから出てくる系ヒロイン・・・・あの人はヒロインと言えるのか?・・・・・とにかく、あの人みたいな感じで、部屋の中からラータが、上半身だけ出して、今にも死にそうな顔をしている。わかりやすくいうなら、徹夜明け・・・いや、鬼畜ゲームを終えた時のような顔だ。
「だ、大丈夫か!ラータ・・・お前、目が死んでるじゃないか!どこかに衛生兵はいないのか!」
「ご主人様、それは、彼女にとっては元々で・・・しかも、あなたは人のことはいえませんよ。」
少し、ふざけすぎたからしく、ちょっと、アイナの言葉に怒りの感情が出てきた。彼女の柔らかそうな尻尾は、ピンと逆だっている。
俺がアイナの尻尾もふもふしたいなぁと、いらないことを考えていると、ラータは、ゆっくり、ズルリズルリと這いずってきて俺の足にひっついてきた。まるでホラー映画とかでよくある、部屋の中とか沼の中に引きずり込まれるシーンみたいだ。
「・・ご・・・」
ラータは、死にそうな顔で、何かを言っている。彼女の声はか細く、擦り切れそうで、何を言っているか分からない。だが、何かを必死に伝えようとしている。
「ごめん、ラータ。今なんて言ったんだ?もう少しはっきりと言ってくれ。」
死んだ目で俺の方を見ながら最後の力を引き絞るようにラータはその言葉をだす。
「ご・・・・・・ご飯くれんか?旦那はん。お腹がすいて力が出ないんや。」
それを言うと、彼女は、力尽きた。いや、死んでないんだよ・・・あっ、既に死んでいるんだけど・・・あぁ、もうややこしいな。
「ご主人様、シャティちゃんから渡されたものを出してください。」
「あいよ・・・パッパカパッパッパーッパッパー、シャティ謹製サンドイッチィィィ!シャティの料理技術は世界一ィィィ!!!」
俺は、«影収納»から、シャティが作ってくれた彼女用のサンドイッチを出す。彼女も、具材はアイナと同じ、肉である。実に肉々しいサンドイッチである。
「これやこれ!いただきます!」
・・・俺がサンドイッチを«影収納»から出すと同時に彼女はそれをひったくって部屋の中に入っていった。部屋の中からは、ホラーな音が響いている。うへぇ、掃除が大変そうだなぁ。
音が止むと、扉を開けて、顔中がソースまみれになったラータが出てきた。ある意味化粧だな。
「いやー、まいったよー。お布団を作ってたら、夢中になり過ぎて、ご飯食べるの忘れてたんや。食べてたんだけど、量が少なくてね。いやー、死ぬかと思ったよ。」
「それは良かった。本当に死ななくて、良かったなぁ。命あっての物種だからな。」
「そうやなぁ、今度からは気をつけるわ。死なないように。」
「死なないよう気をつけろよ。」
俺とラータは、顔を見合わせて、2人して大声で笑った。ちなみに、この後アイナに『だからラータちゃんは幽霊でしょうが!』とツッコまれたのは言うまでもない。
とりあえず、俺は«水魔法»で作ったお湯と、«影収納»に、入っていたタオルでおしぼりを作ってラータの顔を拭う。彼女は、むず痒そうに顔を離そうとする。
あー、あー、服にまでソースがついてるじゃん。これは・・・風呂に入れるしかないなぁ。
「アイナ、悪いんだけど、コイツを風呂に入れるからコイツの部屋から、着れそうな服を持ってきてくれ。」
「承知しました。失礼しますね、ラータちゃん。」
「ありがとうな。ほれ、行くぞ!」
「あんまり揺らさんといてよ。ご飯を食べたばっかりだから。」
俺はラータを小脇に抱えて、ふろ場に持っていく。・・・・彼女の髪は長すぎて床を掃いている。
ふろ場について、彼女を脱衣所にある長椅子に座らせて寝かせて、先程も使った«水魔法»で風呂を入れる。普通に水を入れて湧かせてもいいんだが、時間がかかる。あんまり時間をかけると、面倒だからなぁ。しかも、こっちの方が早い。温度は42度くらいかな。微調整が難しいな。
俺がお湯を貯め終わるのと、アイナがラータの服を持ってくるのは同じだった。パジャマである。そう言えば、ラータは、パジャマしか持ってない。彼女が言うには、「小生は外に出られへんから寝間着以外に必要ないんや。」と言っていた・・・・・・あれ?その寝間着はどこで買ったんだろうな。外に出られないよな?
「ご主人様、持ってきました!どこに置いておけばいいですか?」
「じゃあ、そこに置いといて、あと、つぎにラータを脱がしてくれ。、そいつ、ほっておいたら絶対に着替えないから。
・・・・いや、というか、そこの溶けた餅を風呂に入れておいてくれ。あと、出来るなら体とかも洗ってやってくれ。」
おれは、大文字で床にへばりついているラータを指さしながら言う。ラータは、まるで重力に逆らうのが馬鹿らしいと言っているような態度だ。
「はい、ご主人様。承知しました。」
嫌な顔せず引き受けてくれた。さすがアイナ、とてもいい子である。彼女は、ラータの服を脱がしにかかっている。・・・・本当に重力に抵抗しないんだな、ラータは。
「いつもありがとうな、アイナ。君はいいお嫁さんになるよ。」
「はい、ありがとうご・・・えっ!お、お嫁・・・。」
「ぐえっ、痛い。もう少し、丁重に扱ってほしいな。」
アイナは、ラータをバンザイさせて服を脱がしていたのだが、彼女顔を手で隠したせいで、ラータは柔道の受け身の練習をすることとなった。中途半端に起き上がっているからそうなるんだよ。
・・・というか、俺は出ていかなきゃダメだな。
俺は、家の玄関に«影転移»をする。
シェラたちを待たせてしまったから、謝っておかなきゃなぁ。
・・・・勝瀬倫太郎が風呂場から出ていったあとには、顔を真っ赤にして、尻尾をフリフリと揺らして、絶賛かりち○まガード中のアイナと、胸のところに服が引っかかってお腹丸出しの、溶けた餅ことラータの2人がお互い違う理由で悶絶していた。
「お、およ・・お嫁さん・・・えへへへへ・・・。」
「頭打ったんやけど、そんなことよりアイナはん、早く着替えさせてくれー。腹がー腹が冷えるゥ!」
・・・混沌な空間がそこにはあった。アイナが戻ってくるのにはまだしばらく時間がかかるようだ。




