gossip*error②
★
中学ん時の勘違い。
あいつの「特別」になりたくて…
ずっと…。
★
「千早って…慣れてるよね」
いきなりの、ふうこの言葉に俺は飲んでいたジュースを吹き出しそうになる。
「…何がだよ」
「別に…。ってか千早顔赤いんですけど」
☆
千早と私は一応付き合っていると思う…たぶん。
中学の頃、変なあだ名をつけ、からかってきたあいつ。
1週間前にようやく両想いになったわけで。
だけど…なんか、心の奥、もやもやがある。
千早は茶髪にピアス、見た目ちゃらいかんじだから、男友だちには「たらし」なんてよく言われてる。
千早は女の子にも変わらずに接する。
男女で差がないことは、いいところだと思う。
けど…また3組のともちゃん来てるし…。
付き合う前と何にもかわらない日常。
★
慣れてるってなんだよ。
べつに、そんなことねぇし…。
ありえない状況に俺はとまどっている。
隣のクラスの、山田卓也となぜか一緒にいるからだ。
気まずい…。
「斎藤って、正直俺のこと、嫌いだよな」
俺から渡された、包みを受けとった山田の思いがけない言葉に、つまる。
「や…別に、嫌ってなんか…」
ほんとはあんまよく思ってねぇんだけど…
んなこと言えねぇし。
「まぁ、俺はお前のこと嫌いだけどな」
は?
ふざけんなよ。
だから嫌だったんだよ、なのに風子の奴が頼むから…。
★
昼休みのことだった。屋上でヤスたちと飯食ってたら、小さな包みを持って風子がやってきた。
「何どうした?」
風子は息を切らしていた。
「やっとみつけた~、悪いんだけどこれ、卓也に渡してくんない?」
なんで山田?
「なんで俺が?つか何それ?」
「探してたんだけど、1組にいなくて。私放課後、委員会だから渡せないし。千早、次合同だから会えるでしょ」
予鳴がなる。
「ヤバイ…じゃあ、お願いね」
いったいなんなんだ?
★
で…今に至る。
「ふうこが俺に何…」
山田は包みをあけ、メッセージカードらしいものを見る。
!?
なんだ?いったい…
山田は笑っていた。もちろん声に出してじゃねぇけど、なんつーかこいつのこんな柔らかい表情初めてみる。
「お前それ何?笑顔マジこぇんだけど…」
やっべ、怒らしたかも。
「じぁ…俺行くから」
用件は済んだし、立ち去ろうとするけど…
「斎藤、風子に言っといて」
何が?俺は振り返る
「手作りクッキー俺もらったことないから、すげぇ嬉しいって」
は?
「そんだけ、じゃあな」
俺を残して、あいつは言うことだけ言って去っていった。
☆
放課後の屋上。
千早はほぼ毎日バイトが入っている。
2人とも帰りは逆方向だから、千早のバイトの時間までここで過ごすことにしている。
ちょっと嬉しい2人の時間。
この時間が付き合う前と変わった唯一のことかな。
けど、千早はどこかぼんやりしてる。
「千早、疲れてる?」
「いや…別に」
千早ってあんま弱音吐かない。以前もすごく顔色悪いのに、無理してたりして…心配。でもね…私の知らない…千早にとって頑張らなきゃいけないってものがきっとあってね、
だから心配だけど、何も言えないんだ。
★
「あ…あのさ、山田がなんかクッキー嬉しいって言ってた、手作りって…」
俺が言うまで風子はすっかり忘れていたらしい。
「あ~、そうだった…そっかぁ、卓也喜んでたんだ、良かった、千早渡してくれてありがとね」
嬉しそうに微笑むふうこ。
なんでさ…あいつにやったの?
ガキくさくて…そんなこと聞けねぇか…。
「よかったな」
俺も笑って返した。
★
昼休み。屋上で結城、ヤスたちとだらける。
腹もいっぱいになって眠いし…。
ここんとこ、バイト忙しかったからな…
「なぁ、千早」
「何?」
ヤスが真剣な表情で俺を呼ぶ。
「千早はマジでふうこと付き合ってんの?」
あれ?俺、こいつらに隠してねぇし、前に言ってたんだけどな。
「そうだけど、何?」
「ほら、やっぱちゃんと付き合ってんじゃん、だから言っただろ、結城」
ヤスと結城の言ってる意味が分かんねぇんだけど。
「いや…なんかさ…なんか千早と風子ってそういうイメージなかったからさ…」
思ったことをはっきり言うヤス。
「ほら、お前モテるしさ、風子は山田とずっと仲良かったじゃん、俺らてっきり山田と付き合ってんだと思ってて」
慌ててフォローする結城。モテるってことでごまかそうとしてっけど…全然フォローになってねぇし。
「山田とはなんでもねぇよ、てか俺も別にモテねぇし…噂だろ」
俺はなんでもないふりして笑った。
周りにもやっぱり、俺らってそんな風に見えんだな。
「千早…風子とはどこまでいってんの?」
「お前手はやそうだよな、たらしだし」
たらし?
ちゃらい?
