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終わらないファミレス

作者: 川瀬 七貴

 「もう終わりにしないか」

ずっと黙って俯いていた彼が、やっと口を開いたと思ったら、そう、そんな事言うのね、あなた。

「無理よ」

「えっ」

私の即答っぷりに動揺が隠せない彼。

「終わりになんてしないわよ」

「で、でも」

「でもも、クソもじゃがりこもあるかよ。あ、じゃがりこはあるわね、美味しいわ、あれ」

「あ、う、うん、そうだね」

「ありがとう、意見が合致して嬉しいわ」

笑顔で返したのにも関わらず、彼は視線を反らしやがった。

「兎に角、終わりなんて私は認めませんから」

私達の会話を聞いているのか、先程から店員がこちらをチラチラと盗み見ている。

(ファミレスバカンスなんて名前の癖に、全然ここの店員、気が緩んでないじゃない!バカンスなら、もっと油断も隙も或る感じでぼーっと突っ立っていなさいよ)

「でもさ、ここの店、メニューが800種類もあるんだよ。全制覇なんて無理だよ」

「無理じゃないわよ。私の胃袋にはまだ若干のスペースが残っているわ」

「そうじゃなくて、金額的に・・・キミ、お財布に幾ら入っている?」

「入ってないわ」

「えっ!?」

「私の財布はダミーよ。中身など無い」

「ああ〜絶体絶命だ」

頭を抱え込みうな垂れる彼。

「待ちな、諦めるにはまだ早いわよ」

そう言うと、私はドリンクバーから空のコップを取り、床に置くとその前で正座をした。

「はいはい、お賽銭箱はこちらだよ〜。投げ銭プリーズアフターミー、ほれほれ、ここにお金をちゃり〜んって入れてごらん〜」

一名の店員と私達しか居ない店内。この作戦は確実に失敗だ・・・ろう。

「あの・・・お客様」

まるで不発弾を見つけてしまった様な表情で私に店員が話し掛けてくる。

(不発弾か、うまい事言うじゃねーか。ってこれ、私か。なんだ、つまんねー女だなお前)

「飲食代はご自身でご負担をお願いしたいのですが・・・当店に金銭を要求して、そのお金をうちに支払われても・・・」

「気付いた?あなた賢いわね、ねぇ、そう思わない、あなた」

振り向くと彼の姿がない。野郎てめぇ、逃げやがったな。仕方ない、こうなったら奥の手や。最終手段としてポケットから取り出したのは、スマホ。

「あ、もしもし〜警察ですか?助けて欲しいんですけど。私このままじゃ無銭飲食で逮捕されそうなんでその前に私を抱きしめて・・・あ、違う、何かして助けて下さい」

切られた。

(悪戯と思われたのね。ちくしょう、私の渾身の愛の告白が・・・)

あ、今度は店員が警察に電話している。あー、そしてその女からの電話なら来るのね、そう、そういう態度を取るの。

程なくして、外ではパトカーのサイレンが鳴り響いていた。これぞまさに絶体絶命ってやつか。



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