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第一話『ごっこ遊びとJKパンチ』

「勇者よ! よくぞ並み居る強敵を退け、この魔王の玉座へと到達した! まずは褒めてやろう!」


少し紅く染まり始めた夕暮れ空の下、男の声が響き渡る。


今日の日付けは7月14日。

時刻は夕方の6時30分。

部活の終わった高校生がボチボチ帰宅する時間だろうか。

7月中旬の空は、この時間でもまだ明るい。

あと数日もすれば訪れる夏休みを前に、全国の学生達がウキウキし出す季節だ。

「夏休みは始まる直前が一番楽しい」なんて言う人間もいるが、アナタはどうだろうか。

学生さんは去年の事を、社会人さんは学生時代の事を思い出してみて欲しい。

大学一年生の俺、山田ヒロシは…それどころではなかった。


なんせ俺の眼の前には『魔王』が立っているのだから。


「ククク…。恐怖のあまり声も出せんか…?」


尊大な態度で、ソイツは恐ろしい笑みを浮かべる。

『魔王』を名乗る謎のメガネ男は、その手に持つ『暗黒魔杖レヴァテイン』を軽く撫でた。

その杖は禍々しいオーラを放ち、その先端は人間の手を思わせる様な恐ろしい形をしている。

その杖の事を、俺はとても良く知っていた。

そう、あの杖の名は『レヴァテイン』。

見間違えようハズもない。


だってアレ、俺のじいちゃんの孫の手だもの。


84年もの歳月を生きてきた我が家の大長老をして「その絶妙なかき心地にやみつき」と言わしめる、その杖の性能はまさしく『魔杖』の名に相応しいものだ。


「クッ…! アレがかつて神によって封印されたという、伝説の魔杖『レヴァテイン』だと言うんデスノ!? 不味いデスワ勇者様! あの杖がある限り、正面から挑んでも勝ち目は無いデスワヨ!?」


なんともうさんくさいお嬢様口調で、俺に向けてアドバイスをしてくるソイツは、オレの許嫁でありエルフの姫様でもある魔法剣士の美少女だ。

そんなエルフ姫はなんとも扇情的な格好をしていた。

『ビキニアーマー』というものらしい。

巨乳設定であるらしいその体は、ほとんど肌が隠されておらず、鍛え上げられた胸筋と腹筋がモロに露出し、非常にセクシーである。

エルフ特有の美しい金髪は、夕日を受けて美しく輝いている。

さすがはエルフの姫君だ、その髪の美しさたるや、アメリカ人もビックリである。

そんな事を思っていた時、少し強い風が吹いた。


その風に攫われるように、彼女の美しい金髪はどこかに飛んでいった。


「「……。」」


魔王と俺は、夕焼け空の下、遥か彼方へ飛んでいく金髪の塊を無言で眺める。

その光景はどこか幻想的で、どこか儚く、そして諸行無常を感じさせた。


「……。」


一瞬して、自慢の金髪を全て失ったエルフ姫は、つるっつるのハゲ頭を夕日で輝かせながら、「なにか文句あるか?」とでも言うように、堂々とその場に立っていた。


「…………。ほほう、美しきエルフの娘よ! その尋常ならざるオーラを放つ鎧は、足を踏み入れる事を固く禁じられていると言う『禁断のダンジョン』に封印されし『禁断魔装カエデ・ノシターギ』か! 面白い! 面白いぞ美しきエルフよ!!」


何事も無かったかのように、魔王はエルフハゲの防具に対して反応を見せる。

そう、無敵の魔王をして「尋常ならざるオーラ」と言わしめる、『禁断魔装カエデ・ノシターギ』はその名前の通り、禁断の装備である。


だってアレ、俺の妹、山田カエデ(16)の下着だもん。


禁断も禁断である。

「最強の装備を見つけて来マスワ!」とか言って俺の部屋…もとい勇者軍の拠点を飛び出していったハゲエルフが、立ち入り禁止区域である俺の妹の部屋…もとい『禁断のダンジョン』から満面の笑みで持って帰ってきたのだ。


世間ではこの行為を『下着泥棒』と呼ぶ。


「さて勇者よ! キサマごとき矮小な存在、今直ぐに消し飛ばしてやってもよいのだが、それではここまで長い旅をしてきたキサマが余りにも可哀想だ! ゆえに、一つ取引の提案でもしてやろう!」


ハゲエルフから俺へと視線を戻した魔王が言った。


ここまでの道のりは、確かに長く険しいものだった。

我が家の玄関…もとい『始まりの扉』から冒険を始めた俺達は、長く苦しい旅の末、ようやく我が家のベランダ…もといこの『魔王の間』にたどり着いたのである。


その距離、なんと直線距離にして6メートル。

時間にして5分という、途方も無く長い旅路だった。


「取引ですって!? 勇者さま! 耳を貸しては駄目デスワ! どんな狡猾な罠が隠されているか分かりませんデスワヨ!?」


ふむ、確かにハゲエルフの言う通りだ。

メガネの奥から伸びる魔王の視線は実にいやらしく、粘つく様なモノだ。

その視線の気持ち悪さは、まるでハタチを超えて未だ童貞のアニメオタクのソレを思わせる。

まさに今この瞬間も、妹の下着…もとい『カエデ・ノシターギ』に身を包んだハゲ…もといエルフ姫の、まるで高校生のころまで陸上部に所属していた男子大学生のような、鍛え上げられた肉体を舐め回すように見ているに違いない。