いつもの俺の印象だ。
「お前らには絶対言わねぇよ、バカすぎて」
俺たちはじゃれあう。
☆
放課後の屋上…委員会があって、顔だしてたら遅くなっちゃった。
急いできたんだけど…
千早…寝てる。
少し冷たい風が彼の茶色の髪をふわふわ揺らしている。
やっぱ疲れてんのかな…
ちゃんと寝てんのか心配になる…
なんで千早はいつもへらへらって笑ってんだろ…。
「千早…風邪ひくよ」
柔らかそうな髪を撫でる。
「…ん…ぶ…ぅこ…」
寝ぼけている彼にキスされた。
いつもより…なんか長い。息できない…
!?
彼がびっくりして私から離れる。
「風子?あ…なんか悪い…ごめん俺」
もう…恥ずかしすぎる。
心臓の音うるさすぎ。
☆
ぶーこ…千早そう呼んでた。
それは中学の時に彼がつけた…変なあだ名。
寝ぼけてて…けど彼の中私がちゃんといる?
すごく嬉しかったりする。
心の奥のもやもやが…一気に吹き飛んだ。
私って単純なのかな…。
★
中学ん時の夢見てた。
俺はぶーこのこと何回も呼んでんのに
あいつには聞こえないみたいで
振り返んない。
あいつの先には必ず山田がいるんだ。
俺はすごく悲しくなる。
そしてこっちを見て欲しくて何度も呼ぶんだ。
やっと振り返ってくれて…
「千早」
って笑って俺のこと呼ぶから
俺、すっげ嬉しくて…なんか泣きそうになって…
そんなぶーこにキスをした。
☆
帰り道…卓也を発見した。
私と同じ方向ってことは、葵と会うんだな。
よかった…。
「卓也」
私は走っていき、声をかける。
「なんだ、風子か」
なんだって…失礼しちゃう。
「そんなこと言っていいの?仲直りのきっかけ作ってあげたのに」
罰が悪そうに卓也はため息をつく。
「やっぱお前に相談してたんだ」
「で、塾の紗結ちゃんとはいいの?」
私はいじわるっぽく言う。
「お前、楽しんでるだろ…俺あいつのこと、なんとも思ってないし、はっきり断ったんだよ、それなのに葵に誤解させるようなこと言うから」
卓也は中2の妹と付き合っている。
塾が一緒なんだけど、その…紗結ちゃんって子が卓也のこと好きで…葵に根も葉もないことを言ってきて…2人はケンカした。
まぁ、一方的に葵がすねてたんだけど。
けど、やっぱり会いたくなって、手作りのクッキー
にを渡すはめになった。
その日忙しくて、卓也にもなかなか会えなくて…渡してくれた千早に感謝なんだけどね。
「ねぇ、メッセージカードなんて書いてあったの?」
瞳が合う。けど、全然卓也はいつもと変わんない。
「教えない」
つまんない…。
「なぁ、ふうこ、斎藤とどう?」
「千早?…べつに…変わんない、なんか疲れてるみたいで心配」
私も頑張って普通に話す。
「じゃあさ…風子も、葵みたいに手作りクッキー作ってみたら?けっこう元気でるよ」
私あんま料理得意じゃないんだけどな…
ってか、あいつはそんなん喜ばなそうだけど、
「マジでこれ食えんの?」とか
「いらねぇし」とか言ってヤスくんたちにあげそう
何より…そんなことすんの…ちょっと恥ずかしい
「ほんとに元気でる?」
「あぁ、まぁ…あいつ単純バカだから、絶対元気でるって」
単純バカって…しかも卓也また1人楽しそうだし…
意味わかんない。
☆
放課後の屋上
「あのさ…千早これいる?」
初めて作ったからなんだか、反応がドキドキする。
「なにそれ?」
私の包をみて彼は不思議がる。
「クッキー…だけど…いる?」
彼の瞳が揺れる。
「いらねぇ」
彼のいつもより低い声。
……恥ずかしい、こんなことして私…。
差し出した包を引っ込めようとしたのに…
「…って嘘…俺…それほしい」
そういって今度は笑った。
☆
私の手作りのクッキーは、葵のように上手くできなくて…形もいびつだし…焦げてるのもあるし…
なのに…
「うまいよ…」
そういって彼は笑うんだ。
好きだよ…千早。
★
あいつと一緒のクッキーなんていらない。
だって、山田と俺は違うじゃん。
俺はずっとふうこの特別になりたかったんだ…
気持ち伝えたけど…なんか不安なんだ
俺ばっかなんじゃないかって
また勘違いしてんのかなってさ…
けど…泣きそうな風子を見たら
受けとるしかできない…
ほんとは欲しかったんだ
ふうこの手作りクッキー、俺も。
☆
「葵のはね、もっと上手にできてたんだよ。卓也も美味しいって言ってたし…私のは…下手だから…あんま無理しないでね」
千早は全部食べそうな勢いだったから、私は心配になって言う。
!?
食べていた…千早の動きが止まる。
「山田のって…妹が作ったの?」
なんか訳わかんないこと言うし…
「そうだけど…?何?」
……。
「何でもねぇ」
そう言うと彼は無邪気に笑った。
あ…そういえば…卓也が千早のこと『単純バカ』って言ってたよね…。
どう意味なんだろう?
end