そんなヤツが持ちかける取り引き等が、ロクなものであるはずがない。

でもまあ一応聞いてみるか。


「取り引き…だと? ふん、受けるつもりは ”毛頭ない” が、一応聞くだけ聞いてやる! 言ってみろ魔王!!」


「おいちょっと待てヒロシ。オマエ「毛頭ない」ってソレおれの頭の事言ってる?おれの頭バカにしてんの?」


「…ハゲエルフはちょっと黙っててくれ」


「ハゲじゃねえよ!! 剃ってんだよ!! 実家が寺なんだよ知ってるだろ!? ハゲってのは毛根が自然に死滅しt」


「分かった分かった! 謝るからちょっと静かにしてろハゲ!! 話が進まん! 妹帰ってきちまうだろうが」


「ちっ…! オマエ後で覚えとけよ…?」


「…続けていいかな?」


「おっとすまんマナブ…じゃなかった魔王! 話を続けろ!!」


「…よし。勇者よ!! おとなしく我が配下になれ! 今ならこの家の敷地の半分をオマエにくれてやろう! どうだ? 悪い話ではあるまい?」


魔王がそのメガネをいやらしく光らせながら、そんな取り引きを持ちかけてくる。

俺にとってどうだかは知らんが、この家の家主である俺の父にとっては確実に悪い話である。

そういう話は、しっかりと父に確認を取ってから進めて欲しいものだ・


「断る!! 誰がキサマの配下になんぞなるか!! おとなしく正義の断罪を受けるが良い!」


「ふん! やはりそう来るか勇者よ! よかろう相手をしてやる! さあ、この『魔杖レヴァテイン』と対をなすと言われる伝説の武器、『聖杖アロンダイト』を抜くが良い! キサマもろとも叩き潰してやろう!!」


そう言うと、魔王は底冷えするような魔力を放出した。

…少なくとも、放出した様な雰囲気はあった。


「よかろう。 天使の遺跡より発掘された、この『聖杖アロンダイト』の力、受けてみろ!!」


そう叫び、俺は腰に下げられた無駄に可愛らしいデザインの杖を抜き放ち、魔王に向け、指先に力を込める。


「聖なる杖よ!人々の願いを力に変え、悪を滅ぼせ!!『セイクリッド・スター・バースト』!!」


『キュルル~~~ン☆ バシューン☆ マジカルミラクル☆ プリピュアパワ~~☆』


俺の詠唱に反応し、ピンク色の杖から可愛らしい電子音と共に、聖なる魔力が放出された。


「ぐわああああああ!? なんだ!? なんだその力は!! 認めぬ!! 認めぬぞおおおおおぉぉぉ…!!」


杖から放出された聖なる魔力により、魔王の邪悪なる体は崩壊を始めた。


「ぐ…! ぐぐぅ…! たとえ我が滅びようとも、第二第三の魔王がキサマをかならz…….あの…俺は悪くないんですホントすみません。なんていうか、巻き込まれたっていうか…」


捨て台詞を残し、今にも消えようとしていた魔王が、俺とハゲエルフの後ろに何かを見つけると、その凶悪な顔を真っ青にし尋常ではない量の汗を流しながら、何者かに向かって謝り始めた。


「……神よ」


何事かと後ろを振り返ったハゲエルフは、その顔から表情を消すと、まるで悟りを開いた高僧の様な雰囲気を纏った。さすがは寺の息子である。


「……。」


2人の表情、そして腕時計が指し示す時間、更には背後に感じる圧倒的な憤怒のオーラから、俺は全てを察した。

ゆっくりと背後を振り返り、努めて爽やかに言う。


「おかえり…カエデブベッッッ!!!」


妹の黒髪ツインテールが可愛らしく揺れ、俺の体は空を飛んだ。

俺は普通の人間だ。

翼も持っていないし、魔法も使えない。

しかしその瞬間、俺は確かに、空を飛んでいた。


ああ…夕焼け空が綺麗だ。


宙を舞いながら、徐々に薄れゆく視界に映ったモノは、

腹を抑え白目を剥いているハゲと、

今まさに、見事なハイキックが直撃した哀れなメガネの姿だった。


喧嘩両成敗。


激しく争った勇者と魔王は、突如現れた黒髪ツインテールJKの姿をした武神により、仲良くその生命を散らしたのであった。

下着泥棒はハゲエルフなのだが、まあ連帯責任というヤツである。


アホな男子大学生3人組は、仲良く意識を失い、この世界から旅立った。


そう、黒髪美少女女子高生のパンチが、彼らを異世界へと送ったのである。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


人物紹介


山田ヒロシ 20歳 普通の男子大学生 特徴のない黒髪と、特徴のない顔と、特徴のない性格が特徴。一人称は「俺」。勇者役のアホ。


伊藤マナブ 20歳 茶髪のメガネでヒロシの同級生。広く浅く、いかにも最近のオタクって感じのメガネ。一人称は「オレ」。魔王役のアホ。


西寺リキヤ 20歳 ハゲの細マッチョでヒロシの同級生。趣味は筋トレで、実家が寺なハゲ。一人称は「おれ」。エルフ役のハゲ。


山田カエデ 16歳 黒髪ツインテJKでヒロシの妹。剣道、柔道、合気道、弓道と、およそ「武道」と名の付く技術はその全てを習得しており、どの道においても有名道場の師範代レベルの実力を持つ武の化身みたいな女子高生。最近はお菓子作りの練習に励んでいるけど恥ずかしいので誰にも言わない。



最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。


初投稿作品と言うことで、粗の目立つところがあるかと思いますが、

少しずつ勉強していくつもりですので、よろしければ第二話の方もよろしくお願い致します。


感想なんて貰えてしまった日には、その喜びで1ヶ月は生きていける自信があるので、

もし、本当にもし宜しければで良いのですが、感想を心からお待ちしております。

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